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部落問題資料室
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主張

 

戦争ができる国づくりを阻止し
憲法を生かした平和政策の確立を
「解放新聞」(2007.05.07-2317)

 ここ数年、日本を戦争ができる国にしていこうとする動きがより顕著になってきている。そしていま、米軍再編に関連して日米安保条約のなし崩し的な改変がなされ、日本が米国の戦争に巻き込まれる、あるいは、より深く加担していく危険も増してきた。
 日米安保条約は、日本に米軍基地を置くことを認めるかわりに、日本が攻撃された場合に米軍が自衛隊と協力して日本を守るという建前になっている。そして、在日米軍の日本防衛以外の作戦行動に関しても、「事前協議」による日本の同意や「極東」という範囲が定められていた。
 しかし、現在すすんでいる米軍再編は、在日米軍をアジアから中東にかけての広範囲な軍事作戦の中軸に位置づけ、自衛隊もその作戦にくみこもうというものである。
 米軍への自衛隊のくみこみという意味では、すでにイラクやインド洋などで後方支援などのかたちで始まってしまっている。現在も連日のようにイラクでのテロや戦闘による死者が多数出ている。米国内でも国際的にもイラク攻撃の誤りが明らかにされているが、日本の現政権は米国ブッシュ政権に追随するばかりで、過ちを認めようとせず、米軍のイラク占領に協力しつづけている。米軍再編と自衛隊のくみこみによって、この構図はさらに大きくすすみかねない。

 日本政府は10年前の「日米新ガイドライン」が合意されてから、それ以前の政府見解としてきた「自衛」という歯止めをかなぐり捨て、なし崩しに戦争立法をおこなってきた。
 いわゆる「周辺事態法」(99年)、米軍の海上封鎖に協力するための法律(00年)、アフガニスタン攻撃の後方支援のための法律(02年)、イラクへ自衛隊を派兵するための法律(03年)、「武力攻撃事態法」など有事3法(03年)、「米軍支援措置法」(04年)、空港・港湾・病院など国内施設の米軍使用のための法律(04年)、国民総動員につながる「国民保護法」など有事7法(04年)、防衛庁の「省」への格上げ法(06年)など、戦争に備えての立法や海外派兵を可能とする立法をたてつづけにおこなってきた。
 これらの立法は、憲法の枠を超えていると多くの人びとが反対したが、歴代政権は憲法の「拡大解釈」で立法を強行してきた。そして現在、憲法の「拡大解釈」も限界に達したとして、憲法を現在の既成事実にあわせ、さらに米軍に協力し、自衛隊が大手を振って海外に展開し、武力行使も可能になるよう、法整備と憲法改悪をめざしている。

 米国はこれまでも多くの国に武力介入してきた。かつてのベトナムや現在のイラクなどを見ても、安易に武力にたよる米国の外交政策や安全保障政策の誤りと危険性は明確である。ブッシュ政権になってからは、米国こそ世界の脅威といわれるほどである。その米国に追随するほど危険なことはない。
 ドイツはアメリカ追随をあらため、EU(ヨーロッパ連合)での「共通の安全保障」に転換し、隣国をすべて友人とし、兵員も半減させた。
 しかし最近の日本は、米国に追随するばかりで、歴史認識などで真実を隠し、いたずらにナショナリズムを煽るなど、隣国との対立を生んでいる。
 日本も戦争の反省から「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」として平和憲法をつくった。この精神を今こそ生かさなければならない。
 国際化がすすむ今日、隣国や世界の国ぐにとの友好と平和なくして、私たちの生活は成り立たない。軍縮を実現し、外交や相互理解・国際協力に予算も人も重点配分し、平和教育・人権教育、市民社会による国境をこえたパートナーシップづくりに力を注ぐべきではないか。
 国家の安全保障が一人ひとりの人間の安全保障とイコールではないことも明確にしておくことが大切である。また、「人間の安全保障」の観点から、人権や貧困・環境問題をはじめとした国際協力にも力を注ぐべきである。

 4月13日、与党は「日本国憲法の改正手続きに関する法律案」(国民投票法案)と「在日米軍再編特別措置法案」の衆議院採決を強行した。国民投票法案は、最低投票率の規定もなく、公務員の活動制限、メディア広告の取り扱いなど問題点が多く、審議が尽くされないまま数の力で強行採決され、参議院に送られた。
 小泉政権から安倍政権へと一段と強硬姿勢が強まっており、7月におこなわれる参議院選挙闘争は、今後の日本の進路を決めるきわめて重要な闘いとなる。この参議院選挙に全力を尽くすとともに、米軍再編と自衛隊の一体化や憲法改悪の動きをストップさせ、日常的な平和連動を強化していこう。

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