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奨学金制度の抜本的な
改革を全力でかちとれ

 昨年の「地対財特法」の失効を前に、部落解放同盟は「経済的理由で進学を断念する」という部落差別の実態を生み出さない、との基本姿勢を明確にしながら、奨学金制度の改善・拡充を求める闘いを各地ですすめてきた。各地での闘いの過程で新たな地域教育運動の萌芽を得る地域もあらわれ、最終的には、解放奨学金制度の意義と役割を継承し、経済的困難を抱えるすべての子どもを対象とする奨学金制度(「高校等奨学事業費補助」事業)の創設をかちとった。
 しかしながら、この「補助」事業は緒についたばかりであり、「国」基準を例にとると、厳しい所得制限や入学支度金がないことなど課題も多く、中央段階では引きつづき文部科学省交渉にとりくむなど、制度の改善・拡充に向けたとりくみをすすめていく方針である。一方で、各都府県での地道な闘いによって、国基準を上回る内容をかちとったところもあり、中央のとりくみに呼応して各都府県段階でも継続したとりくみを展開しよう。

 この「補助」事業の改善・拡充のとりくみと同時に、国民的な関心事であり、部落解放同盟としても早急なとりくみを要する大きな課題がある。それは、日本最大の奨学金制度をもつ日本育英会の廃止にかかわる課題である。
 これまで部落解放同盟では、文部科学省交渉や、日教組、全同数と連携した要請行動などを通じて、日本育英会がおこなう奨学事業の抜本的改革と運用の改善を求めるとりくみを積み重ねてきた。そうしたとりくみの成果として、大学の奨学金制度については、従来の「第2種(有利子)」制度を改廃して、成績条項を実質的に廃し貸付金額も受給者が選択できる「きぼう21プラン」の創設をみたものの、高校奨学金制度については大きな改善をかちとるにはいたらなかった。
 その日本育英会が、地方分権の流れと特殊法人改革の波を受けて今年度をもって廃止され、日本育英会が実施する大学奨学金については、新たに創設される独立行政法人に04年度から引き継がれ、高校奨学金は05年度より各都府県に移管される。
 私たちは、今回の日本育英会高等学校奨学金の地方移管を好機ととらえ、「育英主義」を堅持しょうとする抵抗勢力と果敢に闘い、各都府県で実施されている現行の高校奨学制度を、解放奨学金制度や新たに創設された「補助」事業の意義と役割をふまえた「奨学主義」の制度へと、発展・転換させていくとりくみをすすめていかなければならない。
 闘いの基本姿勢は、すべての子ビもたちが「経済的な理由で進学を断念せざるを得ない」状況を許さず、つくらないということである。
 具体的には、制度内容の細部については財政的制約を受けることもあろうが、地方移管後の奨学金制度の最低条件として、「成績条項の撤廃」と「採用基準を満たす生徒(有資格者)の全員採用」を柱とする奨学金制度を最大限かちとることである。

 さらに、部落解放同盟としては、今回の日本育英会高校奨学金の地方移管という課題は、たんに奨学金制度という教育施策のあり様を巡る闘いにはとどまらないことを十分にふまえて、とりくみをすすめていかなければならない。
 なぜなら、地方移管後の高校奨学金制度について、文部科学省は、財源については国が保障し、制度内容については実施主体である各都府県の裁量の範囲であり、国は「最低限の関与」のみをおこなうとの方針を示している。
 こうした文部科学省の方針と、各都府県で解放奨学金制度を実施してきた経緯や「同和」行政の成果と到達点をふまえ、さらに人権行政に発展させていくという認識に立つならば、地方移管後の高校奨学金制度が「奨学主義」を基本とした制度であることはもはや必然である。部落問題の解決をめざす、つまり「人権」の視点にたった奨学金制度の確立が必須なのである。
 高校奨学金制度の地方移管という課題は、各都府県の人権行政についての認識が問われるとともに、部落解放同盟がすすめる部落解放運動の力量が問われる課題でもあるのだ。
 今日、長引く経済不況の影響を受け、「権利としての奨学金制度」を必要とする声は部落内外で高まり、既存の奨学金制度の抜本的改革の必要性が強く訴えられている。
 中央教育対策部としては、全国大会での論議を得た後、広範な団体・組織とともに署名活動の展開など具体的なとりくみを早急に提示していきたいと考えている。
 各都府県連・支部段階でも、奨学金制度の扱本的改革を求めるとりくみを柱に、教育分野で地域での協働したとりくみをすすめ、子どもたちの進路保障を確かなものにしていくことが求められる。
 各都府県連・支部で組織をあげた全力のとりくみを展開しよう。


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