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「教育基本法改悪」を許さず
平和・人権・民主主義の教育を
「解放新聞」(2004.09.20-2186)

 

  「テロには屈しない」。こうした発言をする者は、「テロ」の脅威からは一番遠くにいる権力者たちだ。
 ロシア南部・北オセチア共和国で、武装集団による学校占拠事件が発生し、1000人をこえる人質が閉じこめられていた体育館が爆発炎上し、多くの尊い命が失われた。犠牲者の多くは子どもたちとその保護者たちであった。一方、連続する「テロ」の実行グループには、チエチェン独立運動のさいに軍隊による弾圧で夫や子どもを失った妻たちが含まれていると伝えられている。
 武力による解決は、憎悪と報復を、さらには暴力の連鎖を生み出す。そして、つねに多大な蟻牲を強いられるのは、子どもや女性をはじめ社会的弱者とされる人びとである。

 日本は1946年、過去の戦争と戦前の軍国主義の反省にもとづき、人権を保障し平和を志向する民主国家をめざすことを決意し、日本国憲法を制定した。その翌年、前文に憲法の「理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」と格調高く謳った準憲法ともよばれる「教育基本法」を制定した。この「教育基本法」の基本的な原理である平和・人権・民主主義は、憲法の基本的原理であると同時に、今日の国際社会のすうせいとしても普遍的な原理となっている。
 しかし今、この「教育基本法」が、「日本の危機」「教育の危機」を煽り、最終的に憲法「改正」を目論む者たちによって、改悪の危機にさらされている。
 本年2月、「改正」をめざす国会議員の一人が「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す、お国のために命を捧げた人があって、今ここに祖国があるということを子どもたちに教える。これに尽きる」「お国のために命を投げ出すことをいとわない機構、つまり国民の軍隊が明確に意識されなければならない。この中で国民教育が復活していく」などと発言している。
 まさに、この発言こそが、「改正」論者たちの本音であることを認識しておく必要がある。
 「教育基本法」の「改正」は、憲法の「改正」への布石であり、戦後50年以上を経て築きあげてきた民主主義を崩壊せしめるものだ。
 「教育基本法」の「改正」の中身は、「強者の論理」の視点に立ち、「国家や社会づくりに有為な人材づくり」のために、教育を国家政策の道具として位置づけ、国家主義的方向と能力主義的方向とを組み合わせた国家主導の教育を推しすすめようとするものであり、平和主義・民主主義・平等主義を否定するものである。
 良心の自由を無視した「愛国心」や「伝統文化の尊重」の押し付けは、すでに「日の丸・君が代」の強制や「心のノート」の導入などの形で、「改正」の内容が先取りされているが、東京都の教職員の大量処分に見られるように、新たな全体主義国家づくりに向けた常軌を逸した事態が生じている。
 また、学校選択制の導入や義務教育費国庫負担の廃止など強者の論理による教育再編は、「勝ち組」と「負け組」などあらたな差別を制度的に生み出しながら、教育の結果にたいする責任を「自己責任」論によって家庭や子どもなど個人の責任へと転嫁することで、社会的較差を容認する社会をつくりあげる。

 今、国がなすべきことは、「教育基本法」の理念を具体化する教育を創造し、実践することであり、すべての子どもたちに、等しく教育を受ける機会を提供することである。国家主義的・復古主義的な徳目など、憲法に抵触する疑いのある特定の価値意識を押し付け、強化することではない。
 私たちは、憲法の理念を無視し、国家主義や能力主義にもとづく教育の再編と、そのための改革至上主義的な国家による国家のための「教育基本法」の「改正」を断じて容認することはできない。
 「教育基本法」の「改悪法案」の国会上程を断固阻止し、平和・人権・民主主義を守り発展させる運動をすすめていこう。


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