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「部落差別解消推進法」制定をふまえ、人権の法制度に向けた連帯・協働のとりくみを強化しよう

「解放新聞」(2016.12.19-2791)

 憲法違反の「戦争法」にもとづいて、自衛隊が南スーダンに派兵された。派兵された自衛隊には、「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防護」が新任務として付与されている。いま、南スーダンは、昨年8月の和平協定が破棄され、政府軍と反政府軍が各地で武力衝突するなど、内戦状態にある。国連の報告書でも明らかなように、政府軍が住民を襲撃し、激しい戦闘で多くの死傷者が出ている。
  すでに国連平和維持活動(PKO)の参加要件が失われているにもかかわらず、自衛隊派兵を強行し、自衛隊が戦争行為に加担することで、「戦争法」の発動を狙い、憲法改悪を先取り的にすすめようとしているのである。自衛隊が「殺し、殺される」ようなことを許してはならない。
  平和憲法のもとで、自衛隊の存在をふくめて、さまざまな困難な課題がありつつも、敗戦後、いっさいの戦争行為をしななったことで、70年以上の長い時間をかけて培ってきたこの国の社会的合意が反故にされようとしている。平和のもとであればこそ、基本的人権の伸長と民主主義の確立に向けた多くの人たちの献身的な努力の成果が生み出されてきたのである。
  しかし、今日の社会的政治的情況は、貧困と格差が深刻な社会問題となり、非正規労働などの不安定な就労実態が慢性化し、社会保障制度や労働法制の改悪がすすめられている。そうした社会への不安や不満を背景に、公然と差別を煽動するヘイトスピーチや、7月の神奈川県相模原市の障害者施設での大量殺傷事件などのヘイトクライム(憎悪犯罪)がおきている。また、4月の熊本・大分を中心にした熊本地震では、朝鮮人が井戸に毒を入れたなどの悪質な差別デマがインターネット上で流された。まさに関東大震災での朝鮮人や社会主義者の虐殺を想起させるものだ。こうした実態が、いまの日本の人権状況である。

 こうした差別の厳しい実態をふまえ、5月に「ヘイトスピーチ解消法」が制定された。差別言動をくり返すヘイトスピーチには、人種差別撤廃委員会から厳しい勧告が出されていた。大阪市では、1月に「ヘイトスピーチ規制条例」が制定されていたが、ようやく国の段階でも法的措置が実現したのである。「ヘイトスピーチ解消法」は、罰則規定がなく、ヘイトスピーチの対象者である「本邦外出身者」を「適法に居住していること」などの要件を設けるなど、問題点も多い。しかし、こうした理念法であっても、神奈川県川崎市では、市がヘイトデモでの公園使用を不許可にし、カウンター行動のとりくみでヘイトデモを阻止するなどの効果もあらわれている。
  人権の個別課題では、「男女雇用機会均等法」「障害者差別解消法」「DV禁止法」や「子どもの貧困対策法」など、それぞれに不十分な点もあるが、法律での対応がされている。また、性的マイノリティに関する法制度も検討されている。
  こうしたなかで、部落問題に関しては、33年間にわたる事業法である「特別措置法」の終了後は、「人権教育・啓発推進法」(2000年)で国や自治体などがとりくみをすすめてきたが、財政的な面もふくめてまだまだ課題も多かった。この間、部落解放・人権政策確立のとりくみとして、「人権擁護法案」の抜本修正のとりくみや「人権委員会設置法」制定に向けて、中央実行委員会−都府県実行委員会が一体となって活動を強化してきたが、残念ながら法制定を実現できなかった。
  「人権擁護推進審議会」が01年5月に提出した「人権救済制度の在り方について(答申)」で要請されてきた人権侵害救済制度の確立という課題を放置したままの政治責任も大きい。

 一方、さまざまな働きかけのなかで、この間、自民党政務調査会のなかに「差別問題に関する特命委員会」と「部落問題に関する小委員会」が設置され、部落差別解消に向けた論議がすすめられてきた。この小委員会でのヒアリングで、部落解放同盟は「全国部落調査復刻版」出版事件や、大阪・兵庫を中心にした大量差別文書バラまき事件などをとりあげ、部落差別の実態を強く訴えた。また、中央集会などのとりくみの積みあげのなかで、「部落差別解消推進法案」が自民・公明・民進の3党による議員提案として5月に国会に提出された。先の通常国会では継続審議となったが、この臨時国会では、11月17日の衆議院本会議で可決、参議院に送付された。
  この間、中央実行委員会加盟団体や都府県実行委員会の中央集会、要請行動などが精力的にとりくまれてきたが、12月8日の参議院法務委員会で採決、翌9日の参議院本会議で可決、成立した。とくに、6日の参議院法務委員会では、参考人意見陳述で西島書記長が部落解放に向けた自身の思いと、結婚差別、鳥取ループ・示現舎の裁判闘争など、いまだに部落差別が根深く存在していることを明らかにし、質疑のなかで法律の必要性を強く訴えた。
  「部落差別解消推進法」は、いまなお厳しい部落差別が存在することを明らかにし、しかもインターネット上の差別情報の氾濫など高度情報化社会でのあらたな差別の実能だも言及している。そのうえで、国や自治体が相談体制の充実、教育・啓発の推進、実態調査などにとりくむこととしている。財政措置など、「部落差別解消推進法」には不十分な点もあるが、「部落差別は社会悪である」ということを、あらためて明らかにした意義は大きい。もちろん法律だけに依存していても、部落問題が解決できるわけではない。私たちには、全国水平社いらいの部落解放運動のなかでかちとってきた解放の思想がある。
  「部落差別固定化法」「部落差別永久化法」などと反対したり、消極的な評価や政治的背景をとりあげるよりも、現存する部落差別と真剣に向き合い、差別を支える社会意識や社会の仕組み、実態を変革、改善していくために、ともに闘うことを訴えることのほうが重要ではないのか。
  「部落差別解消推進法」の制定をふまえ、それぞれの人権課題、差別問題へのとりくみと連帯、協働して、総合的な人権の法制度確立に向けてさらに活動を強化しよう。


 

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