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広島・長崎を風化させず反戦
平和のとりくみを強化しよう
「解放新聞」(2003.07.28-2130)

 

 広島、長崎に原爆が投下されてから58回目の夏を迎えようとしている。広島の平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑には「安らかに眠ってください。過ちはくり返しませぬから」との誓いがきざまれている。この思いは、戦争を放棄した憲法の平和主義、さらに非核3原則(つくらず、もたず、もちこませず)という日本の国是として結実したはずであった。
 しかし、今日の状況は、「周辺事態法」と「有事関連3法」の成立、そして日本の核武装の可能性に言及した安倍官房副長官、福田官房長官の発言にみられるように、大きく変わってきている。
 また、以前から沖縄など在日米軍基地や寄港する米軍艦船などへの核持ち込み疑惑があるが、日本政府は調査・確認をしたことがなく、密約によって黙認していることも明らかになってきた。この黙認は、日本が米国の核の傘をあてにしていることと結びついている。つまり、従来から日本政府の防衛政策は、日本にたいする攻撃の抑止力として、日米安保条約による米国の核の傘に依存するという考え方をとっており、米国の核は容認しているのである。これでは、「もちこませず」といってもまったく信用されない。

 この日本政府の姿勢は、朝鮮情勢の緊迫化によりさらに強くなり、ミサイル防衛(MD)システムの導入に言及しはじめた。飛んでくるミサイルを迎撃するパトリオットミサイルの購入なども検討されているという。このことは、北東アジアの緊張を高め、軍拡競争を激化させかねない。MDシステムは技術的にきわめて不安定、未完成なシステムであるうえ、迎撃ミサイルが進歩すれば打ち込まれるミサイルも進歩するという悪循環を生み出し、際限のない軍事費が浪費されることになる。
 6に来日した韓国の盧武鉉大統領は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威について、必要以上に国民の恐怖心を扇ることはかえって危険だと指摘した。また、アジア諸国から日本を見たとき、軍事費世界第3位の日本が、戦争ができる法制を整備し改憲論議をおこなっていることについて「疑惑と不安の目」で見ているとも指摘している。
 有事関連3法の審議のさなか、「北朝鮮のミサイル基地を攻撃できる能力を日本ももつべきだ」という声が与野党を問わない国会議員からあがったという。北朝鮮はノドン・ミサイルを配備し「核兵器の保有」さえ口にしており、それにたいする恐怖心が議論をエスカレートさせたと考えられる。
 このように近隣諸国がおたがいを脅威と感じ、軍拡競争を繰り返し、戦争の体制を整え、恐怖心を扇りつづけていけば、戦争は現実のものとなってしまうかもしれない。
 そのようなことにしないために、北東アジアの非核化と軍縮を実現し、経済協力体制などを構築し、対話による「信頼」を築いていかなくてはならない。

 米英がイラクへの先制攻撃を強行した最大の理由は、核兵器の開発や生物化学兵器の保有と、それらがテロリストに渡ることを許さないということであった。しかし、それらの証拠はいまだに見つかっていない。にもかかわらず米国ブッシュ政権は、つぎはイランの核開発疑惑に照準をあわせている。
 そもそもNPT(核拡散防止条約)は、95年の条約無期隈延長検討会議のさいに、米国、ロシア、英国、フランス、中国だけに核をもつことを認めることは不平等だと批判があがっていた。そして95年の条約無期限延長のさいに、核保有国にも核廃絶への明確な努力義務を課すこと、非核保有国にたいする核の不使用を保障することなどを決め、合意に達したものである。
 確かに核拡散は防がなくてはならないが、世界一の超核大国・軍事大国の米国が、国際法違反の先制攻撃を強行したことによって、武力や核兵器への信仰はさらに強まってしまったのではないか。また、核兵器保有5大国以外にも、NPTに未加盟のインド、パキスタン、イスラエルの核兵器が存在していることも大きな問題である。
 状況は非常に危険な方向にすすんでいるようにみえる。しかし、一方でイラク攻撃に反対して世界で行動した1000万の人びとが
いた。私たちは、これらの人びととともに、さらに多くの人びとにもよびかけ、反核・平和の運動を拡大していかなくてはならない。この夏、「過ちはくり返しませぬ」との誓いの意味の重さを、若い世代も含め、もう一度多くの人びととかみしめ、反核・平和の運動を強めよう。


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