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「人権侵害救済法」を
めぐる状況と制定への課題
「解放新聞」(2008.04.28-2367)

 現在ひらかれている第169通常国会(6月15日閉会予定)で、「人権侵害救済法」制定を実現することをめざして、私たちほとりくみをすすめている。
  国会論議では、1月23日の参議院本会議で、鶴保庸介・議員(参院歌山選挙区)の代表質問にたいして、福田総理が「人権擁護を推進するための法的整備については、…引き続き真摯な検討」との答弁のおこない、2月22日の衆議院法務委員会で鳩山法務大臣も「法案の国会への提出をめざすべきものと考えておりますが、…引き続き真摯な検討」との所信表明をおこなった。3月25日には、参議院法務委員会で松岡徹・議員(中央書記長)の質問にたいして、鳩山法務大臣が「人権を守る基本法が必要だ」との考えを示すとともに、人権侵害の実態を法務省として把握させる努力をするとの答弁をおこなっている。
  今国会での国会論議は、現在のところではこの段階にとどまっている。その理由は、与党である自民党内での意見がまとまり切れていないからである。その意味では、「法案」の行方は自民党人権問題等調査会の審議状況が大きく左右する状況になっている。

 昨年末に再発足した自民党人権問題等調査会は、「法案の提出」に向けて今年2月13日に実質的な初会合を開催して以降、4月16日段階ですでに9回を数えており、党内での意見調整を精力的にすすめている。
  3月になってからは、学者・専門家からの意見報告を受けながらの議論がおこなわれ、塩野宏・東大名誉教授(元人権擁護推進審議会会長)、百地章・日大教授、山崎公士・新潟大教授、滝田三良・弁護士(全国人権擁護委員連合会会長)、横田洋三・中央大学教授(元国連人権委員会小委員)、炭谷茂・元環境省次官などが、それぞれの立場から意見表明をおこなってきたところである。
  会議には、つねに50~60人をこえる出席者があり、反対派議員も多数参加して議論がすすめられているようであるが、主要な議論はほぼ出尽くしてきた感がある。自民党人権問題等調査会での今後の議論は、根強い反対意見はあるとしても、人権侵害救済に関する法律は必要であり、国会に提出するという方向をめざしながら、廃案になった「人権擁護法案」には問題が多すぎるので徹底的に議論したうえで成案を得るという方向ですすめられていくのではないかと推察される。

 私たちは、国会で人権論議がこれほど活発におこなわれている事態を歓迎する。短絡的な推進派・反対派という政治的な色分けではなく、本質的な議論の核心を把握し、差別論・人権論をしっかりと深めていき、本当に必要な法制度はいかにあるべきかということを議論していく姿勢を貫くことが肝要である。そのうえで、充実した人権侵害救済に関する源泉が警官れていくように、これまでの議論の経過をふまえて積極的な働きかけを各方面にしていくことである。
  問題は、自民党内の議論がまとまり、与党の合意がはかられ、閣議決定の法案として国会提出されるのが、いつの時期になるかということである。各般の議論の推移と今国会で法案の実現をはかるという方向をふまえるならば、5月中下旬くらいに山場設定をおこないながら、法案の国会提出を迫るというとりくみが必要である。
  私たちは、現在の法案をめぐる議論が、日本で社会的価値観・規範としての人権思想が定着するかどうかの重要な岐路にあることを認識し、けっして逆流させることなく日本の人権の法制度を確立していく議論へと発展させていくことが重要である。
  したがって、5月22日に中央集会開催を準備しつつ、各地実行委員会で情勢認識ととりくみ課題の共有化のため集会や学習会を積みあげ、574の自治体議会決議をさらに拡大させ、地元選出の国会議員にたいする差別・人権侵害の実態をていねいに説明し、早期法制定の実現へ要請行動を周到におこなっていこう。

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