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「共謀罪」強行成立から1年、
「共謀罪」を廃止し人権・平和・民主主義の確立を

「解放新聞」(2018.06.11 -2862)

 安倍政権は、これまで3度廃案になった「共謀罪」法案を、「テロ等組織犯罪準備罪」として国会に提出し、法務大臣のデタラメな答弁や法務官僚の出席強行をはじめとする強権的な委員会運営を重ねてきた。そして、2017年5月23日、衆議院本会議で強行採決された。

 この「共謀罪」には、さまざまな問題点がある。安倍政権は、「共謀罪」や「テロ等準備罪」を提出した背景として、国際組織犯罪防止条約を批准するために必要だと主張してきた。しかし、組織犯罪対策とテロ犯罪対策とでは、国際法上の共通のツールはあるが、処罰される行為の主体(犯罪集団)の範囲が違う。

 国際組織犯罪防止条約では、組織的な犯罪集団(麻薬取引などで利益を得る集団等)への参加を犯罪とするため、必要な立法や措置をとるとしているが、テロ行為やテロ集団への参加を犯罪としておらず、安倍政権の主張には矛盾がある。そもそもテロ犯罪にたいしては、飛行機のハイジャックやテロ集団を支援するための資金提供などの行為にたいし、別途関連する条約や国連決議が13もあり、それらすべてに日本は、十分な対応をとっている。むしろテロ対策に役立つことを口実にして、処罰範囲を大きく広くすることを狙いとしており、国際人権法上でも問題ある法律だ。

 この「共謀罪」は、現代版「治安維持法」ともいわれている。「治安維持法」は、1925年に制定され、「国体の変革」や「私有財産制度の否認」を目的として結社(団体)を組織したり参加したりすることを禁止する法律だった。その後、目的遂行罪が新設され、最高刑として死刑が導入され、予防拘禁を可能とするなど、つぎつぎと改悪されてきた歴史がある。「治安維持法」では、無政府主義者、共産主義者、社会主義者、労働運動関係者などがつぎつぎと身体拘束され、苛烈な拷問を受けながら、活動内容や関係者について虚偽の自白に追い込まれることもあった。「治安維持法」による被検挙者数は8万人にのぼるともいわれ、なかには拷問死や多くのえん罪を生み出してきた。まさに軍事拡大路線をすすめる大日本帝国に反する思想・言論を取り締まるための大弾圧法であった。

 「共謀罪」法の最大の問題は、その成立範囲が曖昧であり、当局による恣意的な適用を認め、えん罪を生むおそれがあるという点にある。市民運動や労働運動関係者を弾圧するために、市民団体・労働組合を「組織的犯罪集団」とみなし、「計画」にもとづく犯罪の「準備行為」の拡大解釈により、その関係者が大量逮捕されかねない。戦前の「治安維持法」が、労働運動、社会運動を弾圧してきた歴史をふり返れば、「共謀罪」のような法律が成立したことで、捜査機関による恣意的な運用により私たち市民の人権が脅かされるおそれがある。幅広い市民運動で「共謀罪」を廃止に追い込まなければならない。

 警察は、これまで原則として犯罪発生後に活動をはじめていた。しかし、「共謀」を立証するには犯罪発生前の活動が必要となってくる。

 「共謀罪」の制定・施行によって、つぎは「共謀罪」立件のためのおとり捜査、「通信傍受法(盗聴法)」のさらなる改悪で電話やメールの傍受対象を拡大し、新たに室内や街頭などでの会話が傍受されることもあり得る。さらには最高裁が違法としたGPS装着など、捜査手法を拡大しようという動きが出てくることが予想される。

 いわゆる「スノーデン事件」は、米国家安全保障局(NSA)がテロ対策として極秘に米国内にとどまらず日本をふくめ世界各国から大量の個人情報を収集していたことを、元NSA外部契約職員のエドワード・スノーデンが暴露した事件だ。

 米中央情報局(CIA)の元職員でもあるエドワード・スノーデンは、香港滞在中の2013年6月上旬、英米紙にたいしてNSAの情報収集活動をあいついで暴露した。米通信会社から市民数百万人の通話記録を入手し、インターネット企業のデータベースから電子メールや画像などの情報を集めていたという。この事件が明らかにしたように、日本も「共謀罪」の制定・施行によって、超監視社会に向かおうとしている。ただ、憲法13条でプライバシー権、19条で思想・良心の自由、21条で通信の秘密が保障されており、警察の権限が一気に拡大することはないが、その動向をわれわれ市民が注視していく必要がある。

 安倍自民党政権は、日本国憲法を改悪しようとしている。「自民党改憲案」では、個人間で人権と人権が衝突した場合の人権間の調整原理である「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に置き換えている。国家の安全や社会秩序を優先し、個人の人権を簡単に制限しようとしている。

 3月25日の自民党大会では、憲法9条、教育の無償化、緊急事態への対応、参院選挙区の合区解消などの「改憲案」を提示し、実現をめざす方針を採択した。また、安倍首相は4月14日におこなわれた自民党大阪府連の臨時大会で、「憲法に日本の独立と平和を守る自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つ。それが自民党の責任だ」などと発言し、憲法改悪の姿勢をますます鮮明にしている。

 一方、森友学園をめぐる財務省公文書の改ざんや加計学園をめぐり「首相案件」と書かれた文書の存在が明らかになった。また、「ない」とされていた防衛省のPKO日報があいついで発見され、組織ぐるみで隠ぺいがおこなわれていた事実が明らかになっている。安倍政権の支持率も30%台にまで下落するなど、安倍首相は信用できないという世論は急速に高まっている。昨年の衆議院選挙で「改憲」勢力が3分の2以上の議席を獲得したにもかかわらず、国会発議の見通しはまったく立っておらず、公明党も明確に「改憲」論議から距離をとりはじめている。

 私たちは、安倍政権による憲法改悪を絶対に許すことはできない。広範な市民と連帯し、国会内外の闘いでかならず阻止しよう。そして、「共謀罪」「戦争法」を廃止に追い込み、平和と民主主義、そして一人ひとりの人権を守るために安倍政権退陣に向け、ともに頑張ろう。


 

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