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「戦争法案」成立を阻止するため、全力をあげて

「解放新聞」(2015.07.13-2722)

 安倍政権は、「国際平和支援法(案)」と「平和安全法制整備法(案)」を5月14日に閣議決定し、国会に上程した。これらの法案の名称には、「平和」という言葉が入っているが、その内容は「専守防衛」という日本のこれまでの安全保障政策を大転換させ、米軍とともに世界中で「戦争する国」へと変えてしまう「戦争法案」だ。
  これらの法案について、6月4日にひらかれた衆院憲法審査会の参考人質疑では、自民党が推薦した参考人をふくめて3人の憲法学者全員が、「憲法違反」と発言した。憲法や安全保障について考え方が異なる3人の参考人が、そろって問題視したのは、昨夏の閣議決定で認めた集団的自衛権の行使だ。集団的自衛権は「違憲」との見方を示し、憲法改正の手続きを無視した形でおしすすめる安倍政権の手法を批判した。さらに現在、200人をこえる憲法学者が、これらの法案を憲法違反として声明を出し、廃案を求めている。国会で菅官房長官は、「合憲」とする憲法学者も多いと答弁したが、具体的名前は3人しかあげられず、「数の問題ではない」と居直った。
  また、国会の審議をへずに、これらの憲法違反の法案成立を前提にした内容の「日米ガイドラインの再改訂」を4月27日に日米合意をおこなったことも大きな問題だ。さらに安倍首相が米議会で「この夏までに成立させる」などと演説したことは、国会軽視、立憲主義無視、民主主義の破壊であり、許されることではない。
  このような戦争法案を廃案に追い込み、安倍政権の暴走を絶対阻止しなければならない。



 これらの戦争法案は問題点が多すぎるが、主要な点にだけふれておきたい。まず、集団的自衛権行使に道をひらく「平和安全法制整備法(案)」は、10もの法律改悪案を一つに束ねたもので、問題点をわかりにくくし、国会での十分な議論と検証を不可能にする強引なやり口だ。この一括という手法を徹底的に批判し、一つひとつの法案として、徹底した議論を要求していかなくてはならない。
  「武力攻撃事態法改正案」のなかで、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を「存立危機事態」とし、「集団的自衛権行使」可能としている。しかし、「存立危機事態」の規定は抽象的で、このままでは政府の恣意的判断で自衛隊派遣が決まるだろう。そのうえ、その判断の材料となる情報も、「特定秘密」とされれば国会や国民に明らかにされず、だれも検証できない。
  そして日本にたいする直接の攻撃がないにもかかわらず、他国のために自衛隊が出動したうえ、政府の対処方針で、地方自治体や民間企業、また一般市民までもが国の対処措置に協力させられることになる。
  また、「周辺事態法」を「重要影響事態法案」に変え、「我が国周辺の地域」との地理的概念をなくし、世界中に自衛隊を派遣できるようにしようとしている。「現に戦闘行為がおこなわれている現場」以外ならどこでも自衛隊を派遣できるとしているが、後方支援をおこなえば、「補給路をたたくのは戦争の常識」であり、敵の攻撃目標となり、結果的に戦闘に発展することは明らかである。
  さらに「国際平和支援法案」は、他国軍を自衛隊が後方支援できるようにする恒久法であり、「PKO法改正案」も「自衛隊の武器使用の緩和」「駆けつけ警護への拡大」となっている。
  これらはまさに日本を戦争にひきずり込む「戦争法案」そのものであり、絶対成立させてはならない。


 自民党は、「戦争法案」が国民にあまりにも不評なため、「戦争に巻きこまれることも徴兵制も、決してありません」などと書かれた政策ビラを100万校配布している。しかし、「戦争法案」が出されたことで、防衛大の卒業生の「任官拒否」が増えている。自衛隊の人員が減少すれば「徴兵制導入」の声が高まる可能性もある。米国のように、若年貧困層の奨学金返済を免除するなどして兵士の道に誘導する「経済的徴兵制」が導入される懸念もある。
  「戦争法案」が違憲であり、「日本を戦争にひきずり込む法案」であるとして、廃案にすべきとの世論が高まっているにもかかわらず、安倍政権はいわゆる「60日ルール(法案の参院送付から60日しても議決されない場合、衆院で3分の2以上の多数により再可決できる、との憲法の規定)も念頭に国会の会期を9月27日まで大幅に延長し、法案の成立を強行しようとしている。審議に時間をかけたという体裁を整え、強行採決をする考えのようだ。しかし、時間が長ければ審議が尽くされたということにはならない。
  安倍首相をはじめとした閣僚の国会答弁はきわめて不誠実で、野党の質問にまともに答えず、「安保法制は違憲という指摘はあたらない」などと居直り、「専守防衛は変わらない」「一般に、海外派兵は認められない」「アメリカの戦争に巻きこまれることは絶対にない」と平然とウソをいい、国民を騙そうとしている。
  平和フォーラムは、安倍政権の憲法破壊・「戦争する国づくり」に抗して、「戦争をさせない1000人委員会」の運動強化をはかり、「立憲フォーラム」とも連携しつつ、市民社会との連帯・世論喚起を基本に「総がかり行動」のとりくみをよびかけている。こうした運動と積極的に連帯し、戦争反対の国民世論を拡大しなければならない。
  戦争は、最大の差別であり人権侵害である。私たちは、戦前の歴史的教訓をふまえ、あくまでも戦争反対の広範な闘いをおしすすめなければならない。人類が大きな犠牲のうえにかちとった人権と平和という、かけがえのないものを次代にひき継でために、「戦争法案」を許さず、人権と平和の確立、民主主義の実現に向けて全力で闘いぬこう。


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