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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2131号/03.08.04

火花
北条民雄の生涯

高山 文彦 著  角川文庫(定価857円)

書籍画像 『新潮45』という雑誌に、高山文彦が松本治一郎伝を連載している。もうすでに敗戦後の歩みに入り、25回を迎えようとしてい
る。松本治一郎伝を書こうとした動機の一端が、今年の全九州水平社創立80周年記念大会で語れている。すばらしい、巨大な人物を知ったことが、契機だと。
 高山の北条民雄との出会いは学生運動のさなか、あるセクトから攻撃を受け、放逐される直前頃。北条の生への絶対肯定の文章との出会いだった。「絶対零度の無価値の王国だった。私は声をあげて泣きだしていた。ああ、こんな単純な真理にどうしてもっとはやく気づかなかったか。これからはどんなことがあっても、この一点だけを見つめて生きていけばよいのだと思った」と。
 「人生は暗い。だが、たたかう火花が、一瞬暗闇を照らすこともあるのだ」と北条は友人に書き送った。この書の題名「火花」はここから取られた。
 高山の執念ともいえる調査のなかから完結されたこの本は、多くの読者に暖かく迎えられるだろう。    (A)

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