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安倍政権下での「人権侵害救済法」制定へ
向けてねばり強い闘いをおしすすめよう
「解放新聞」(2007.02.26-2308)

 小泉政権のもとですすめられてきた「戦争のできる国」や「市場原理にもとづく弱肉強食の競争主義」の政策は、昨年9月に成立した安倍政権に踏襲され、巨大与党を背景とした強硬政治が常態化し、格差社会がますます拡大するという危険な方向に動いている。
 安倍総理が標榜する「美しい国」とは、戦前の家父長制的家思想にもとづく修身道徳を基調とする復古主義・国権主義・民族排外主義的な骨格をもったものであることがますます明白になってきている。
 1月の柳澤厚労大臣の「女性は子どもを産む機械」発言は、まさに家父長制的家思想にもとづく女性の全人格を否定する差別発言であり、断じて許すことのできないものである。安倍総理はこれをたんなる「失言」として柳澤厚労大臣を擁護しているが、まさに安倍政権の差別体質を如実に示したものといえる。
 昨年の臨時国会で、安倍政権は、改悪「教育基本法」を強行採決し、防衛庁「省」昇格法を成立させるなど、「憲法改悪」への地固めをおしすすめている。今通常国会でも、憲法改定手続を容易にする「国民投票法案」を5月3日の憲法記念日までに与党の単独採決によってでも成立させると明言するとともに、治安監視のための「共謀罪」の成立にも血道をあげている。
 安倍政権は、戦後60年余の長い時間をかけながら多くの人たちの努力によって日本社会に定着してきた社会的価値・規範としての「人権・平和」を根本から覆そうとしていると断定せざるを得ない。私たちは、この危険な政治動向と断固として対峙し、「人権・平和・環境」を基軸にしたとりくみをねぼり強く積極的におしすすめていかなければならない。

 私たちは、憲法を改悪しようとする動きにたいして断固として反対するとともに、憲法の基本精神をさらに深め豊かにしていくとりくみをすすめることも忘れてはならない。それが、「人権の法制度」確立の闘いであり、その主要な一環としての「人権侵害救済法」制定の闘いである。
 率直にいって、「人権侵害救済法」制定の闘いは、現在きわめて厳しい状況のもとにあるといわざるを得ない。一昨年3月から自民党内で噴き上がった「人権擁護法案」にたいする反対意見は、当時の安倍議員、平沼議員を中心に展開されてきたことは周知のとおりである。それでも、私たちの粘り強い闘いの前に、小泉総理は2度にわたって「人権擁護法案の早期提出」を国会で言明し、杉浦法務大臣のもとに「検討プロジェクトチーム」を設置して法案提出に向けての論点整理の作業がすすめられ、与党人権問題懇話会もその作業の促進を求めてきたのである。
 しかし、安倍政権に移行して以降、いまだに自民党内には人権問題等調査会すら立ち上がっていないし、法務省の「検討プロジェクトチーム」は機能停止の状態となっている。与党人権問題懇話会のパートナーである公明党もこの状況に業を煮やして、1月31日の参議院本会議で代表質問にたった草川議員は「安倍総理の人権擁護法案提出に向けたとりくみについての所見」を質したところである。安倍総理の答弁は、「慎重の上にも憤重な検討をおこなうことが肝要」とのべるにとどまり、小泉総理の「早期提出」の確約からも大きく後退した姿勢をとり続けている。
 しかし、「人権侵害救済法」の制定は、政治責任・政府責任・国際責務からいっても、政権が交代したことを理由にして反故にされるような性格の法律ではないことをあらためて明確にしておかなければならない。

 安倍政権の「人権侵害救済法」制定にたいするきわめて不誠実な政治姿勢を転換させるためには、与党内の良心的な勢力への働きかけを強化するとともに、野党からの積極的攻勢をかけていくよう強く要請していくことが肝要である。
 同時に、国会外でのとりくみを強化することが決定的に重要になってきている。とりわけ、地域・自治体レベルからの差別撤廃・人権確立のとりくみは重要であり、人権侵害救済に関する法律の早期制定を求める自治体決議が「555」の多数にのぼっていることは、国政としても無視できないものとなっており、さらに拡大していかなければならない。
 また、昨年6月に施行予定であった「鳥取県人権侵害救済条例」も、一日も早い施行をめざして現在も議論が続けられているが、私たちは、昨年10月に成立した「千葉県障害者差別禁止条例」(今年7月施行)のとりくみなども参考にしながら、施行実施に向けた支援活動を全国的に強化していく必要がある。
 さらに、昨年3月に、マイノリティ諸団体や人権団体、法曹界や学者など広範な団体・個人によって結成された「人権の法制度を提言する市民会議」(略称=人権市民会議)が、精力的な活動を積み上げながら、昨年12月に「日本における人権の法制度に関する提言」を策定・公表したところであるが、この「提声は、国や自治体で人権政策を立案していく上できわめて有益な武器になるとともに、日本での人権の法制度に関する啓発効果もあり、反差別・人権運動をすすめる団体・個人の共同綱領的なものとしても積極的に活用していかなかればならない。
 差別撤廃・人権政策確立を求める国会内外の力を総結集して、人権政策に不誠実な安倍政権を追い込み、一日も早い「人権侵害救済法」の制定へ向けてねぼり強い闘いをおしすすめよう。

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