NEWS & 主張

主張

 

市民を監視し管理社会をつくる「共謀罪法案」を廃案にしよう

「解放新聞」(2017.04.10-2806)

 安倍政権は、2017年3月21日、組織犯罪を計画段階で処罰を可能にする「共謀罪」の成立要件を絞った「テロ等準備罪」を新設する「組織犯罪処罰法」改正案を閣議決定した。衆議院に提出し、6月18日までひらかれる今国会で成立させる方針だ。これまで3回、国会に提出されたが、いずれも廃案となった「共謀罪」の表紙だけを「テロ等準備罪」とかえて、安倍政権は国民を欺き成立をもくろんでいる。基本的人権を侵害し、多くのえん罪を生み出す可能性のあるこの法案を絶対に成立させてはならない。

 今回の法案の内容を記載する。第一に、名称を「共謀罪」から「テロ等準備罪」を新設する「組織犯罪処罰法」としている。第二に、適用対象を「団体」からテロリズム集団その他の「組織的犯罪集団」の団体活動として行為を実行するための組織としている。第三は、2人以上で犯罪の実行を計画した者を処罰する。第四に、そのうちの誰かが「物品や資金の手配」「関係場所の下見」といった「準備行為」をした場合に適用する。「一般市民は対象にならない」と説明する一方、通常の団体が組織的犯罪集団に「一変」した場合には対象になるとしている。

 政府・与党は、国民・世論の反発を避けようと、対象と犯罪を絞り、条文に「テロリズム」の文言を盛りこんではいるが、過去に提案された「共謀罪」と本質は変わっておらず、多くの問題点をふくんでいる。

 問題点の一つは、適用対象が「団体」から「組織的犯罪集団」とされ、その定義は「目的が長期4年以上の懲役・禁固の罪を実行することにある団体」とされている。しかし、最初から犯罪を目的としてつくられた団体はなく、組織的犯罪集団であるかどうかは、捜査機関の判断に委ねられている。それに付け加え、適法な団体が変質して違法行為を計画した場合も、その時点で「組織的犯罪集団」となると定義されている。いい換えれば、普通の会社や市民団体・労働組合でも、犯罪を共謀したと捜査当局に判断されれば、「組織的犯罪集団」と認定され、「共謀罪」の対象とされ、多くのえん罪を生み出す可能性のあるきわめて危険な法律だ。

 こうしたことを連想させる事件が昨年、おこっていた。昨年の参議院選挙の直前に、大分県警別府署が、野党候補を応援する労働組合「連合大分」などが入る施設の敷地内に入り込んで監視カメラを設置し、建物に出入りする人びとを隠し撮りしていた事件だ。大分県警は、同署幹部ら警察官4人を建造物侵入容疑で書類送検し、関係者の処分を発表した。県警は、同署幹部らはカメラ設置を県警本部に報告しておらず、県警本部は事件に関与せず、違法捜査も知らなかったと説明している。しかし、国政選挙となれば、選挙違反の摘発に備えて県警本部に捜査本部が設置されており、しかも、今回の事件で処分されたのは、50代、40代というベテラン捜査員であったことから、大分県警の説明をにわかに信用することはできない。もし「組織犯罪処罰法」が成立していたら大分県警別府署の警察官4人は建造物侵入容疑で書類送検されず、逆に、労働組合の幹部が、公職選挙法の「共謀罪」で逮捕される危険性があったことは、いうまでもない。

 二つめの問題点は、「法案」では、犯罪は計画で成立するが、処罰のためには合意成立後の準備行為が必要とされている。しかし、どの程度の具体的な行為を準備行為とするか、はっきり限定されておらず、何が処罰の対象かは、曖昧だ。2006年5月の衆議院法務委員会での答弁では、「準備その他の行為」に銀行から貯金をおろす行為がふくまれるか、も捜査機関の判断次第であることが明らかになっており、共謀の合意さえあれば、関係場所に行った、預金をおろす、という市民が日常的におこなっている行為が犯罪とみなされる、という恐ろしい法律だ。

 三つ目は、安倍首相は、「組織犯罪処罰法」を改正しなければ「国際組織犯罪防止条約」が締結されず、2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催できないと主張している。また、「法案」の閣議決定後の記者会見で菅官房長官は、「法案に対する不安や懸念を払拭する内容で、かつての共謀罪とは明らかに別物だ。一日も早い法案の成立をめざす」と発言している。しかし、「国際組織犯罪防止条約」における国連の立法ガイドでは、対象は経済活動をおこなう越境的犯罪組織であり、「政治的テロリストグループ」をふくまないとされており、政府の説明は破綻している。

 しかも日本は、「爆弾テロ防止条約」などテロ対策の主要な13の条約すべてを締結。国内法でも、テロリズムにたいして「爆発物取締罰則」「内乱予備陰謀罪」「外患に関する予備陰謀罪」「私戦予備・陰謀罪」「殺人予備罪」などがあり、殺人や放火、強盗やハイジャックなど重大犯罪は、予備・準備行為でも罰することができる。「国際組織犯罪防止条約」を締結するために、わざわざ「組織犯罪処罰法」を改正する必要がないことは、明らかだ。そもそも締約国187か国中、条約を批准するために「共謀罪」を新たに導入したのは2か国しかなく、ほとんどの国では、条約の一部を留保、国内法を整備し、条約を批准しているのが現状だ。

 また、当初、法案の条文には「テロ」の文字はなく、政府が国会答弁で使ってきた呼称「テロ等準備罪」との整合性が与党の事前審査で問題にされ、「組織的犯罪集団」の前に「テロリズム集団その他の」という文言を加える修正をおこなった。過去の原案では、676あった対象犯罪が与党内の議論で絞り込まれ、「現実に想定される罪」を対象に277となった。罪名を変更しようが、対象犯罪を絞り込もうが、この「法案」は、憲法19条が保障する内心や思想の自由を侵害し、刑法の基本原則を定めた憲法31条に反しており、絶対に成立させてはならない。

  1925年に、「治安維持法」が成立し、思想、信条を罰することができるようになった。1928年には、政府が発布できる緊急勅令によって、「治安維持法」が「改正」され、それまでの取り締まり対象だった共産党に加え、労働運動や部落解放運動なども取り締まり対象に加えられた。これ以降、活動家だけでなく普通の人が取り締まられるようになり、拡大解釈で戦争に反対する勢力を弾圧するため使われた。戦争は、最大の差別であり、いままた負の歴史をくり返そうとしている。

 安倍政権は、「秘密保護法」(2013年)、「戦争法」(2015年)と、戦争のできる国内体制の整備を強行し、盗聴法拡大等(2016年)に引き続いて、「共謀罪法案」を「組織犯罪処罰法」改正案として成立させようとしている。その目的は、戦争ができる国づくりに向けて市民を監視し、管理社会をつくることだ。3度も廃案になった「共謀罪」をオリンピックとテロ対策を口実に、法制定させようとしている暴挙を、絶対許してはならない。基本的人権の抑圧を正当化するこの「法案」を廃案にするために、市民が連帯し反対の声をあげていく必要がある。現在、市民運動の中心となってきた秘密保護法廃止へ!実行委員会を再編した共謀罪NO!実行委員会との共同よびかけで、平和フォーラムが主導する戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会が、「共謀罪」の創設に反対する緊急統一署名を展開している。廃案に向け、共闘組織や市民と連帯し、各都府県連全支部は奮闘しよう。


 

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37  ℡(06)6581-8516 fax (06)6581-8517
定価 1部 8頁90円 年ぎめ1部4320円(送料別)
送料 年1968円(1部購読の場合、それ以外はお問い合わせください。)