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部落問題資料室
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日本での人権政策確立へ
各地で闘いを強化しよう
「解放新聞」(2006.03.06-2259)

 第164通常国会の衆議院本会議(1月23日)で、民主党の前原代表の代表質問に小泉首相はつぎのように答弁をした。
 「人権救済制度についてのお尋ねでございますが、政府・与党でさらに検討をすすめまして、人権侵害被害者の実効的な救済を図ることを目的とする人権擁護法案をできるだけ早期に提出できるよう努めてまいります」
 この小泉首相の答弁は、昨年の特別国会での民主党の神本議員の参議院本会議(9月29日)での代表質問にたいする答弁とまったく同じものである。
 だが、今回の答弁は、前回にも増して重要な意義をもつものである。その理由は、昨年11月の第3次小泉内閣の組閣と自民党の新体制発足以降、政府・与党の人権侵害救済に関する法律についての基本方針が揺れ動いていた状況のもとで、あらためて「法案の早期提出」が政府・与党の基本姿勢であることを明確にしたからである。
 小泉総理の答弁を受けて、2月2日には、自民、公明、民主、社民からなる超党派の「人権政策勉強会」(座長=岩永峯一議員)が再発足し、法案成立に向けての質問準備などのとりくみが開始されるなど、じょじょに 「法案」成立への政治条件を整える動きがはじまりつつある。
 しかし、昨年の通常国会での激しい攻防の経過をふまえて、政府・与党内では「法案」の取り扱いについて憤重な空気が存在していることも事実であり、国権主義・民族排外主義からの政治的な反対勢力の動きなど、今通常国会での「人権侵害救済法」の成立は、なお厳しい状況にあると判断せざるを得ない。

 私たちは、この厳しい状況の局面打開をはかるために、第164通常国会闘争の基本方針として、つぎの4点の確認にもとづき、とりくみをすすめてきている。
 第1に、これまでの闘いの経緯と現時点での総理答弁をふまえ、第164通常国会での「人権侵害救済法の早期制声を求めていく。
 第2に、そのための政治条件の整備に向けて、各政党への働きかけを強化し、超党派譲連の拡大や与野党協議の場作りを仕掛けていく。
 第3に、同時に、国会外の推進勢力への形成に向け、人権NGO団体の強力なネットワーク作りをおこなっていく。その結集軸として「人権の法制度を提言する市民会議」(略称・人権市民会議)の創設と活性化をめざす。
 第4に、地域実行委員会を中心に連動と組織の拡大を図りながら、広範な「法」制定への世論形成をおこなっていく。とりわけ、反村勢力の「地方自治体での意見書採択」の動きを警戒しながら、議会対策を綿密におこなっていく。

 とりわけ、「人権侵害救済法」を効果的に制定していくためにも、これからの日本での人権の法制度の体系的な全体構想のあり方を示し、そのもとでの位置づけを明確にすることで、無用な議論の混乱を回避するとともに、広範な人権NGOのネットワークの力で人権立国への将来展望を切りひらくことが急務である。
 そのための準備が昨年の11月からすすめられ、3月30日午後1時から憲政記念館で、「人権の法制度を提言する市民会議」(略称・人権市民会議)の結成集会が開催される運びとなっている。今年の12月の人権週間にあわせて、「日本における人権の法制度のあり方に関する提言」をとりまとめて公表する段取りで、広範な各界のそうそうたる人たちや人権NGOの代表が世話人(代表世話人=江橋崇・江原由美子・武者小路公秀)や企画運営委員(委員長=山崎公士)として、すでに活発な研究活動の準備を開始している。これらのとりくみは、これまで確立されていなかった日本での体系的な人権の法制度のあり方を民間から提案しようとする画期的なものであり、そのとりくみに大いに期待するものである。

 巨大与党という政治状況のもとで、「人権侵害救済法」制定への道筋を切りひらく決定的な力は、各地からの裾野の広がりをもった粘り強い「人権草の根」運動である。部落解放・人権政策確立要求地域実行委員会の積極的な活動が闘いの鍵である。
 第1に、差別実態をふまえた二法の必要性と早期制定の意義」について、各地域での学習会や集会の開催をきめ細かくおこない、しっかりとした裾野の拡大をはかることである。地域実行委員会や支部組織のみならず、可能な限り広範な参加をよぴかけていくことが大切である。
 第2に、こうしたとりくみに裏付けられた「議会決議」「首長声明」の獲得を引きつづき追求していくことである。現在514の自治体で議会決議を獲得しているが、さらに大きな社会的世論として大きくしていくことである。
 第3に、国に先行する自治体からの「人権の法制度」確立へのとりくみを強めていくことである。現在1700をこえる自治体で「権条例・宣言」が制定されているが、これは地方分権の時代を地域・自治体からの「人権の条例・制度」確立で先行させているという重要な意義をもっている。とくに、鳥取県人権侵害救済条例の施行への動向を注視しながら、これを支援する形で各都府県ごとで独自の「地方人権委員会」設立のとりくみを促進・拡大していくことである。
 第4に、これらのとりくみをマスコミにもていねいに伝えながら、全国各地からの部落解放・人権政策の具体的なとりくみを社会世論として反映させていくことである。
 各地からの「人権侵害救済法」制定をはじめとした人権政策確立へのとりくみを徹底的に強化していくことが今ほど重要なときはないということを肝に銘じて、周到な闘いを前進させよう。

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