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主張

 

関東で初開催の埼玉全人保に結集し
解放保育・人権保育運動の原点を確認しよう

「解放新聞」(2018.08.27-2872)

 今年4月から、「国旗・国歌に親しむ」ことが明記された「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が施行された。施行後わずか数か月ではあるが、保育現場では「国旗・国歌」のあつかいに関して混乱もおこっている。

 私たちは2017年2月に「保育所保育指針」改定案が公表されて以降、「国旗・国歌」の記述の削除を求め、パブリックコメントへの意見送付や全国各地の関係団体の協力のもと、3万7000筆をこえる署名活動にとりくみ、厚生労働省へ提出した。パブリックコメントには2772件の意見が寄せられ、「国旗・国歌」の表記に関しては1800をこえる反対や懸念、削除を求める意見が寄せられたにもかかわらず、修正されることはなかった。そして、厚生労働省は「保育の現場において、絵本などの教材を活用しながら各保育所の創意工夫のもと、「親しむ」の趣旨に鑑みた保育が提供されるよう、解説書などで丁寧に周知していきます」との考え方を示した。

 しかし、「丁寧に周知」するとした解説書は施行直前の今年2月末に公表され、「国旗・国歌」に親しむことを「将来の国民としての情操や意識の芽生えを培うこと」につながるとしている。なぜ「国旗・国歌」に親しむことが「将来の国民としての情操や意識の芽生えを培うこと」につながるのだろうか、「国民としての情操や意識」とはどのようなもので、幼児期にその芽生えを培うことがどれだけ必要なのか、そういった解説はない。

 また、解説書には「日本の国旗に接し」との記述や「国旗が掲揚されている運動会に参加したり」との記述がある。あえて「日本の国旗」と記述する必要があるだろうか。厚生労働省は、「国旗・国歌を強制するものではない」としているが、この間の教育現場における学習指導要領にもとづいた「国旗・国歌」の強制・義務化と同様の事態になることが懸念される。多文化共生社会といわれる今日、子どもたち一人ひとりのさまざまなルーツを尊重した、多様性のある保育が求められているのではないだろうか。

 6月15日、「経済財政運営と改革の基本方針2018〜少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現〜」(骨太方針)が閣議決定された。安倍政権は、この「骨太方針」の「人づくり改革」で幼児教育の無償化を掲げ、3〜5歳のすべての子どもたちの幼稚園や認可保育施設の費用を無償化、認可外保育施設については、保育の必要性があると認定された子どもを対象に無償化にするとした。また、0〜2歳児については、住民税非課税世帯を対象として無償化にするとしている。実施時期については、来年10月からの全面的な無償化措置の実施をめざしているが、安全性や質の問題、また高所得世帯ほどその恩恵が厚くなることが懸念されており、さらに待機児童の増加などが問題として指摘されている。

 安全性や質が問題になるのは、無償化の対象をあらゆる認可外保育施設まで広げたことによる。認可外保育施設について「最低ライン」を定めた国の「指導監督基準」を満たしていない施設も、5年間を経過措置として、無償化の対象とする猶予期間を設けている。認可保育施設に入れず、認可外保育施設を利用しているケースも多いため、公平性を考えれば必要な措置ではある。安全確保、質の確保・向上をはかっている認可外保育施設もあるが、国が都道府県などに求めている原則年1回の立ち入り調査の2015年度の実施状況は、ベビーホテルとそれ以外の認可外保育施設で7割止まりであり、そのうち、基準を達成していない施設が4割もある。認可外保育施設での死亡事故が社会問題化したため、2001年に国が指導監督基準を決めて以降、事故防止のために規制を強化してきたこともあり、5年間の経過措置の撤廃を求める声もあがっている。無償化の実施まで1年あまりとなったいま、子どもの安全確保、保育の質を高めるためにも、さらに自治体の指導監督を強化し、自治体の指導を受けても改善しないまま運営を続けている施設への対策が必要だ。

 今年4月11日、厚生労働省が発表した昨年10月1日時点の待機児童数は5万5433人で、3年連続の増加となった。今後も「幼児教育・保育の無償化」にともなって保育ニーズが増え、待機児童問題が深刻化する可能性がある。現時点で保育士不足から受け入れる子どもの数を減らしている保育所もあり、待機児童対策で保育施設は増えているが、保育士の確保ができず待機児童が解消されない実情がある。国は2020年度末までの「待機児童ゼロ」を掲げ、待機児童対策として、基準を上回る保育士を置く自治体にたいし、基準並みに下げ、一人でも多くの子どもを受け入れることができるよう求めている。

 しかし、国の基準では保育士一人にたいして多くの子どもを担当しなければいけないため、保育の質が落ちるといったことも懸念される。厳しい勤務実態から離職していく保育士も多く、保育士の働く環境や待遇を改善しなければならない。また、貧困と格差が深刻化し、子育て世帯に教育費負担が重くのしかかる今日、保育や教育の負担を軽くすることも重要だ。

 さらに、10月からの生活保護の基準額の引き下げによって、子どものいる世帯への加算や支援策が削減され、低所得世帯へも大きな影響がおよぶことが考えられる。必要度の高い世帯から段階的に無償化するとともに、施設の面積や保育士の配置などの基準緩和ではない待機児童対策をすすめ、子どもの安全確保、保育の質を高めていくことが必要なのではないだろうか。

 指針の改定、待機児童解消、保育・教育の無償化、子ども・子育て支援法の改定など保育制度の転換期にあるなか、増加し続ける児童虐待や貧困問題など子どもを取り巻く状況は厳しい。保育政策の動向をしっかり把握するとともに、家庭や地域、保育所・幼稚園、小・中学校、行政、企業が一体となり、各地の子どもの状況や課題を共有し、すべての子どもの豊かな育ちを保障する保育政策の実現に向けたとりくみをすすめなければならない。

 9月23、24日の2日間、第41回全国人権保育研究集会を埼玉県で開催する。

 1日目のオープニングでは、川越市立名細第二保育園と吉見町立よしみけやき保育所の年長児が歌と手話歌を披露する。全体会では、埼玉県人権保育研究会の菊地直美・事務局長が「埼玉県人権保育研究会の歩み」と題した特別報告と、元幼稚園教諭・保育士の又野亜希子さんが「「命の輝き」〜車イスからみえる世界ってけっこう素敵〜」と題した記念講演をおこなう。2日目は、9つの会場にわかれ、第1分科会から第8分科会では各テーマにそった各地の実践報告、第9分科会「人権保育入門」では、解放保育・人権保育運動の歴史に学び、その継承・発展を目的とした学習講演をおこなう。

 関東で初開催となる全国人権保育研究集会で、すべての子どもの生きる権利とその成長を保障するとりくみとしてすすめてきた解放保育・人権保育運動の原点を確認するとともに、全国各地の実践に学び、議論と交流を深め、解放保育・人権保育運動を大きく前進させよう。


 

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