コラム
今週の1冊 第2734号/15.10.12

名もなき者たちの世界と視座が指針あたえる
『日本残酷物語』を読む

畑中章宏 著 平凡社新書 定価800円

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  「日本残酷物語」は、谷川健一を中心に宮本常一らが編集と執筆に携わり、柳田民俗学をこえあらたな民衆像の実像を記した「全集」といえる。1959年の第1巻発刊からすでに56年がたつ。長じて「日本残酷物語」本書を手にすることになる私に、社会を知るきっかけをつくった。
  奨学金をもらい社会福祉学部へ進学した。社会福祉とは、資本主義社会が生み出す社会の矛盾、体制のほころびを繕う学問への危うさもあった。そのなか、本書で描き出された名もなき者たちの世界と視座は、私に揺るがぬ指針をあたえた。その衝撃性は私一人ではなく半世紀を過ぎてなお、今回紹介する「「日本残酷物語」を読む」の発刊につながっているのだろう。
  全集はその後、平凡社ライブラリーに5巻がはいった。もはや古典といってもいいのかもしれないが、谷川や宮本が何をめざしたのか。そして、描かれた世界の何が解決したというのだろうか。「…読む」はその周辺の事情を丁寧にえがいている。必ずしも成功しているとは思えないが、本書を手がかりに「日本残酷物語」をぜひ手にして読んでいただきたい。私たちは何を知っているか。あらためて日本という国家の残酷性に戦慄することだろう。 (安)

 

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