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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2270号/06.05.29

松本清張の陰謀
『日本の黒い霧』に仕組まれたもの

佐藤 一 著  草思社(定価1700円)

書籍画像 プチ松本清張ブームだそうだ。清張は社会派推理小説を開拓し、現代史の謎に切り込んだ作家として知られる。しかし『日本の黒い霧』が描いたものは真実なのか。こういったとたん、「事実の如何を問わず」「事件の背景にアメリカの陰謀があったのではないかという視点そのものは日本のジャーナリズム、あるいは作家の仕事として希有のものであるといえる」という、清張賛美の声が聞こえてきそうだ。
 松川事件の被告にされた佐藤一さんは、清張が描く「黒い霧」の「事実の如何」を綿密な論証で明らかにする。たとえば清張がアメリカの陰謀とする「下山事件」で、法医学上も否定される他殺説を採り、実際は客車なのに占領軍専用貨物車で死体を運んだなど、事実をみない荒唐無稽な推理だけですべてを塗り込めていること、他の事件でもそうであることを、説得力ある証拠で示す。
 『日本の黒い霧』が40年代末から50年代初頭の、日共の路線上の誤りを隠蔽するものでしかない、という事実を浮かび上がらせる。 (A)

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