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「職業と門地(世系)にもとづく
差別」摘廃めざし、反差別国際連
帯のとりくみを継続・強北しよう
「解放新聞」(2004.11.08-2193)

 

 メキシコのクエルナバカで、11月15日から17日まで、反差別国際運動(IMADR)の第14回理事会が開催される。反差別国際運動は、全世界からのいっさいの差別撤廃をめざし、1988年1月、日本・東京で創立され、部落解放同盟は、この創立に中心的な役割を果たした。
 反差別国際運動は、創立以降、南アフリカのアパルトヘイト廃絶運動などに積極的にとりくみ、1993年3月には、国連経済社会理事会との協議資格をもった民間団体(国連人権NGO)資格を取得し、日本はもとより世界各地で反差別・人権の草の根連動と国連の人権活動を結びつけたとりくみを積み上げてきている。

 結成以降10余年の活動実績をふまえ、2002年11月、東京で開催された反差別国際運動第6回総会で、中・長期の活動の柱をつぎの6点に設定することが決定された。
 ①職業と門地(世系)による差別撤廃に関する活動
 ②女性の人身売買を含む複合差別の撤廃に関する活動
 ③先住民族の権利擁護に関する活動
 ④マイノリティの権利擁護に関する活動
 ⑤司法制度での人種差別の撤廃に関する活動
 ⑥差別と人種主義撤廃のための国際人権保障機構の強化と、被差別当事者による積極的、効果的利用の促進に関する活動

 これら6点の課題はいずれも重要なものである。部落解放同盟や反差別国際運動などの積極的な活動によって大きく前進してきているのが「職業と門地(世系)にもとづく差別」の撤廃に向けたとりくみである。
 具体的には、「人種差別撤廃条約」の履行を監視する人種差別撤廃委員会が、2002年8月、同条約の第1条で規定された「門地(世系)」に関するテーマ別討議をおこない、日本の部落差別やインドのダリット(被差別カースト出身者)にたいする差別がこの対象に含まれることを明らかにし、こうした差別を撤廃するために各国が取るべき施策を盛り込んだ「一般的勧告29」を採択したことである。

 もう一つは、つぎに列挙するような国連人権促進保護小委員会(人権小委員会)での一連のとりくみである。
 ①2000年8月「職業と門地(世系)にもとづく差別に関する決議」を採択し、この差別が国際人権法で禁止された差別であることを指摘した。
 ②2001年8月人権小委員会のグネセケレ委員による報告書が提出され、インドをはじめとした南アジアでのダリットにたいする差別とともに日本の部落差別が報告された。
 ③2003年8月同委員会のアイデ、横田両委員による報告書が提出され、アフリカにも「職業と門地(世系)にもとづく差別」が存在していることが報告された。
 ④2004年8月人権小委員会が、横田、都南委員を「職業と門地(世系)にもとづく差別」に関する特別報告者として任命すること、2007年8月の人権小委員会にこの間題に関する包括的な最終報告書を提出すること、そこには、この差別を撤廃するための原則と指針を含むこと、を求める決議を採択した。

 8月の人権小委員会の決議にもとづき特別報告者が設置されると、国連の予算が付き、事務局の協力がえられる。今後、全世界的に「職業と門地(世系)にもとづく差別」を撤廃していく上で、大きな前進が期待できる。
 しかし、このためには、来年春に開催される国連人権委員会で、人権小委員会でのこの決議が承認される必要がある。2001年8月から9月にかけて、南アフリカのダーバンで、国連が主催した反人種主義・差別撤廃世界会議での経験をふまえると、インド政府の反対も予測され、事態は楽観を許さない。人権委員会のメンバー国である日本政府の姿勢が大きな鍵を握っており、各方面からの日本政府(外務省)への働きかけが重要である。

 従来、日本の部落差別は、日本固有の問題で、他の国には存在しないといわれてきた。
 もちろん部落差別は、日本の歴史に深く根ざした差別であるため、日本固有の側面をもっている。しかしながら、部落差別は、インドをはじめとした南アジアに存在しているカースト制度に起因した差別、さらには近年明らかにされつつあるアフリカにも存在している身分差別との共通性もきわめて高い。
 このため水平社宣言の精神や部落差別撤廃に向けた部落解放運動の経験は、南アジアやアフリカに存在している同様の差別撤廃にも役立つことは少なくないし、逆にそれらの地域での差別撤廃に向けた経験は、日本の部落差別撤廃にも大いに参考になる。
 さらに、人権委員会で、「職業と門地(世系)にもとづく差別」に関する特別報告者の設置が承認され、この差別を撤廃するための原則と指針が採択されるならば、3億人に達する人びとが苦しんでいるともいわれているこの差別を撤廃していくために計り知れない貢献をすることは間違いない。
 部落解放同盟は、昨年12月、80有余年におよぶ闘いの経験をふまえ「職業と世系にもとづく差別を撤廃するための原則と指針の取りまとめに向けた提言」を公表しているが、今後、反差別国際連動との連携を強化し、この原則と指針の取りまとめなどに積極的に参加していくことを決意している。
 これまで、中央本部段階はもとより、各都府県連、各支部段階でインドやネパールなどのダリットの人びとの交流・連帯が積み上げられてきているが、今後いっそうの連帯強化をよびかける。


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