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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

電子空間内差別事件へのとりくみ強化を
(2000.7.31-第1979号)

 今日、電子工学・情報工学の急速な進歩とともに情報化社会が加速している。10年前には語られることもなかったインターネットが日本社会に大きな影響を与えている。
 これまでの機械工学による技術革新が人間の筋力を限りなく増幅してきたように電子工学・情報工学を中心とする飛躍的な技術革新が情報革命をもたらし、人間の意識を限りなく増幅しようとしている。
情報化は時間と空間を超越する。そのことによって、新たな問題が生起している。
 インターネットをはじめとする情報の社会的基盤が整備されることによって、多方面でコストと時間が驚異的なまでに圧縮されようとしているなかで、その功罪が社会に大きなインパクトを与えている。その「罪」の重要な一つが部落差別をはじめとする差別扇動などの人権侵害である。これらの「罪」を克服し、「功」の面を推進するためにも電子空間内で発生している人権侵害にたいして、電子空間内外での法的、技術的、社会的、教育的なとりくみが求められている。

 インターネットは個人が世界中の多くの人々にむかって情報発信する手段であり、情報革命の中心を担っているが、アメリカ合衆国には、人種差別主義のホームページがたくさん存在し、そのネットワークまでできている。それら人種差別主義のホームページは、ドイツでは「マルチメデイア法」によって規制されている。ドイツで規制された人種差別主義のホームページはアメリカ等の規制のない国に流れている。その場合、これまでの出版物と違って、ドイツで規制することはできなくなる。しかし、インターネットは世界のネットワークであり、ドイツ国民は瞬時にして、そのホームページを見ることができる。
 つまり、ドイツで規制をしてもその効果は極めて不十分である。国によって表現の自由に関する考え方には大きな違いがあり、国際的な規模で規制することもできない。これら国際化、ボーダーレス化する人権侵害に対応した国際人権保障システムが求められている。

  インターネットができるまでは、個人が世界中の人々に情報発信することは事実上不可能であったが、今日ではそれが可能になっている。
  個人がマスメデイア的な面を持つことによって、差別的な個人にも大きな力を与えてしまうことになる。そこに既存のマスメデイアのように一定の節度や規制が存在していれば、今日のような問題は起こらないが、人種差別主義のネットワークが電子空間内で形成されるような状況ではそんなことは期待できない。
 情報武装した差別的な個人が、情報機器を使って、差別扇動していることをどのように防止するかは、今後の差別事件に対するとりくみの根本となっている。これはこれまでの人権侵害事件や差別事件と質的にも量的にも異なる。

 これらの事件の特徴や事件にたいする現行法制度は、すでにこの紙上で繰り返しのべられてきているのでふれないが、事件の根本的な克服に向けて多くの課題が存在する。まず、これまで郵政省などで検討されてきた内容が報告書などで明らかになっているが、それらの具体的政策化である。
たとえば、発信者が誰であるかを明らかにする「匿名性の規制緩和」、つまり発信者情報開示の問題などである。
 また、具体的な法規制の可能性を早急に検討し、具体化する必要がある。インターネットを対象とした新法の制定、「電気通信事業法」の改正、インターネット上の差別表現に係わる法規制などである。
 さらに、差別表現・扇動情報の発見・解決システムの構築や、被害者救済システムの構築など実効的な解決システムの構築が必要である。そのためにもプロバイダー等の情報流通に関する責任者の責務の明確化や、事業者による自主規制の促進が必要であり、そのトータル的なものとしての行政の課題を明確にし、具体化が求められる。
 そして、それらの課題の具体化を迫る私たちの精力的なとりくみが必要であり、電子区間内における差別事件に対抗する人権ネットワークの構築と、先に示した課題を民間の立場から遂行するシステムを早急に創りあげる必要がある。

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