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「差別と貧困」の連鎖を断ち切り、人と人を紡ぎなおす、就学支援金相談など地域発のとりくみを

「解放新聞」(2015.03.02-2705)

 立春を過ぎ、4月に進学を控える子どもたちの多くは、目標成就に向けた奮闘のまっただなかにある。最後までの、頑張りにエールをおくりたい。
  そして、保護者の方がた、とりわけ、子どもを初めて高校などに進学させる方は、新年度に向けた諸準備に関心を寄せていただきたい。
  教育費の家計負担が比較的小さくすむ義務教育の小中学校とちがって、公立私立により金額の多寡はあるが、「授業料」以外に、「教材費」、PTAや生徒会の「会費」、修学旅行の「積立金」など諸費用も発生する。
  とくに、入学年度当初は、「入学金」のほかに、「制服」や学用品の調達も重なり、合格発表から入学までの家計負担はけっして小さくない。
  いざというときにあわてないように、早めの相談と準備が必要となる。

 こうした家庭の教育費負担を軽減し、社会全体で子どもたちの学びを保障していこうとする流れがはじまったのが、民主党政権下の2010年度に導入された「高校授業料無償化」である。
  政権交代による所得制限の導入など紆余曲折をへながらも、授業料にあてる「高等学校等就学支援金」に続いて、授業料以外の経費にあてる「高校生等奨学給付金」が創設され、充実がはかられてきた。
  また、大阪府のように、国基準に独自の上乗せをおこない手厚い支援をおこなう自治体もある。
  従来からの「貸与奨学金」や、生活保護世帯を対象とする「高等学校等就学費」とあわせると、世帯の所得状況や家族構成に合わせた制度の活用しだいでは、多様な進路選択が可能な状況も整いつつある。
  進路相談を担う関係者は、公的支援制度が「授業料減免」と「貸与奨学金」に選択肢が限られ、「授業料は払うもの」という、かつての状況とは一変していることをふまえて、とりくみをすすめてもらいたい。一方、つぎはぎ的に支援策の充実がはかられてきた結果、前記の公的支援制度だけでも〝乱立″という状況にある。政治判断によって、十分な準備期間もないまま、所得制限導入と給付金創設が重なった昨春は、保護者、教育・福祉行政の関係者に大混乱を招き、全国各地で悲鳴にも近い声があがった。
  部落解放同盟も、独自に実態把握にとりくみながら、文部科学省交渉などをとおして、各地の課題と要望を明らかにしてきた。
  こうした世論の声をうけて、文部科学省でも各都道府県に働きかけ、情報収集をおこない、申請手続きや運用面を中心に、具体的な検討がすすめられている。次年度以降、一定の利便性の向上がはかられ、定められた規則に従い、各制度に関する案内や申請受付を 〝事務処理″としてすすめていくうえでの混乱は少なくなるだろう。


 そのうえで、部落解放運動が注視し、とりくむべき課題を提起しておきたい。
  昨年の実績から、受給権を有するにもかかわらず、権利行使を〝ためらう″、〝しない″、〝できない″という保護者や家庭が少なからず存在したことが明らかになっている。この〝事務処理″にのることさえできなかった層を中心に、生徒・保護者に寄り添った多角的なサポートの展開が求められている。
  公的支援制度の活用なくして進学が不可能な「貧困」家庭の多くは、保護者の就労状況など経済的な問題に重ねて、身近に相談できる人がいないなど社会的に孤立したうえに、情報弱者でもある。
  支援制度を整え、窓口をひらいて申請を待つという一辺倒な対応では、子どもたちの未来を保障する教育へとつなぐことは困難である。
一人ひとりにあらわれる困難を、地域の課題として解決に向けてとりくむことが求められている。

 まもなく卒業や入学のシーズンをむかえる。各地域の隣保館や集会所を活用し、学校や福祉事務所などと協働し、部落内外の保護者を対象に、支部が主体となった相談会の開催などを試みてはどうだろうか。
  地元で高校にかよわせている保護者や、卒業させたばかりの保護者の参加をえることができれば、参加者も親近感を抱きやすいうえに、校種や学年進行による具体的な出費について、行政とは違った視点から、経験者ならではの示唆に富んだアドバイスも可能だ。
  また、こうした場での交流をとおして、人と人との関係を紡ぎなおすことが、社会的孤立を防ぐ一助となるだけでなく、子どもたちの未来を保障する教育の重要性など、部落解放運動や解放教育運動についての理解と共感をえる絶好の機会となる。
  各地域で、「差別と貧困」の連鎖を断ち切り、すべての子どもたちの学びを保障するとりくみをすすめていこう。部落解放運動の真価が問われるところだ。


 

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