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声明

 

 神道政治連盟国会議員懇談会でおこなった森喜朗・首相の「神の国」発言は、日本国憲法の基本原理「国民主権の原理」を否定し、親権天皇制の復活を主張するものであり、歴史の教訓を無視した国権主義強化として許すことはできない。発言の撤回とともに謝罪を求め責任を追及する。

森喜朗首相の「神の国」発言にたいする抗議声明

 森喜朗首相は、5月15日、神道政治連盟国会議員懇談会の結成30周年記念祝賀会でのあいさつのなかで、日本国憲法の基本条項に明確に抵触する発言をおこなった。問題となる発言は、つぎのとおりである。

 「今の私は政府側におるわけですが、若干及び腰になるようなことをしっかりと前面に出して、日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国であるぞということを国民のみなさんにしっかりと承知をしていただく、その思いでわれわれが活動して30年になるわけでして」
 「神様であれ、仏様であれ、それこそ天照大神であれ神武天皇であれ、日蓮さんであれ、宗教は心に宿る文化なんですから。そういうことをみんな大事にしよう、ということをもっと教育の現場で何で言えないのかなあ、信教の自由だから触れてはいけないのか、そうではない。信教の自由だから、どの宗教も、神も仏も大事にしよう、とういうことを学校でも社会でも家庭でも言うということが、私はもっともっと今の日本の精神論から言えば一番大事な事ではないか、こう思うのです」

 かつての侵略戦争の反省のもとに制定された日本国憲法の前文では「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」としている。また、第1条では、天皇の地位といえども「主権の存する日本国民の総意に基く」と規定されている。象徴たる天皇は、国民主権の基本原理に相容れるものでなければならないことはいうまでもない。

 ところが、今回の「日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国であるぞということを、国民のみなさんにしっかりと承知をしていただく」との森首相の発言は、この日本国憲法の基本原理である国民主権の原理を真っ向から否定し、君主主権、親権天皇制への復帰を主張しているものと思われる。

 また、信教の自由を定めた第20条では「①信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。②何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加されることを強制されない。③国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定められている。にもかかわらず、森首相は「宗教は心に宿る文化なんですから。そういうことをみんな大事にしよう、ということをもっと教育の場で何で言えないのかなあ(中略)学校でも社会でも家庭でも言うことが、私はもっともっと今の日本の精神論から言えば一番大事なことではないか」と主張することによって、日本国憲法第20条第1項個人の信教の自由、とりわけ政教分離を定めた第3項の規定を真っ向から否定している。

 周知のように、日本国憲法第99条では「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他公務員は、この憲法を尊重及び擁護の義務が定められている。行政府の長たる首相は、この規定を率先して遵守しなければならないことはいうまでもなく、憲法の軽視は断じて許されない。

 今回の森首相の発言は、日本国憲法を公然と否定した天皇中心の国権主義強化の主張であり、こうした主張が、かつての侵略戦争を起こし、国内外の差別と抑圧をもたらしてきたことへの反省がまったくみられない。

 わが同盟は、今回の森首相の発言に断固抗議し、今回の発言の撤回と、国内外に向けた明確な謝罪を求めるとともに、森首相自らが、この発言についての責任を明らかにすることを強く求めるものである。

2000年5月22日
部落解放同盟中央本部

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