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第74回全国大会の成功に向けて運動方針案の論議を深めよう

「解放新聞」(2017.01.30-2796)

 第74回全国大会を3月2日から2日間、大阪市でひらく。全国大会に提案する運動方針案では、この間の国内外情勢について、イギリスの欧州連合(EU)からの完全離脱や、「アメリカ第一」をめざすトランプ大統領の就任などの背景には、新自由主義政策のもと金融資本主義によるグローバル化の破綻があり、その反発が移民や難民問題を契機にした差別排外主義に結びついていることを強調している。
  新自由主義政策では、富(所得)の再配分は不必要であり、格差や貧困の問題は自己責任とされる一方で、社会的構造的な差別・分断・断絶が強まっている。そのことが人種・民族・宗教などを理由にした対立を深刻化させ、フランス、ドイツ、イタリアなどでの排他的な民族主義政党の勢力拡大につながっている。
  しかも中国やロシアも、資源確保に関連した領土・領海問題で強硬姿勢を続けており、軍事的対立もふくめて緊張が深まっている。さらに、この間のアメリカなどによるイラクやアフガニスタンをはじめとした軍事介入が、IS(イスラム国)などのテロを世界に拡散させる結果となっている。
  このような国際情勢のもとで、安倍政権は「戦争法」にもとづいて、南スーダンでの「駆けつけ警護」「宿営地の防護」などの新任務を付与したうえで、自衛隊の派兵を強行した。国連平和維持活動(PKO)の参加原則である、紛争当事者間の停戦合意などが、すでに崩壊しているにもかかわらず、憲法改悪を先取りする目的での自衛隊の派兵を許してはならない。
  トランプ大統領のように、「核戦略の強化」などと、武力を手段にして平和を実現することはできない。しかし、安倍首相は一方的にトランプ政権に追従し、沖縄でも辺野古の新基地建設や高江のヘリパッド基地建設を強行している。人権と平和の確立に向けた闘いはますます重要だ。反戦平和の協働した闘いを強化し、「戦争法」廃止や反基地闘争のとりくみをすすめよう。

 この沖縄での基地反対闘争にとりくむ市民に、大阪府警機動隊員は「土人、シナ人」と差別暴言を浴びせ、東京ローカルのテレビ局のニュース番組で、反対運動を攻撃するために、運動の支援が金銭目的であるなどのように事実を歪曲し、「なぜ韓国人が反対運動に参加するのか」との民族差別発言まで報道した。さらに、神奈川県相模原市の障害者施設での障害者殺傷というヘイトクライム(憎悪犯罪)、福島第1原発事故で自主避難している転校生へのいじめや差別も全国で深刻な社会問題になっている。また、神奈川県小田原市では、生活保護担当者が「不正受給する人はクズだ」などの内容を英文で記載したジャンパーを着用して、受給者宅を訪問していたことが明らかになった。
  まさにこれが、日本の人権状況の実態だ。部落差別事件でも、裁判闘争を闘っている鳥取ループ・示現舎による「全国部落調査」復刻版出版差別事件でも明らかなように、インターネット上の差別情報の氾濫をはじめ、ヘイトスピーチによる差別煽動が公然とおこなわれている。昨年5月に「ヘイトスピーチ解消法」が成立し、川崎市でのヘイトデモが、公園使用を拒否されるとともに、カウンター行動のとりくみで中止になるなど、法制定の具体的な成果もあった。しかし、「在特会」元会長が昨年7月の東京都知事選挙に立候補し、「公職選挙法」では、ヘイトスピーチをくり返すことが禁止できないなどの問題もあり、全国の自治体選挙でも同様のことがおきている。
  法律の制定は重要だが、それを活用していく運動が必要だ。昨年12月9日に成立した「部落差別解消推進法」でも、まずは法律制定の周知徹底をはかることが大切だ。法律の意義は、部落差別がいまなお存在し、その解消に向けては、部落差別を許さない社会づくりが重要だとしたことである。さらに部落差別が社会悪であることを訴え、国と自治体が部落問題の解決のために、相談体制と教育・啓発の充実、実態調査の実施を明記している。今後、この「部落差別解消推進法」の積極的活用に向けて、自治体との交渉で、この法律への見解を明らかにさせるとともに、「特別措置法」終了後の同和行政の総括をふまえた施策の充実を求めていかなければならない。
  また、「ヘイトスピーチ解消法」だけでなく、「障害者差別解消推進法」や「子どもの貧困対策法」など個別の人権課題の法制度の活用にも学びながら、国内人権委員会の設置など共通のとりくみを強力にすすめていくことも求められている。
  さらに、これまで人権教育の枠組みのなかで、学校現場などでの同和教育が形骸化し、後退してきたことをふまえ、あらためて部落差別の実態から学ぶことを基軸にした教育・啓発の推進をはかることも重要だ。また、相談体制の充実をすすめることで、地区が直面する困難性を具体的に明らかにすることができる。今日、部落がどのような実態にあるのか、「人権のまちづくり」運動や隣保館活動の成果とも重ね合わせながら、総合的なとりくみをすすめていこう。こうした法律の意義と活用、今後の運動の方向について、さらに全国大会での論議を深めて、大会後の全国ブロック別支部長研修会でとりくみ内容を意思統一し、全国的なとりくみをすすめていきたい。

 狭山再審闘争では、ウソの「自白」で発見された万年筆が被害者のものではないことを科学的に証明した新証拠や、取調べテープ(記録)をもとにした2通の筆跡鑑定を提出し、石川さんが当時「脅迫状」が書けなかったことを明らかにした。また、この取調べテープを再現したDVDでウソの「自白」の強要や誘導のようすも明らかにされている。こうした新証拠やDVDを活用した学習、教宣活動を強め、半世紀以上も無実を訴え続けている石川さんの闘いに応え、再審実現に向けた世論を大きく拡げていこう。
  さらに、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争では、確信犯的で悪質な差別を裁判でも明らかにし、裁判闘争に勝利することはもちろん、「部落差別は社会悪」とした「部落差別解消推進法」の制定をふまえ、広く部落差別の実態を訴え、差別者を社会的に包囲する闘いをすすめよう。差別糾弾闘争は部落解放運動の中心的課題だ。今日、差別糾弾闘争は理論的にも実践的にも深化、豊富化されている。部落差別がある限り、差別糾弾闘争への誹誘中傷を許さず、闘いを発展させていかなければならない。
  全国大会では、ほかにも「男女平等社会実現基本方針」(第2次改訂版)の具体化や「人権のまちづくり」運動をはじめ、組織の強化と拡大、部落解放運動の次代を担う人材育成などの喫緊の課題についても、各地の実践やとりくみの報告を交流しよう。
  第74回全国大会は、「部落差別解消推進法」の意義や評価、活用の方向をはじめ、狭山再審闘争の勝利、差別糾弾闘争の強化と深化のとりくみなど、今後の部落解放運動にとって重要な大会になる。部落解放運動を飛躍させる全国大会として成功させるために、運動方針案の豊富化に向けて、都府県連・地区協議会・支部での論議を深めよう。


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