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「同宗連」の歩みと宗教者への期待ー部落差別の現実と向き合い、差別撤廃のとりくみを

「解放新聞」(2016.04.18-2759)

 『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議(「同宗連」)が、4月7日に第36回総会をひらいた。
  「天のこえへ、地のこえを別のものとして、われわれ宗教者は、神の栄光を讃え、ほとけの徳を語り、まことの道は天に通ずとのみつたえきたった。…いま、われら、ここにあらためて、大地に立ち、一切の差別を許さない厳しい姿勢を律しっつ、相携えて、あらたな宗教者たらんことを宣言する」
  総会の冒頭、出席者全員で朗読された「宣言」である。この「宣言」は「同宗連」結成に先立つ1981年3月に開催された「同和問題にとりくむ全国宗教者結集集会」で採択された。「同宗連」の「規約前文」によれば、この集会で、「われわれ宗教者・およびわれわれ宗教教団は、結集を求めるよびかけ文の精神、すなわちわれわれは、深き反省の上に立ち、教えの根源にたちかえり、同和問題解決への取り組みなくしては、もやは宗教者たりえないことを厳粛な事実として、深く認識するにいたった」とあり、まさしく、「同宗連」結成の出発点となったものである。
  それいらい、「同宗連」は、教義や教団の成り立ちなどの違いを相互に認め合い、さらにそれぞれの教団の主体性を尊重しながら活動をすすめ、宗教界全体の差別問題・人権問題のとりくみにも大きく貞献してきた。
  「同宗連」は、1979年に米国・プリンストンでひらかれた第3回世界宗教者平和会議での差別発言にたいする糾弾のとりくみを契機に結成された。そこには、「宣言」や「規約前文」にあるように、ここにいたるまでの、それまでの各教団での部落問題へのとりくみの弱さを反省し、部落問題解決と人権確立にはたす宗教教団(者)の使命と役割を自覚し、行動することこそが、宗教教団(者)の本来のありようであることが共通の認識となっているのである。

 しかしながら、残念なことに、1981年の「同宗連」の結成後も、それぞれの教団では差別事件が起こり、あらためて教団の差別体質の克服や同和・人権研修体制の充実などが求められてきた。もちろん、とりくみの深まりのなかで、これまで自覚されてこなかった差別への気づきもあり、そうした成果の積み重ねが教団の活動をさらに充実させてきた積極面もあった。
  また、部落問題だけでなく、障害者や女性、ハンセン病元患者など、さまざまな差別問題・人権問題へのとりくみの拡がりがすすみ、それぞれの教団の人権問題にかかわる組織的な整備もすすんできたといえる。こうした教団のとりくみの成果を、さらに各教団の教区や各寺院(僧侶)にまでつながるように、いっそうの活動の強化を期待したい。
  とくに、この間の多くの仏教教団での「過去帳」開示問題については、教団の「過去帳」にたいする、これまでのとりくみが、それぞれの寺院(僧侶)に、しっかりとした受け止めとなっているのかが、大きな課題となっている。これまで、差別戒名(法名)や「過去帳」での、「革門・革尼」や「畜男・畜女」などの差別添え書き、記載については、今日でも、各教団とも積極的に改正作業にとりくんでおり、同時に「過去帳」の閲覧禁止措置も取られてきた。しかし、こうしたとりくみがすすむ一方で、改正作業の持つ意味や差別身元調査に利用されてきた「過去帳」のはたしてきた差別的な役割が、寺院(僧侶)に十分に理解されてきただろうか。
  これまでの「過去帳」開示問題では、多くの場合、テレビや新聞などのメディアからの取材依頼によって、歴史的な資料だからという、寺院側の判断で開示されている。これでは、いままでの「過去帳」にかかわる研修や学習の内実、成果が厳しく問われることはいうまでもない。

 部落差別撤廃に向けて宗教教団(者)がはたす役割にたいするわれわれの期待は大きい。それは、多くの宗教教団(者)が、今日、より深刻化している格差社会、無縁社会と称される現代社会のなかで、人権や平等、平和を希求するという本来の人間としてのありよう、差別からの解放をめざしているところにある。しかし、それは永遠の彼岸、理想の社会にみいだすものであってはならない。
  「全国部落調査 部落地名総鑑の原典 復刻版」などという書籍が公然と発行されようとし、インターネット上では、そうした差別情報がいまだに掲載されている、今日の根深い差別意識にさらされている現代社会と厳しく対峙し、その変革をめざした行動が求められているのである。
  それは、「過去帳」開示問題では、仏教教団が、今日の部落差別の実態にどのように向き合ってきたのかを問い、そのうえで、過去帳の閲覧禁止という措置が教団、寺院、僧侶にとって、どのような意味をもっているのかという問題提起でもある。仏教教団に限らず、「同宗連」の結成がそうであったように、各宗教教団にとっても、差別の現実から出発し、差別と向き合うことによってしか、それまでの差別を容認し、そうした社会意識に埋没してきた教団、僧侶、教師の変革が可能になるはずがないという問いかけである。
  第73回全国大会では、分散会論議で「過去帳」開示問題にかかわって、広島県連からおもに浄土宗、東西本願寺の経典にある「旃陀羅」などの差別問題について提起があった。広島県連がすすめている「同朋三者懇」などの先進的なとりくみからも学び、あらためて、差別撤廃に向けたすべての宗教教団(者)にたいしての問いかけを強めていきたい。


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