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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張
「人権擁護法案」をめぐる今国会での
緊急課題を世論を喚起し達成しよう

 四月二十四日、「人権擁護法案」が参議院先議で国会に上程された。しかし、この法案には重大な問題点が含まれている。五月二十二日にひらいた「人権擁護法案の抜本修正を求める中央集会」でも明らかにしたように、五点におよぶ基本的な問題点を含んでいる。

 第一に、法案では、人権委員会が法務省の外局とされているため独立性に欠けているという点である。法務省の外局としての人権委員会では、これまで繰り返しその理由を明確にしているように、有効な人権救済ができない。とくに法務省管轄下の機関で生じている数多くの人権侵害に的確に対応するためには内閣府の外局とすべきである。
 第二に、人権委員会を中央に一つだけしか置かない体制では、実効性のある人権救済はできない。少なくとも都道府県や政令指定都市にも人権委員会を設置しなければ、これまでの人権擁護行政の反省の上にたって立案されてきたにもかかわらず、事実上これまでの法務省による人権擁護行政と何ら変わらない。
 第三に、人権委員会の事務局の問題である。政府案では現行の法務省人権擁護局の事務局体制が基本的に横滑りするだけとなっている。地方法務局にいたっては法務省職員のままで人権委員会の仕事をすることになっており、独立性とはほど遠いものになっている。事務局には、人権問題に精通した職員を独自に採用してあてるべきである。
 第四に、マスメディアの規制に関する問題である。たしかに私たちは「人権擁護法案」の問題点を、メディア規制という側面だけでは見ていない。マスメディアによる人権侵害も重要な問題だととらえている。しかし、それらの人権侵害事象にたいしては、原則としてメディアの自主的なとりくみに委ねるべきである。
 表現の自由と人権救済を対立的にとらえるのではなく、一体のものとしてとらえることが重要である。
 第五に、人権擁護委員制度の問題である。政府案では、若干の手直しで活用することとしているが、これでは現行の有名無実化した人権擁護委員制度とほとんど変わらない。人権擁護委員予定者にたいする充実した研修の義務付けと専門性を高める必要がある。

 そもそも「人権擁護法案」は、私たちが中心となって闘いをすすめてきた「部落解放基本法」制定要求国民運動のとりくみのなかで、具体化してきたものである。
 私たちが求めてきたものは、少なくともこれら五点の問題点が克服されたものである。多くの問題点をもつ政府案が今国会で成立すれば、二一世紀の日本の人権擁護行政に大きな禍根を残すだけでなく、国際的にも大きなマイナスである。
 今一度、政府案を今国会で成立させない強力なとりくみと抜本修正を求める闘いを強化しなければならない。タイムリミットは迫っている。全国各地から政府案に反対している関係団体とともに国会包囲網を構築しよう。

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