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全国水平社創立宣言のユネスコ世界記憶遺産登録に向け多彩なとりくみを

「解放新聞」(2015.06.01-2717)

 戦後70年、「同和対策審議会」答申から50年、平和と反差別・人権にとって大きな節目となる今年、部落解放同盟と「『全国水平社創立宣言と関係資料』のユネスコ世界記憶遺産登録をめざす会」は、前回にひき続いて、「全国水平社創立宣言と関係資料」のユネスコ世界記憶遺産登録にとりくむ。ユネスコ世界記憶遺産の登録運動は、2011年、福岡県の「山本作兵衛コレクション」が世界記憶遺産登録を実現したことをうけ、部落解放同盟中央本部をはじめ各種研究者、人権団体からも「全国水平社創立宣言と関係資料」の記憶遺産登録のとりくみが提起され、水平社宣言を所有・保管する崇仁自治連合会(柳原銀行記念資料館運営団体)、公益財団法人奈良人権文化財団(水平社博物館運営団体)と、部落解放同盟中央本部、一般社団法人部落解放・人権研究所、公益社団法人福岡県人権研究所、公益財団法人大阪人権博物館、反差別国際運動日本委員会が「めざす会」を結成して、登録をめざすこととなった。残念ながら準備期問の不足もあり2014年の登録はならなかった。登録は2年に1回であるが、手続きの変更があり、ひき続いて今年2015年の申請・2016年の登録をめざすこととなった。
  「全国水平社創立宣言」は、日本で部落差別からの完全な解放を掲げて1922年3月3日に開催された全国水平社創立大会で綱領などとともに可決された、全国水平社のはじめての組織文書であり、人類が長く記憶し、のちの世代に語り継がねばならない大切な資料である。



 100年近く前に発表された、700字にも満たない「宣言」が、なぜそれほどまでに重要なのかを確認しておかねばならない。
  まず第1に「宣言」は、差別をうける者が力を合わせ、世界で初めてみずからの言葉で差別の不当性を訴えたことである。いまも世界中に差別をうけて苦しむさまざまな人びとがおり、こうした人びとは差別をうけることによって、まるでみずからが劣った存在であるかのように感じさせられている。この宣言は「吾々の祖先は自由、平等の渇仰者であり、実行者であった」とみずからの歴史を誇りあるものとして高らかに示し、部落民のみならず、世界中の、不当な差別に抗う多くの人びとに勇気を与え続けてきた。
  さらに、宣言は部落民を「産業的殉教者であった」とのべ、皮革業などの仕事のために差別されてきたが、逆に皮革業などを通じて産業の発展に貢献していることを明確にし、これが地球環境を守る環境経済や社会発展と深く結びついていることを自信をもって主張している。
  第2に、人間の尊厳を強く主張していることである。この短い宣言のなかに「人間」という言葉が10回も用いられ、「人間を尊敬する」、「人間を冒漬してはならぬ」といったようにくり返し人間の尊さが訴えられている。そのことによって宣言は部落差別にとどまらず、人間の尊厳を提起することで時をこえ、国境をこえた普遍性をもつことができたのである。だからこそ1922年の発表直後から、アメリカやイギリス、当時のソ連など世界の新聞や雑誌が宣言に注目して紹介し、いまも世界の多くの人びとが感銘や共感の声を寄せ続けているのである。
  第3に、当時の世界のもっともすぐれた思想が凝縮されていることである。宣言が発表された1920年代の世界では、それまでの社会矛盾を克服しようと民主主義や社会主義などの新しい思想が打ち出され、また、それぞれの民族の運命は、その民族自身が決めるという民族自決主義が主張されていた。こうしたあらたな政治思想とともに、人間の救済を求めてきた仏教やキリスト教の教えをふまえて宣言は生み出された。世界の人類が築きあげてきた英知がこの宣言にはこめられているのである。


 敗戦70年にあたる今年、平和をめぐる状況はきわめて緊迫したものとなっている。安倍政権は「戦争のできる国」への歩調を速め、「秘密保護法」の強行採決、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定などをおこなってきた。そしていま、「集団的自衛権の行使」を現実のものとするために、関連11法制を国会に提出し、今国会での成立をめざしている。
  差別と闘う私たちにとって重要なのは、こうした政治の流れと歩調を合わせてヘイトスピーチなどの差別・排外主義煽動がおこなわれていることである。中国や韓国、朝鮮などにたいする差別的偏見と憎悪を煽ることで、戦争を正当化する意識を醸成しようとする動きは、あたかも「戦争のできる国」への流れを補完しているかにみえる。まさに、戦争と差別が一体となってすすめられようとしている。
  2011年には水平社博物館が攻撃対象となり、ヘイトスピーチがおこなわれた。それは、水平社博物館の存立基盤である水平社宣言の思想が、薄汚い差別的悪罵によって攻撃されたということにほかならない。これにたいし私たちは民事訴訟をおこし、勝訴してきたのである。
  今回、私たちは、この水平社宣言が世界記憶遺産として登録され、その価値が国際的に評価されることを通じて、ヘイトスピーチの差別思想をさらに囲いこみ、孤立させねばならないと考える。水平社宣言の世界記憶遺産登録は、たんにその価値を確認するにとどまらず、今日の情勢のもとで、差別排外主義にひきこもうとする者たちとの重要な闘いなのである。
  時間はあまり残されていない。9月の選考に向けて各都府県連で講演やシンポジウムなど、多彩なとりくみが準備されているが、登録実現のためには、市民・共闘団体をふくめた、いっそうの盛りあがりが必要である。登録運動の意義をふまえ、「全国水平社創立宣言と関係資料」のユネスコ世界記憶遺産登録を必ず実現しよう。


 

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