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憲法改悪の隠された意図を暴露し、参院選で勝利しよう

「解放新聞」(2016.06.27-2768)

 三重県・伊勢でのサミット終了後の広島。厳戒態勢のなかをオバマ米大統領が広島の原爆慰霊碑を訪れた。慰霊碑を前に「核なき世界」を訴えるオバマ。そのあと、被爆者の代表と固い抱擁を交わした。このニュース映像は、多くの人びとに感銘を与えた。オバマみずからが折ったという千羽鶴は、つぎつぎとさまざまな物語を紡ぎ出している。
  バラク・オバマ個人としての「核なき世界」の理想を求める姿は信じよう。しかし、米大統領としてのオバマは、核軍縮会議もひらかず、米の核兵器開発費にあいかわらず巨額の予算を組み、執行している。そして、誰もが指摘する最大の問題は、原爆投下が犯罪行為であることを認め、原爆被害者に謝罪する言葉がなかったことだ。
  安倍首相は、このオバマ米大統領の広島訪問も和解と日米同盟のゆるぎなき結束を示す姿として参議院選挙戦のなかで誇りながら、「気をつけよう、甘い言葉と民進党(共産党)」「民進党には、もれなく共産党がついてくる」などと反共意識を利用しながら、品性のない野党批判を続けている。
  そもそも広島訪問のさい、オバマのあとで語った安倍首相も、当然、日本のアジア侵略、その結果としての被爆ということへの謝罪の言葉をのべるべきだった。だが、それもなかった。
  敗戦の詔となった「玉音放送」で昭和天皇ヒロヒトは、アジア侵略を認めず、あくまで解放をめざす戦争であったと強弁し、原爆投下による日本人の被害の大きさを降伏の最大の要因にあげ、みずからの決意で戦争終結をおこなったと強調した。こうして天皇神話をつくりあげ、戦争責任をあいまいにした。そして敗戦後の世論をリードしたのが「一億総懺悔」論だった。
  これらの敗戦後日本の路線決定は米との合作のうえでおこなわれ、憲法制定にもいかされた。それが、第1条から8条までの天皇条項(天皇制を象徴天皇制と姿を変えたうえで存続させる)と第9条の戦争放棄につながっている。そのうえで民主主義、人権条項が続くのである。
  占領軍統治下で天皇外交を積極的に展開したヒロヒトは、沖縄での米軍の占領が「二五年から五〇年、あるいはそれ以上にわたる長期の貸与というフィクション」のもとでおこなわれることを望む、というメッセージを米国に送っているのである。
  現憲法が安倍首相がいうように、米国による押しつけでないことだけは明らかだ。げんに、米の法案に朱が入れられ、国会で論議され、所定の手続きを踏み、成立しているのだ。

 この参議院選挙で憲法改定に必要な3分の2の議席を獲得することを安倍首相が狙っている。
  安倍首相による憲法改悪の最大の中心点が第9条であることは間違いない。しかし、日本人のなかに埋め込まれてきた9条の精神を変えることは、きわめて困難だ。だからこそ、「秘密保護法」の強行制定、「集団的自衛権行使」についての閣議決定、安保諸法の改悪、と事実上の外堀を埋める形で、きわめて強権的な姿勢で9条無効化を図ろうとしてきた。
  ところが、これらの諸政策を隠し、またもや、今回の参議院選挙では、バラ色の経済政策を前面に出し、国民に幻想を与える形で、いつものように勝利への道を歩もうとしている。これにストップをかけることが重要だ。
  この間の「主張」でも強調してきたように、たとえばTPPなどにみられる国民との約束を、しかも国会決議までしたことを平気で破りながら、TPPの経済効果なるものをでっちあげ居直る姿などを徹底して暴露しよう。あるいは、東京都知事をめぐる問題でも、みずから支持を指示し、応援演説までしながら、世論を見、自分のところに責任追及の声が来ると、これは危ないとばかりに、トカゲのしっぽ切りよろしく、「舛添に巻きぞえになるのはいや」と切り捨てる。自分の支持責任には頬被りしたままなのだ。無責任極まれりとは、まるで安倍首相のためにある言葉ではないか。
  安倍首相、そのブレーン、「日本会議」などが訴える憲法改悪論でもっとも問題なのは、国民が国家-政府にたいして、こういう国をつくれという、立憲主義をうち捨て、国民は国家の下でこうしろと強要する憲法にしようとする点だ。非立憲主義とよばれるもので、現憲法と180度違った憲法観だ。
  彼らの主張は、天皇を中心とした憲法だ。「比類なき一貫した歴史を持つ日本」は天皇を中心に形成され、そのなかで、はぐくまれてきた「日本人の価値観」を現憲法は反映していないから改憲が必要だというのだ。その下で展開されるのが、権利ばかりを主張するのではなく義務や責任が大切(人権や自由の制限)、公のために個人が生きること(滅私奉公)である。家族が大切なのに、現憲法には家族条項がないから子どもへの虐待や高齢者への虐待がおこる、などという主張もある。本末転倒とはこのことで、時代錯誤の笑止千万のたぐいが、彼らの根幹にあるものだ。
  そして、こうした流れは、アジア侵略の歴史を認めず葬り去ろうとする排外主義者や大東亜戦争肯定論者と陰に陽に響き合い、ネットを中心にしたこうしたウソ、デマの拡散で世論形成を図ろうとしている。
  天皇制強化-部落差別の強化にもつながる憲法改悪に、断固反対する姿を鮮明にし、この選挙で改憲勢力に3分の2以上の議席を与えないことの大切さも訴えていこう。

 こうした安倍政権が続くなら、どのような事態が生じるか。
  経済面では、これまで国民が貯めてきたものが将来にわたって奪われ尽くし、大混乱と不況を招くだろう。たとえば、年金積立金の金融市場への放出、投機など。そのうえで、規制緩和や特区や改革という名の下に、大企業や海外資本に有利な展開がおこなわれ、ますます中小の企業者は苦しめられる公共部門への資本の参入により国民は高価な代価を支払わされる。
  安保法制の改定による海外派兵で、自衛隊にも死者が出る。そのとき、国家に尽くした者として、大大的な演出の下、靖国神社への合祀がおこなわれるだろう。つまり、国家に尽くさぬ者、はみ出す者は差別-排外の対象となるということだ。そして、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、中国への敵意が、いま以上に煽られ、完全に仮想敵国とされるだろう。テロやスパイ活動の名の下で、反戦・平和を求める人びとは弾圧を受ける。マイナンバーカードや盗聴、共謀罪の活用が大いに図られる。裁判では、取引などという、えん罪づくりのワナが待ち受けている。
  「一億総活躍社会」とは、労働力が足りないという現実にたいして、戦争体制下での国家総動員よろしく、すべての国民の労働力を奪い尽くそうというものだ。この一億のなかには、外国人労働者などはふくまれていない。根底に排外主義があるのだ。
  教育では、教科書は政府の意に沿うものにされ、徹底的に幼児期から国家・家族中心の歴史観や政治観が注入され、生活態度が養われていく。
  書き連ねると尽きないほど数多くの面で、社会の再編が目論まれている。こうした政策展開を、マスメディアをコントロールしながら、私たちが知らないうちに、あるいは有効な反撃を打てない間に、同時多発的に展開しているのが、今日の安倍政権なのだ。これまでの保守政権は、賛成・反対派の意見を聞き、両者の意見をくみながら、政策展開を図ってきた。だが、安倍政権にはそれすらない。まったく強権的なのだ。
  アベノミクスの破綻を隠しながら、経済政策を前面に打ち立て参議院選挙での勝利をめざすのが安倍首相だ。参議院選にある憲法改悪の隠された意図を暴露し、私たちの主張も訴えながら、この選挙戦で勝利し、安倍政権の暴走、戦前レジーム(体制)への回帰にストップをかけよう。


 

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