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あくまで有事3法の廃案を
めざし、反戦平和の世論を
「解放新聞」(2003.06.02-2122)

 

 5月15日、有事関連3法案が衆議院で可決され、参議院に送られた。与党と民主党の修正協議が合意に達したことで、今国会で成立することが確実になったと報じている。
 しかし、法案の本質的な問題点は、昨春の通常国会から何も変わっておらず、政府が答弁に窮してきた「有事」の定義・範囲も不明確なままである。そして、平和憲法との整合性を保つために政府がいままで主張してきた「専守防衛」をもふみこえるのではないかという疑問は、今国会でも解明されず、修正もされていない。
 法案では、「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」の定義・範囲が曖昧にされたままである。周辺事態法も「周辺事能Fの定義が曖昧にされたまま制定された経緯があり、地理的範囲が明確でない。
 この2つの曖昧さをあわせると、日本の国土が攻撃されなくても武力行使ができることになりかねず、武力行使のハードルはきわめて低くなってきた。また、攻撃を受けることが予測されれば相手の基地への先制攻撃も躊躇すべきでないというように、歯止めが利かなくなる可能性もある。
 「テロ特措法」では、アフガニスタンでの米英軍の戦闘を「後方支援」すると限定して、燃料補給のための自衛艦を派遣した。しかしその後、国会での議論もなく、明確な説明もないまま、直接の戦闘行為への参加と見なされるイージス艦の派遣が、いとも簡単になされてしまった。このことをみても、日本政府の歯止めが利かない現状は立証されている。
 その意味で、有事関連3法案が成立すれば、状況次第でどのように運用されるのか憂慮される。部分修正で足りる法案ではない。
 また、このような法案が成立すれば、アジアの各国は警戒を強め、軍拡競争による不安定化の要因にもなりかねない。

 そもそも有事法制の本当の目的は、戦争のさいに自衛隊や米軍を動きやすくし、国民がそれに協力するようにするための法整備である。一部には、自衛隊や政府が超法規的に暴走しないように、有事のさいの法整備が必要という意見もあるが、そのような性格の法案にはなってはいない。したがって、修正として「基本的人権に関する規定は最大限に尊重する」などいくつかの文言を付け加えても、それが本当に生かされるか疑問である。
 法案には、地方公共団体の責務(第5条)、指定公共横関の責務(第6条)、国民の協力(第8条)など、さまざまな分野で戦争への協力を強制する内容がある。
 また、今後「国民保護法制」も出されてくるが、名称から受けるイメージとは違い、緊急時の人権やさまざまな権利制限に主眼が置かれると考えられる。法案の全体構成が国民総動員法的な内容になっているなかで、今後の議論で人権尊重を担保していくのは至難の業である。

 残念ながら朝鮮情勢の緊張の高まりを利用して、戦争の準備を整える必要性を主張する声が大きくなっている。そして、イラクへの武力攻撃などに見られるように、超大国である米国は軍事力を背景に中東諸国などを威嚇しながら外交をすすめており、武力がまた国際政治の前面に出てきている。そのような状況が、国民の意識を変化させ、国内の政治情勢に影を落としている。
 しかし、だからこそもう一度、先の大戦をひき起こした反省と教訓を全体化する必要がある。また、平和な国際社会をいかに創っていくのかを明らかにしていかなくてはならない。
 私たちは、武力によって平和や市民の安全が守られるとは考えていない。有事3法案のように、安全保障の議論を軍事面だけでみていくと道を誤る。「国を守る」と「国民を守る」は違うし、市民の安全は戦争によって破壊される。安全保障は、経済、人権、環境など、トータルな議論による政策化が大切である。その意味で、「人間の安全保障の内容を政策的にも明確にし、実現していく必要がある。
 そのような観点から、私たちはあくまで有事3法案の廃案を求めつつ、反戦平和の世論を再構築していこう。


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