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部落解放に向けた理論の深化と実践交流をすすめ、第50回奈良全研を成功させよう

「解放新聞」(2016.09.19-2779)

 憲法改悪を画策する安倍政権のもとで、国権主義の政治がすすめられるとともに、差別排外主義の台頭のなかで、悪質かつ確信犯的な部落差別事件や、公然と差別煽動をよびかけるヘイトスピーチなどが横行している。また、7月に神奈川県相模原市の障害者施設でおきた殺傷事件では、被疑者が「障害者は税金の無駄」、 「障害者なんていなくなればいい」として、入所者19人を殺害し26人に重軽傷を負わせた。まさに、障害者への強い偏見、差別意識を露骨に表出した特定の集団や個人を標的にするヘイトクライム(憎悪犯罪)である。先の舛添東京都知事の辞任にともなう都知事選挙でも、ヘイトスピーチをくり返す「在特会」の元会長が立候補し、約11万4千票を獲得するなど、人権をめぐる情況はますます悪化している。
  この間、富の再配分を不必要とする新自由主義経済政策によって格差は拡大し、貧困問題は深刻化している。さらに労働法制の改悪によって非正規雇用がすすみ、不安定な収入による低所得者層を増大させている。しかも金融緩和策による株価高騰や円安などを中心にしたアベノミクスは、一部の富裕層をさらに豊かにする一方で、貧困問題は放置されたままである。とくに2013年に「子どもの貧困対策法」が成立したが、情況は改善されず子どもの貧困問題は大きな社会問題となっている。
  また、安倍政権はあたらしい成長戦略として強い経済、子育て支援、安心の社会保障をとりあげ、「女性の輝く社会」や「一億総活躍社会」をめざすとしているが、待機児童の解消や介護離職ゼロへの対策はすすんでいない。株価高騰と円安だけを頼りにするアベノミクスでは実質賃金が減少し、実体経済の景気回復は実現できない。そもそも包摂社会の実現とは正反対の政策をすすめているのが安倍政権なのである。

 こうした社会的、政治的情況のなかで、部落解放・人権政策の確立に向けたとりくみをどのように前進させていくのか。10月18日から3日間、奈良市で開催される部落解放研究第50回全国集会(第50回奈良全研)で論議を深めよう。
  第50回奈良全研は、第50回という大きな節目であるとともに、全国水平社発祥の地・奈良での開催となった。困難な時代をきりひらく、あらたな部落解放運動の第一歩をふみだすにふさわしい集会として成功させよう。
  全体集会の記念行事は『永続敗戦論−戦後日本の核心』の著者である、白井聡・京都精華大学人文学部専任講師に「永続敗戦論から展望するこれからの日本」というテーマでの講演と、地元の奈良県連から、県連としての運動の基本方向を提示してきた「両側から超える」部落解放運動を中心にした提起を予定している。開会行事では、「全国水平社創立宣言」の起草者の一人でもある西光万吉先輩が魅了されたという雅楽 「蘭陵王」の舞を天理大学雅楽部・おやさと雅楽会に演じていただく。
  3日目の全体会では、詩人の金時鐘さんと全国同和教育研究協議会(現全国人権教育研究協議会)の寺澤亮一・元委員長がそれぞれ講演をおこなう。金時鐘さんは『朝鮮と日本に生きるー済州島から猪飼野へ』(岩波新書)で大佛(おさらぎ)次郎賞を受賞した。兵庫県立湊川高校教員の体験などから差別問題についても積極的に発言されてきた詩人である。日日、差別を醸(かも)しているいまの日本で「在日を生きる」ことの意味をふまえ、差別の現在とどう向き合っていくのかをテーマにした講演である。また、寺澤亮一さんには長年にわたって同和教育にとりくんできた立場から、総括的な部落解放運動の歩みをテーマとして、とくに1996年に提出された「地域改善対策協議会意見具申」の策定にかかわった「地対協」委員として、「意見具申」策定にいたる経緯をふくめての講演で、それぞれ今後の部落解放運動の方向について貴重な問題提起をいただく。

 第50回奈良全研の2日目は、あらたな部落解放運動に向けたさまざまなとりくみの交流、提言をふまえて、7つの分科会で具体的に論議を深める。同和行政・人権行政の課題(第2分科会)では、隣保館をめぐる課題と具体的な地域福祉の活動をはじめ、公正採用選考や部落の実態把握のとりくみなどが報告される。人権啓発の課題(第4分科会)では、職場での女性の活躍推進や障害者の活躍支援などの具体的な事例報告と、報告をふまえての企業啓発の現状と課題についての問題提起がおこなわれる。
  また、差別事件の現状と今後の課題(第6分科会)では、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争と、大阪・兵庫を中心にした差別文書大量配布事件、差別CMへのとりくみなど、今日的な部落差別事件の具体的な報告をとおして、差別事件の特徴や今後の課題を討議する。人権の法制度確立の課題(第7分科会)では、「部落差別解消推進法」の動向、「ヘイトスピーチ規制法」や大阪市の「ヘイトスピーチ規制条例」制定の効果や課題、「障害者差別解消法」への自治体の対応のほか、国連・女性差別撤廃委員会の日本政府への勧告内容など、国際的な差別撤廃のとりくみをふくめて、個別課題の報告をとおして、総括的な人権の法制度確立に向けた今後の課題を明らかにする論議を深める。ほかにも、奈良での「部落史見直し」や沖縄の米軍基地撤去の闘いとの連帯、水平社博物館のとりくみ、狭山再審の闘いの現状と課題などの分科会も予定している。さらに、地元実行委員会の企画として水平社博物館をはじめとした全国水平社の闘いと、地域でのまちづくり運動を学ぶフィールドワークにもとりくむ。
  さきの参議院選挙では改憲勢力が議席の3分の2をこえた。さらに、憲法違反の「戦争法」にもとづき、南スーダンでは自衛隊の軍事行動が現実化している。格差や貧困を放置したまま、海外での武力行使をすすめるという、あらたな戦前の情況を打ち破り、人権と平和の確立を求めるとりくみを大きく前進させることが求められている。
  全国水平社発祥の地でひらく第50回奈良全研で、地域や職場でのさまざま実践を交流し、部落解放・人権確立に向けた論議を深め、あらたな部落解放運動の展望をきりひらこう。


 

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