pagetop
部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2356号/08.02.11

「破戒」百年物語

宮武 利正 著  解放出版社(定価2000円)

書籍画像 敗戦直後、福岡のある町で劇「破戒」の公演がおこなわれたとき、丑松の父親が「隠せ、隠せ」という場面である者は泣きだしてしまう。また酒に酔った客が大声で泣きながら「芝居をやめてくれ」と舞台にかけあがった。しかも、丑松をいじめる側の役者を殺すと片手に出刃包丁をかざしている。何人かが背後から抱きとめて、「これは芝居だ」といってもなかなかいうことをきかない。
  こんなエピソードが出るほど、この劇は部落民の観客に大きな衝撃を与えた。しかし、演劇人は「破戒」がとりあげるような部落差別は現在の問題ではないが日本封建制の象徴であり、民主日本建設を訴える絶好の題材だと考えていた。
  この、さきにのべた観客との意識の落差。
  あるいは作家の藤村は、「破戒」の絶版―再刊について「わずらわしい事態はさけたい」という意識が明白で、2000点をこえる蔵書にも部落問題に関する本は1冊もなかった。
  「破戒」をどう読み、評価するかは、いまも人びとの感覚をためすリトマス試験紙になっている。本書は、部落解放運動と「破戒」刊行100年をめぐる物語の優秀なガイドである。(A)

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)