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TPP「大筋合意」のペテンを許さず、問題点を暴露していこう

「解放新聞」(2015.11.16-2739)

 TPP(環太平洋経済連携協定)交渉の「大筋合意」なるものが、11月5日に米アトランタの閣僚会合でおこなわれた。商業紙は「国内総生産(GDP)が世界の4割近くを占める巨大商業圏がアジア太平洋地域に生まれる道筋がついた」、農産物分野などでは関税撤廃で消費者にメリットがある、などとしている。が、はたして、そうなのか。
  この大筋合意を受けて、米オバマ大統領はすぐさま声明を出した。
  「中国のような国に世界経済のルールを書かせることはできない。われわれがルールを書くべきだ」と。あるいは米側交渉責任者だった次席代表は「グローバル経済の時代の貿易協定に米が関係しない真空域を作らせてはいけない」と演説で語った。
  これらの言葉が、TPPの本質的な狙いをのべている。つまり、米の「アジア重視(リバランス政策)」のなかで、中国がすすめるアジア経済面での諸政策と対抗して、米が対抗する貿易体制をもつ、ということだ。中国に先行し断固推進していく、という決意のあらわれでもある。
  つまり、中国というアジア圏で大きな影響を及ぼしそうな国をあらかじめ排除したうえで、米やそれに追随する日本と手を組み経済ブロックを創りだそう、という意図である。このブロックは、「同じ価値観を共有する国国」とのブロック化で、中国を敵視する政治面での意図が先行している。安倍政権は、日米の安保政策ともリンクさせてこのTPPを考えている。尖闇諸島、南沙諸島の問題など中国包囲網にたいする米の軍事面での支援を導き出す、という狙いがある。だからこそ、米大統領の交代をにらんだこの時期に、日本の民が創りだすさまざまな富を米に売り渡す大筋合意を急いだのだ。
  だが、記者会見で「おめでとうございます」などと閣僚にのべたNHKの記者は論外としても、日本のメディアや商業紙は大筋合意なるものを、▽最終合意と混同させる▽TPPのもつ問題点を農業問題だけに切り縮める▽関税撤廃で消費者にメリットと宣伝▽全容公表などと政府の側の発表を鵜呑みにして「未関税分野」、日米並行協議などはまったくといっていいほど報道していない。
  現段階では12か国がTPPに参加予定だが、この交渉では2か国並行協議と並行して全体のルールが確定するとしているため、個別の、日本の場合は米との2か国並行協議の中身が重要となるのだが、それは隠され続けている。

 では、具体的に日本の農業分野での問題を見てみよう。
  農業分野で「重要5分野」とされたコメ、麦、午・豚肉、乳製品、砂糖でも、品目数の30%にあたる174品目の関税をなくす。牛肉が72.5%、豚肉が67.3%、コメや麦は20%台となっている。また、農業分野では関税を撤廃させたことのない834分野のうちオレンジ、ハム、はちみつなど400品目ほどの関税が撤廃される。
  いずれも農家や酪農家にとっては死活の問題で、現在でも40%しかない食料自給率が、このままでは10%になる、といわれている。零細な部落の農家、酪農家にとっては死活の問題である。このままでは、国内消費向けの農業製品が作れない国になってしまうのだ。
  そこには、農業を企業・大規模農業法人へ開放しようという政府、財界の政策が隠されている。
  そもそもTPPについて安倍首相は12年12月の総選挙で「関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉には反対」との公約を掲げ、農協の支援を受け勝利したのだった。そして13年3月に交渉参加を表明すると「重要5品目は死守する」に変わった。これらは国会でも明言されており、公約、国会決議への明確な違反である。だが、こうした報道はおこなわれていないのが現状で、「聖域は守った」と安倍首相はいう。
  こうしたなかで現在くり広げられているのが、参議院選挙に向けた暫定予算執行もふくめた「農家保護策」への着手だ。だが、つねにその場しのぎのウソをつき、政権の崩壊をつなぎとめる安倍政権の手法を信用してはならないし、そのウソを暴露する必要がある。
  たとえば、政府の発表した概要には、食品添加物や残留農薬、検疫の規制緩和など輸入農産物などによる食の安全が脅かされることについて、「わが国の食の安心・安全が脅かされることはない」と書かれている。しかし、米国が遺伝子組み換え食品などの購入や表示義務の変更を求めてきていることは事実だし、交渉の基本が2か国協議の積み重ねである以上、TPPで実現できなければ日米並行協議で要求を突きつけてくることは明白である。にもかかわらず、そうした点も隠し続け、これまでさまざまな分野で問題だと指摘されたことはクリアしている、というペテンとウソの概要を発表し続けているのである。
  工業品をふくむ全品目ではじつに95%の関税が撤廃されるのである。

 だが、問題はそれだけではない。
  政府は大筋合意を錦の御旗として、外圧として、国内の規制緩和へよりいっそう動き出し、「構造改革」を推しすすめようとするだろう。たとえばそれは一生涯派遣・非正規、残業代ゼロ、解雇の金銭的解決などの労働分野におよぶ。そして、皆保険制度の崩壊や医療分野の問題もふくめて、人が生きていくうえでのさまざまなところに、規制緩和の影響は出てくるだろう。
  農産物、郵政、金融・保険、医療、公共事業、教育、さきにあげた食の安全にかかわる規制撤廃など、さまざまな分野での米国発の多国籍企業が利益を導き出すための「改革」がつぎつぎにすすめられる。それは、公共の分野を資本に開放することによって利益を導き出そうという新自由主義路線とも連動している。
  だが、大筋合意は決定ではない。今後の合意文書の作成など、これから2年余りをへて、各国で批准と国内法整備をめぐり国会での論議がはじまるのである。すでに米国では共和党や民主党のなかで反対意見が出ている。カナダでは政権交代でTPP反対派が政権を握った。そしてTPPに反対するグローバルな市民運動が確実にはじまっている。
  こうした動きと手を組みながら、国会で安倍政権のウソの責任と、このまま批准すればどうなるかなど、問題点を徹底して暴露していこう。私たちの暮らし、生活と権利を新自由主義の市場化のなかに投げ込むのではなく、部落民としての、人間としてのあらたな生き方を求める運動へと合流させていこう。


 

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