コラム

荊冠旗 第2737号/15.11.02

 人間の記憶は曖昧だ。今号2ページの石川さんのメッセージには、逮捕された当日に書かされた「上申書」のことを忘れていて、証拠開示で驚いたとある
▼石川さん逮捕と有罪判決の主軸は、脅迫状と石川さんの筆跡が一致するというものだ。メッセージで石川さんは「書くということの精神的な負担は、必要な教育を受けてきた人には想像もつかないほど大きく」「第一文字を知らない人が「脅迫状」を書くなんて頭の片隅にもないはずです」という
▼筆跡鑑定は文字が似ているかどうかが決め手とされてきた。狭山弁護団は「国語能力」の観点から石川さんのような非識字者が脅迫状のような文章を書けるのかどうかを明らかにする鑑定を2審で提出した
▼それを担った1人が大野晋さんだった。『孤高 国語学者大野晋の生涯』(川村二郎著 集英社文庫)で大野さんが「損得やイデオロギーとは無縁」で「脅迫状という厳然たる事実とだけ、真正面から向き合」ったことが描かれている。文字生活に慣れていない、漢字能力は小学2年生程度、運筆の速度が違うなどを明らかにし異筆と鑑定した。大野さんは国内外の学会でも狭山事件のことを訴えた
▼先ほど亡くなった鶴見俊輔は戦前の悪党を自覚した個人による戦時中の反戦を求める抵抗の姿勢を評価する
▼脅迫状と上申書の異筆を明らかにし、石川無実という事実を個人で訴えた大野さんに、いま私たちが学ぶべきことは多い。

 

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