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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2402号/09.01.12

日系人の歴史を知ろう

高橋 幸春 著  岩波書店・ジュニア新書(定価780円)

書籍画像

 1908年、興国植民会社によって、日本最初の移民船「笠戸丸」が南米に向けて出港してから100年。1971年に、最後の移民船「ぶらじる丸」が出港し、国策として始まった移民事業は使命を終えた。
  その移民が帰って来るようになったのは、1964年のオリンピック景気にわく日本。その人たちは、日本国籍をもつ一世や二重国籍をもつ二世に限られた。それが、バブル期の1990年、入管法を改正し定住者ビザの発給を容易にした。同時に、「不法就労」の外国人を追放した。
  当初、移民に消極的であった明治政府が積極策に転換するのは、日本の経済状態の行きづまりと農村の崩壊があった。農村から都市への流入人口の一部は海外へとはき出された。第1回のハワイ移民の応募者が28000人という尋常でない事態が農村で進行していた。被差別部落からの移民も少なからずあった。
  こうした背景を持つ移民の子孫たち30万人以上が、いま日本で働き定着している。多文化共生の声が聞かれて久しいが、まだまだトラブルもあるし、受け入れる側の施策や市民の覚悟が問われてもいる。本書は南米に焦点が当てられているが、あらためて近代日本の歴史をたどり、生きることへの意味を考えたい。(安)


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