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NEWS & 主張

主張

 

荊冠旗のもとに団結し、
2018年を部落解放運動の飛躍の年に

「解放新聞」(2018.01.15 -2842)

 昨年10月の衆議院解散・総選挙は、森友学園や加計学園での深まる疑惑、「戦争法」や「共謀罪」廃止に向けたとりくみの前進などに追い詰められた安倍政権の疑惑隠しと政権延命のためだけの自己都合解散であった。安倍首相は、2019年10月としている消費税増税の使途変更や朝鮮民主主義人民共和国の弾道ミサイル発射を「国難」として、臨時国会冒頭での衆議院解散を強行した。

 われわれは、安倍政権の退陣に向けて、推薦候補の必勝に全力をあげてとりくんできたが、総選挙直前の民進党の希望の党への合流や立憲民主党の結党など、野党側の混乱もあり、与党などの改憲勢力が3分の2以上の議席を確保するという厳しい選挙結果となった。

 自民党は憲法改悪に向けて、昨年11月に「憲法改正推進本部」全体会合をひらき、「自衛隊の明記」「教育の無償化と充実」「緊急事態対応」「参議院の合区解消」の4項目を中心に、党内の意見集約を開始した。安倍首相も改憲発議の日程を決定しているわけではないとしながら、2020年までの改憲を公言している。

 また、昨年12月には、約97兆7千億円の来年度予算案が閣議決定された。社会保障費である生活保護費を削減する一方で、軍事費は安倍第2次政権発足いらい、6年連続の増額で、過去最大の約5兆2千億円となった。とくに、沖縄の辺野古新基地建設の強行でも明らかなように、沖縄振興費は2年連続の削減だが、基地建設費は過去最大になっている。米国のトランプ大統領の要求による兵器購入など、まさに「戦争をする国」づくりと日米軍事一体化をいっそうすすめるための予算である。安倍政権による戦前回帰の反人権主義、国権主義の政治を許してはならない。

 改憲をめぐる情況は緊迫している。われわれは、安倍政権による憲法改悪策動に抗して、全力をあげて闘い抜かなければならない。人権と平和、民主主義の確立こそ、部落解放運動がめざすものだ。戦争協力を余儀なくされた全国水平社の歴史としっかりと向き合い、差別と戦争に反対する闘いに全力でとりくもう。

 われわれは、この間、人権侵害救済制度の確立をめざして、部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会のとりくみを中心に活動をすすめてきた。安倍政権のもとでの厳しい政治情況のなかでの闘いであったが、われわれは、人権問題の解決は政治の責任であり、党派をこえた課題であることを強く訴えてきた。中央集会の開催、政党、国会議員要請、政府交渉などのこうした粘り強いとりくみの積み上げが、「部落差別解消推進法」の実現に結びついたのである。

 「推進法」制定にかかわる論議で明らかになったことは、今日の部落差別の厳しい実態をどのように捉えるかということだった。反対派や消極派は、部落差別はすでに解決した問題であるとか、解消課程にあるのだから10年の時限立法にするべきであるなどとしてきた。しかし、鳥取ループ・示現舎による書籍『復刻 全国部落調査 部落地名総鑑の原典』出版計画やインターネット上に全国の被差別部落の地名と「部落解放同盟関係人物一覧」を掲載することで、部落差別を煽動する悪質きわまりない差別事件、土地差別問い合わせ事件、結婚差別など、今日的な部落差別事件の実態を広く訴えることで、立法事実としての厳しい部落差別の存在が共通の認識となったのである。

 「推進法」の意義は、部落差別が今日的に厳しい実態として存在することをふまえ、部落差別が社会悪であり、それを許さない社会づくりに向けた国や自治体が施策をすすめる必要性を明記したことにある。まさに、部落解放行政の推進に向けた基本理念を示したものであり、われわれは部落解放運動の課題として、この「推進法」の活用、具体化にとりくんできた。法の周知徹底、相談体制の充実、教育・啓発の推進、実態調査など、まだまだ課題は多いが、昨年12月22日には、兵庫県たつの市議会で「たつの市部落差別の解消の推進に関する条例」が可決された。「推進法」制定を受けた全国初の条例である。こうした「推進法」具体化に向けた成果を全国で積み上げ、部落解放行政の前進をかちとっていこう。

 さらに、今後の課題として、「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」などの個別人権課題の法制定をふまえ、連帯・協働して、人権侵害救済制度の創設など、包括的な人権の法制度の確立に向けてとりくみをすすめていくことが求められている。

 大きな山場を迎えている狭山第3次再審闘争は、事件発生から55年を迎える。半世紀以上も、無実を訴え続けている石川一雄さんの闘いは、部落解放運動にとどまらず、全国の住民の会をはじめ、支援と共闘のとりくみを大きく拡げてきた。

 この間、弁護団の精力的なとりくみで、三者協議のなかで、不十分ながらも証拠開示がなされ、それにもとづいて多くの新証拠が提出されてきた。とくに、脅迫状の字の違い、犯行に使用された手拭いの問題、取調べテープの分析、自宅で「発見」された被害者のものとされる万年筆が被害者ものでないとする鑑定書など、いまや石川さんの無実はますます明白になっている。

 昨年7月には、長年、献身的な活動を続けてこられた、狭山事件の再審を求める市民の会の庭山英雄・代表が死去された。後任の新代表には、反差別国際運動の武者小路公秀・共同代表が就任、鎌田慧・事務局長とともに、今後、55年を節目とした活動を企画している。また、昨年12月には、東京高裁の植村稔・裁判長から、後藤眞理子・裁判長への交代もあった。新たな裁判長のもとでの三者協議を注視しながら、あらためて事実調べと全証拠開示を求めるとりくみを強めていこう。

 狭山闘争は、石川さんの無実を明らかにする闘いをとおして、人と人を結び、社会を、人間を変革していくという、部落解放運動そのものであるともいえる。であるからこそ、われわれは、この闘いに絶対に勝利しなければならない。今年こそ、事実調べ-再審開始をかちとるために、全力をあげて闘いを大きく前進させよう。

 さらに、部落解放運動の当面の重要な課題として、組織の強化・拡大と運動の活性化に向けた人材育成のとりくみ、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争や差別糾弾闘争の強化、「人権教育・啓発推進法」の活用、「人権のまちづくり」運動の実践、男女平等社会実現基本方針の実践などがある。

 2022年には、全国水平社創立100周年を迎える。全国水平社いらいの闘いを正しく継承し、みずからの正義性を訴えるだけでなく、共感・連帯を創造する部落解放運動に挑戦し、2018年を飛躍の年にしよう。


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