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「教育基本法」改悪に反対しよう
「解放新聞」(2006.11.20-2295)

 いま、「教育基本法」が危ない。
 政府・与党は、「教育基本法」をめぐる国会論議が十分におこなわれ、公聴会もひらいたということで、今週中にも特別委員会で改悪案の採択をしようとしている。しかし、政府案そのものも、3年以上も論議をして提出されたものならば、国会では与野党間でそれ以上に時間をかけて「国民的な論議」をさらに深め、拙速な採択を慎むべきだろう。
 ましてや、政府主催の教育改革タウンミーティングで、文科省が「やらせ質問」をおこない世論を誘導しようとした事実も発覚している。この政府・文部科学省の責任をあいまいにしたままでの採択は、とうてい許されるものではない。
 政府がなんとしてもこの臨時国会で「教育基本法」の改悪案を成立させたい理由は、この改悪を突破口に、憲法改悪へのレールをつけたい、という思惑があるからだ。げんに、安倍首相は自分の任期の5年以内に憲法改悪を実現すると明言し、「教育基本法」改悪がその第1段階であるとしている。
 これは、戦争ができる国づくりへの長期戦略とも密接に関連している。改悪を通じて「国のために死ぬことができる」人間を作り出す教育を実現する、ということだ。
 私たちは、日教組など「教育基本法」改悪に反対する広範な人びとと、総力をあげた闘いを、いまこそ展開する必要がある。

 周知のように、政府案のとりわけ大きな問題点として、つぎの点をあげることができる。
 ①現行法では、第2条(教育の方針)としているところが、改悪案では、第2条(教育の目標)とされ、目標を達成するための「到達点」が5つ掲げられている。その5番目の「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」ことが絶対に必要な項目とされ、第1条(教育の目的)の「国家及び社会の形成者として必要な資質」とされることだ。つまり、幼児期から義務として、あらゆる教育の場で愛国心などが強制されていくのである。
 ②現行法の第10条でいう「教育」とは、教育の内容や教育現場であり、「不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と規定している。ところが改悪案では「この法律及び他の法律の定めるところにより」などの項目が書き加えられている。つまり「主権者としての国民」が完全に省かれ、国家による教育の支配が示されている。しかも、それは本来私的である家庭教育をはじめ、あらゆる場での教育に国家が介入することになるのだ。
 ③第3条(教育の機会均等)が、現行法では「能力に応ずる」(発達の必要に応ずる)となっているのに、改悪案第4条(教育の機会均等)では、「能力に応じた」(能力のある人には機会を与え、ない人には機会を与えない)と、露骨に格差社会を肯定したものになっている。

 「教育基本法」の改悪は、首相の私的諮聞機関にすぎない「教育再生会議」で半年をめどに提出されるであろう答申と連動している。答申は、新自由主義=市場原理主義にそくしたもので、学校選択の自由化、学力テストを通じた学校評価、学校ごとの数値目標を設定した校長などに透運営、教育バウチャー制の導入、などが書き込まれようとしている。また、「能力がない」とされる教員を免許の更新時に「首」にするなどの方向も盛り込まれる。
 一連の教育をめぐる政府の方向性は、この間、同和・人権教育をつうじて私たちが獲得してきた成果を確実に破壊し、格差社会を肯定し、子どもの間にさらに格差をもち込むものであることは確実だ。差別・選別教育がよりいっそう強化されることも明白だ。こうした一連の過程にも、反対の声を上げていくことが重要だ。
 国会論議に注目し、改悪に反対する闘いの波をさらに大きく高めていこう。

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