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人権侵害やプライバシー侵害が危惧されるマイナンバー制度での個人番号カード発行には慎重な対応を

「解放新聞」(2015.11.23-2740)

 10月から住民票を有するすべての人に、これまでの住民票コードとは異なる新たな12桁の個人番号、また事業所にも13桁の法人番号が付けられ、来年1月1日から番号の利用と個人番号カードが交付されるマイナンバー制度がスタートする。10月から12月にかけて住民票をもつ人全員、日本国民だけでなく、中長期の在留外国人や特別永住者に個人番号が簡易書留で届くことになっている。すでに「通知カード」が自宅に届いている方もいるだろう。
  「通知カード」が届いたあと、希望者には「身分証明書」として使えるICチップ内蔵の「個人番号カード」が、本人確認をおこなったうえで任意で発行される手順となっている。
  共通番号法は、2013年に社会保障と税の一体改革の一環として、住民登録した市民に一生変わらない番号をつけ、そのもとに「税、社会保障、災害」に関するさまざまな個人情報をコンピュータで一元的に国家が、管理・利用する仕組みとして制定された。当初の社会保障の充実をはかるという政策目標はそぎ落とされ、個人番号の通知や制度の実施前の9月には、銀行口座や検診情報、そのほか自治体の要望をふまえた利用範囲の拡充などの法改正が安保法案審議の混乱のなかでなされた。また9月8日には財務省が突然、消費税10%引きあげ軽減策に個人番号カードを使用した還付金構想を発表するなど、当初、政府の説明になかった利用範囲拡大があいついで打ち出されてきている。
  これらのことからも、政府のまずは番号ありきで制度を導入し、その後に利用内容を民間活用などもふくめ際限なく広げていく思惑が透けてみえる。今後、番号とカードがひとり歩きし、拡張・膨張を重ねることが危倶される。もし番号利用が民間にも拡大していけば、個人情報の流出被害のリスクは限りなく拡大する。

 2014年のベネッセの個人情報漏洩事件(2895万件とベネッセが推計)、2015年5月には日本年金機構から125万件もの個人情報が漏洩する事件の発生。また、行政書士による戸籍などが大量に不正入手されたプライム事件といった情報漏洩や不正な個人情報の入手事件があとをたたない。公務員や民間会社従業員による過失や情報売買、不正なコンピュータシステムへのアクセスなどの事件は、どれだけセキュリティを強化しても、これら不正やハッカーなどとの「いたちごっこ」が繰り返され、情報漏れの危惧は拭いきれない。アメリカや韓国では民間分野で個人番号が使用されるようになったことから、詐欺やなりすまし被害が激増している。ドイツ、イタリア、オーストラリアなどでは番号利用を一部に限定し、イギリスではICカード導入を撤回、カナダでも民間分野での番号利用を禁止、個人番号カードすら廃止している。
  また今後、日本では個人番号カードの券面に記載されている名前や性別に関すること、さらには個人番号を告知することそれ自体で起こる深刻な事態が予想される。LGBT(性的少数者)、とりわけ性同一性障害の人が、本人の意思に反し性別を記載した個人番号カードや通知ガードを提示せざるをえなくなる恐れ▽在日外国人が通名で勤務しているところ、本名と通名併記のカードを提示せざるをえなくなること▽DV被害を受けて避難している人の場合、居所を登録しなければ通知カードを加害者が受け取ることになり、被害者の個人番号を知った加害者に本人の意に反した行政手続きを勝手にされてしまう恐れもある。また、情報漏洩による個人のプライバシーが不正に暴かれ身元調査に利用されることも、ひじょうに危惧されるところである。あわせて、さまざまな理由で住民票の住所に住んでいない人、住民票がない人びと(ホームレスや多重債務者、DV被害者など)は、公的サービスから締め出されることにもなりかねない。

 住民基本台帳ネットワークシステムが市町村の「自治事務」であるのにたいし、共通番号制は「法定受託事務」=国の仕事と法律で定められており、国から強制的に付番される「強制付番」であるため、実質的にマイナンバーそのものが付けられることは変えようがないのが現実である。
  ついては、自己情報コントロール権、人権の観点からも問題が多いマイナンバー制度であることを、各地域で同盟員はじめ住民にたいし周知しよう。この10月から各世帯単位に一方的に送られている「個人通知カード」については、不正利用されないよう手元に大切に保管し、紛失・盗難にあわないよう、むやみに持ち歩かないようよびかけるものである(「個人通知カード」には後に申請して発行される「個人番号カード」とは違い、ICチップや顔写真はついていない)。
  あわせて、1月から開始される「個人番号カード」発行については、個個人の申請をもとにした交付となっており、あくまで強制ではなく任意であり罰則もないので、申請しないという選択は可能である。番号の利用拡大にともない人権侵害や個人情報が際限なく漏洩する危険性があることから、当面、「個人番号カード」を取得しないよう強くよびかける。また、番号の提示についても、税、社会保障などの必要最小限にとどめるよう注意喚起を促す。
  さらに番号利用を、税、社会保障、災害の特定事業などにできるだけ限定し、民間などの番号活用に拡大させないこと、情報漏洩や人権侵害につながらないよう、個人情報保護、セキュリティ、安全管理措置、職員研修・教育の徹底を当該自治体に求めていく必要がある。
  また、人権侵害を未然に防いでいくためにも、戸籍や住民票を第三者が取得した場合に本人に通知する登録型本人通知制度について、未整備の市町村にはその整備を強く求めていくとともに、すでに制度が整備されている市町村に、マイナンバー制度の周知の広報作業とあわせ、登録拡大に向けて創意工夫した周知啓発の実施を求め、部落解放運動としても登録者拡大に向けた広範な市民運動を推進しよう。


 

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