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コラム

荊冠旗 第2726号/15.08.10

 『日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族』は国家によって運命を翻弄された人間とその家族を描く。敗戦後も 「任務を続行せよ」との特命を日本国からうけ、上海に潜伏し、中国に逮捕された父の運命を、義治の息子である筆者の敏雄は書き綴る
▼敏雄は中国で生まれ育ち、獄中20年をへた父や家族と日本国に78年に帰国。なれない日本語で、娘の手を借りながら、特命をうけた日本国でも棄民とされた現実を描いた
▼戦争での生者は自分が生き残って申し訳ない、との気持ちを抱いている。これは大震災の生者をも貫いている。だが、井上ひさしは『父と暮せば』のなかで、「生き残った人は亡くなった人たちの思いをどうやってつぎの世代に残すか、それが生き残った人の仕事じゃないか」と娘をさとす
▼井上ひさしの戦争3部作(広島、長崎、沖縄)で生前はたしたのは広島だけだ。そんなことを井上の娘が山田洋次監督と話したとき、「母と暮せば」(長崎の原爆を描く)の構想が監督に膨らんだ。12月上映へ現在、撮影が続けられている
▼中咽頭ガンの治療で休養していた坂本龍一が、この映画の音楽を担当する。「核のない世界を望んでいるぼくとしては、これはやるしかありません」という
▼敗戦後70年というのは、戦争体験者と非体験者の完全な端境期
▼生者の遺志を受け継ぎ、義治の孫娘は祖父を苦しめた戦争はいやと、安保法制反対の東京での行動に加わっている。

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