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部落問題資料室
NEWS & 主張
行政書士の戸籍不正取得事件で確認会
「解放新聞」(2005.5.2-2217)

 【兵庫】(前号既報)行政書士が、興信所などの依頼を受け「職業上請求書」を不正使用し第3者の住民票や戸籍謄本を取得していた問題で、兵庫県連は4月14日、事実確認会をひらいた。

全容解明へ全力
Y元行政書士 自己弁護に終始

悪いと気づかなかったと

行政書士を厳しく追及

 確認会で、不正取得をしていたY行政書士(現在廃業)は、「(興信所からの依頼で戸籍謄本などを請求することについて)悪いということに気づかなかった。一種の業務と錯覚していた。差別意識はなかった。興信所経営者の『弁護士会から依頼を受けている』との言葉を疑わなかった。兵庫県行政書士会から事情聴取を受けて、えらいことをしてしまったと思った。今回も、部落解放同盟から部落差別にあたると指摘を受けて、申し訳ないと思った」とのべた。また、「書士会から廃業勧告が出たので『迷惑をかけた、やめざるを得ない』と廃業勧告を受け入れた」と語った。
 「依頼を受けたから」「廃業勧告が出たから」「部落解放同盟から指摘を受けて」と自己弁護に終始するYの態度に、どうして自分が廃業を勧告されたのか、もっと真摯に考えるよう厳しく追及した。また、きょうの確認会も「よびだされた」と発言したり、もっとも取引が多かった興信所経営者Gにたいして、「口車に乗せられた。怒りの気持ちがある」と語ったが、県連からの「Gにたいして怒りの気持ちがあるなら協力してほしい」との要請に、「仕方がないです」と答えるなど、無責任極まりない態度に怒りの声があいついだ。Yにたいし、約800枚の職務上請求書の使用状況を報告することと総括を、次回確認会までに文書で提出するよう求めた。
 兵庫県行政書士会にたいしては、Yの件については報告を受けていたが、宝塚市の行政書士が身元調査に関与し京都の住民から訴えを起こされていた件については報告を受けていないことについて、問いただした。行政書士会は、「事実を把握しかねており、どの時点で報告したらいいのか考えていたら報告が遅れた」と語った。次回確認会までに、宝塚市の行政書士の件についての詳しい内容と、いつ、どの段階で兵庫県に報告したのかをまとめ、提出するよう要請した。

事件の経過

 県連は、昨年12月に事件の情報を入手。Yとのやりとりが記載されていた興信所の業務日誌に「地名そうかん返せ」など興信所同士で部落地名総鑑の貸し借りがあると受けとれる記述があることや、行政書士が「職務上請求書」用紙を興信所に横流ししている可能性もあることから、県連は重大な事件として全容解明に向け、全力でとりくんでいる。

3年間で約800枚

 これまで、Yは、01年5月ごろ、仕事の依頼が少なく「もっと仕事をとりたいと思っていた」。電話帳に載っている興信所の広告を見て、「興信所なら住民票や戸籍謄本などを必要とするだろう。仕事の依頼が来るだろう」と思い、適当な5社を選び、「必要なら住民票や戸籍謄本を取り寄せます」旨のファクシミリを送付。数か月後、「調査で住民票がほしい」などと、ファクシミリを送っていない興信所も含め合計6社から依頼が来る。
 01年~04年2月までの約3年間、6社からの依頼で、約800枚の職務上請求書を使い、不正請求。とくに、兵庫県内の興信所経営者Gからは頻繁に依頼があり、約800枚のうち約半数の400枚はGからの依頼で不正請求した。興信所からの依頼は電話かファクシミリ。請求書の使用目的の欄に『調査』『添付資料』、提出先に『依頼人』と記述し自治体に提出すると、ほとんどの自治体で住民票や戸籍謄本の交付を受けた。「最初は悪いことだという意識があったが、ほとんどの市町村役場が交付請求に応えてくれるので、次第に正当な業務と思うようになった」。1枚あたり3000円程度で取引していた。
 03年12月、兵庫県行政書士会が職務上請求書の適正使用のよぴかけ文書を会員に通達。それを受け、04年2月、Yは「後ろめたい気持ちになった」と、不正請求をやめる。
 04年12月、兵庫県連が情報を入手し、事件発覚。今年3月、行政書士会理事会の綱紀委員会で、Yの処分について「廃業勧告」決定。4月7日、Yに廃業勧告。8日、Yが廃業届を提出した。

身元調査を許さない仕組みの拡充を

国民支配のための戸籍

 興信所(探偵社)などによる戸籍調べ、身元調査をやめさせるとりくみは、全国水平社時代から現在まで連綿とつづいている。これまでの運動の成果で、戸籍の俗称欄の改正など、戸籍調べに制限を加えてきた。
 戸籍とは、ある人の身分や宗教、犯罪歴など、さまざまな情報を書き入れた、「明治」新政府の国民支配の一貫として作り出されたもの。戸籍自体、現在は日本にしか存在しない。敗戦後は、国民の動態をつかむために住民票がつくられた。そして国民の動きをリアルタイムで監視把握しようと、「住基ネット」が現在稼働している。これらはいずれも戸籍と分かちがたく結びついている点が大きな特徴。

不正取得があと絶たず

 戦後の部落解放連動のなかで、1872(明5)年に編成された「壬申戸籍」の撤廃連動を1968年、全国的に巻き起こし、閲覧を禁止させた。「壬申戸籍」には身分、宗教、犯罪歴などが明記され、被差別部落民には「元穢多」「新平民」などの差別記述があり、それが国の制度として残っていたため、身元調査への悪用があとをたたなかった。70年には、「壬申戸籍」の封印、76年には、戸籍・除籍の公開制限につなげた。閲覧への制限が厳しくなるにつれ、全国の被差別部落の所在地などが記載された部落地名総鑑(75年に発覚)が出回りだし、日本の有力な大企業や大学関係者などが購入、差別身元調査に利用された。
 86年、弁護士、司法書士、行政書士などと資格職をかたって謄本を入手するなどの被害が多発している現状を部落解放同盟が指摘、法務省は8業種の資格職にたいし、戸籍謄本などを入手するさいに「職務上請求書」を使用することを義務づけた。
 しかし、89年に福岡で弁護士2人が職務上請求書用紙を大量に興信所に横流ししていた事件が発覚(1450号既報)。99年には、大阪府警生野署の警部補が、捜査関係事項照会書を使い、生野区役所から不正に戸籍謄本などを入手、情報を流す事件も発生。この事件では、「大阪市個人情報保護条例」にもとづく開示請求によって、警部補が不正取得していることが明らかになった。03年、京都市で、息子の交際相手の戸籍謄本などを司法書士から入手し、結婚を断念するよう迫った結婚差別事件も発生した(2195号既報)。
 資格職による不正取得はあとを絶たず、法の目をくぐってさらに巧妙になっている。兵庫県の例は氷山の一角である。今回の例だけでも戸籍などは全国各地でとられており、それぞれの都府県でも同様の実態がないかどうかの点検も含め、闘いは必然的に全国化せざるを得ない。今回の事件では職務上請求書用紙の使用目的欄に「調査」「添付資料」、提出先に「依頼人」と記述するだけで戸籍謄抄本の交付を受けることができるという、自治体のずさんな対応も浮き彫りになった。身元調査を許さない確かな仕組みの拡充と世論の拡大をはかっていこう。

 

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