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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2356号/08.02.11
 ある日、突然、「すばらしいお仕事の話があるんですが」と電話がかかってきた。急成長している国際規模の派遣会社だという。話を聞くと、年収65000ドルでトラックの運転だという。高卒の彼にとっては、破格の年収だった
▼そのとき、なぜ、この会社が自分の携帯の電話番号を知っているのか、多重債務者であることを知っているのか、そんな疑問はわかず、パスポートを用意してくれ、という言葉に困惑するだけだった
▼登録説明会に足を運ぶとまるでパーティー会場。豊かでない人ばかりが集まっているのが分かった。日に12時間の週7日、休暇は4か月ごとに10日。イラクでの米兵駐屯地での日常を支えるさまざまな業務、たとえば武器の搬入など、が仕事だ
▼同じ会場に来ていた男性も、高すぎる医療保険、政府による失業手当カット、奨学金縮小で大卒ながら借金地獄。参加者は選択の余地なく、つぎつぎに契約する
▼イラクでは酷暑と夜の寒さ、危険ななかで仕事。劣化ウラン弾の影響を受け帰国後白血病と分かる。治療費で年収は消え、働けない体に
▼これは『ルポ貧困大国アメリカ』(堤未香著・岩波新書)の一節だ。「精神的余裕をゼロにする」市場原理主義のもとで貧困が拡大・固定化さ
れる構造。「民営化された戦争」に動員される貧困層。そのなかで戦争は金のなる木とほくそ笑む資本家ども
▼これは明日のリアルな日本を描いた書でもある。

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