「パレスチナが見たい」

森沢　典子　著　　TBSブリタニカ（定価1200円）

　本著『パレスチナが見たい』は、市井の保育士が、パレスチナで今を生きる人びとと出会い、なにがイスラエル軍によっておこなわれたかを知りたいと、３週間にわたりパレスチナで聞き取りをおこなったもの。冒頭から、子どもたちが経験した村全体の焼き討ちを詳細に私たちに知らせる。平易な表現がその情景をより鮮やかに浮かび上がらせている。
　フォト・ジャーナリストの広河隆一さんは、普通に生きる彼女が、その生活感と対峠させパレステナを記録したとき、それらは「私たちジャーナリストの仕事をこえていた」と評価する。私自身も、人間から人間に伝えられる言葉の威力に打ちのめされた。
　歴史の真実とは、とどのつまりこれらの作業によって記録されてきた。それは、「自己責任」としてではなく「人類の責任」として、次代へと継がれ、昇華されるものだ。今井紀明さんが記そうとした「劣化ウラン弾」の絵本もまさにここに連なったことだろう。NGOをこれ以上失墜させることは許すまい。　（汝）