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部落問題資料室
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総力あげ「人権教育・啓発推進法」を第150臨時国会で制定しよう
(2000.9.25-第1987号)

 与党(自民・公明・保守)「人権問題等に関する懇話会」が、9月12日、開催された。この場で、岩崎純三・参議院議員(自民)を座長に選出するとともに、与党3党が今年5月31日にまとめた「人権教育・啓発の推進に関する法律大綱」をもとに法案作成をすすめ、9月21日から開催される第150臨時国会に与党3党で共同提案する方針が決定された。
 一方、民主党や社民党も、すでに発表した法案大綱等をもとに法案化作業に入っており、「人権教育・啓発推進法」(仮称)制定は、最大の山場を迎えることとなった。
 問題は、臨時国会の会期が12月1日までのおよそ2か月間と限られているにもかかわらず、「斡旋利得法案」や「少年法改正」など、与野党間で対立が予想される法案が提出される予定であり、これらの条件を克服して、臨時国会での制定をめざさなければならないという点である。
 もう一点は、どのような内容の「人権教育・啓発推進法」の制定を実現するかという課題である。
 さきにふれた与党の人権問題等に関する懇話会がとりまとめた法律大綱をもとに、法案化作業がおこなわれるものと思われる。

 わが同盟も、「法律に盛り込むべき事項」として、与党3党と野党の民主党、社民党にも粘り強く要請してきた。とくに、「人権教育・啓発推進法」の所管を、来年1月からおこなわれる中央省庁再編後には内閣府にすることを強く要請するとともに、定期的な調査の実施や年次報告の義務化を始め、人権教育・啓発推進会議の設置、地方自治体への財政上の措置などを明確にすることによって、国と地方自治体が一体となって、人権教育・啓発のとりくみがすすめられてこそ、差別撤廃に向けた成果があがることを強調してきた。
 現在、与党3党の法案化作業がすすめられているが、第150臨時国会では与野党の積極的・建設的な論議によって、「人権教育・啓発推進法」という名称にふさわしい内容の法律が実現することを期待し、わが同盟も全力をあげて広範な国民運動のとりくみをすすめていかなければならない。

  昨年7月29日に提出された人権擁護推進審議会の教育・啓発のあり方についての答申には、「法的措置」が盛りこまれず、塩野会長談話でも法不要論の論調が強く打ち出されていた。しかし、こうした大逆流のなかから、幅広い国民運動の力によって、「法」実現の国民的世論を喚起し、心ある与野党国会議員の強力なとりくみと大きく結合することによって、ようやく差別撤廃・人権確立という大きな目標に向かって政治を動かすことができたのである。
 しかし、「法」実現に向けては、まだまだ厳しい情勢がつづいている。今後とも、これまで以上に全国の力を総結集し、「法」実現をなんとしてもかちとろう。
 「人権教育・啓発推進法」の臨時国会での制定に向けて、法務省筋は、独立の人権委員会を設置し、その事業の一環として「教育・啓発」も実施するので、「人権教育・啓発推進法」の制定はしないように、との働きかけを与党の有力筋におこなっているといわれている。
 国内人権機関に関する国連のパリ原則によれば、人権委員会に代表される国内人権機関は、①人権侵害の効果的な救済②人権法や制度整備に関する提言③人権教育・啓発に関する提言・研修機能、などをもつことを求めている。
 わが同盟は、このパリ原則に賛成である。ただ、人権委員会の中心的機能は、人権侵害の効果的救済である。したがって、人権委員会が担う教育・啓発機能は、①人権侵害の救済との関連で必要になってくる啓発機能②人権侵害の救済などの経験から導き出されてくる教育・啓発のあり方についての提言機能③人権侵害の救済にかかわる関係者にたいする研修機能、などに限定されている。
 ちなみに、「人権教育のための国連10年」については、内閣総理大臣を本部長に全府省庁を網羅した推進本部が設置され、あらゆる場でさまざまな機会に、すべての人びとのなかで人権教育が推進されるための行動計画が策定されている。また、地方自治体でも同様に首長を本部長として推進本部が設置され、行動計画が策定されている。このほか、民間団体のなかでも同様のとりくみが始まりだしている。
 臨時国会で制定が求められている「人権教育・啓発推進法」は、「人権教育のための国連10年」での、上記の推進体制と行動計画に代表されるとりくみを継承し発展させるものでなければならない。その意味では、人権委員会によってとりくまれる教育・啓発は、とうていこれに代わりえるものでなく、ごく限られた一部の機能をはたすにすぎない。

 第150臨時国会で、「人権教育・啓発推進法」の制定を実現するためには、わが同盟の組織をあげたとりくみが求められている。同盟各支部、各地協、各都府県連から最寄りの自治体や地元選出国会議員などへの働きかけを強めよう。
 10月6日には、午前10時から東京の九段会館で、「人権教育・啓発推進のための法律実現」のための全国集会をひらく。この集会に、各自治体の首長や各団体の代表者の出席を要請しよう。

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