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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2176号/04.07.05

〈民が代〉斉唱
アイデンティティ・国民国家・ジェンダー

鄭暎惠 著  岩波書店(定価2800円)

書籍画像 在日の社会学者、鄭暎惠さんの作品。01年9・11、02年9・17を契機に日本社会のありようは恐怖として在日の肌に痛い。「はじめていつまでこの国に住めるのだろう」と本著のなかで吐露する作者。わたし自身は学生時代に「三ツ矢研究」を知ったとき、いざというときの死に方を真剣にシミュレートしたことがある。
 在日がおわされた社会矛盾を丁寧に分析した作品。女性問題も絡めながら意欲的に編まれた。
 在日朝鮮人は歴史が生んだ産物だ。しかし、現代史と「今日という日」をいとも簡単に切りはなした視座では、在日の存在が日本をみつめる大きな窓となることに気づく人は少数だろう。
 この本の「あとがき」が一番胸に残った。日本社会は在日を散り散りにしているのではなく、「日本の民衆を乱用してきた」と、満蒙開拓団や「からゆきさん」への眼差しが熱い。だからこそ(民(たみ)が代)なのだ。「君が代」に抗する民衆の歌。あなたとアジアの歴史を背負うものとして、見つめあって歌おう。(汝)

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