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部落問題資料室
NEWS & 主張
戸籍提出条件に
宗教や家族の職業も記入させ

「解放新聞」(2008.07.07-2377)

萩市設置の結婚相談所で判明

 【山口】萩市が結婚相談所を5月に開設、申込者の戸籍謄本と運転免許証などの写しを提出させ、申込書に本籍地、宗教、既往症、家族とその職業、障害の有無、身体状況、初婚・再婚(死別・生別)などを書かせていたことが判明。部落解放同盟山口県連が問題点を指摘し、戸籍謄本は独身証明書に変更、運転免許証などは本人確認のための提示に、申込書は大部分を削除し、改正された。山口県連は、これまでに萩市と5月19日と6月23日の2回の確認会をもち、問題の原因や背景などを明らかにするよう求めてきた。

市広報にもそのまま掲載され
  第1回確認会では、戸籍謄本提出の問題点を指摘するなかで申込書などの問題項目が判明、早急な改善と経過の報告を求め、6月23日に第2回確認会を庁舎内でおこなった。
  第2回確認会には、県連から松岡広昭・委員長、地元萩支部の岩田貞雄・支部長はじめ18人が参加。萩市から瀧口治昭・副市長ら21人が出席した。
  瀧口副市長は冒頭、不適切なものをチェックする体制ができてなく市民にもご迷惑をかけたことを謝罪し、人権に配慮しすすめたいと表明、経過報告が市の企画課からおこなわれた。
  このなかで戸籍謄本を提出させたのは「独身であることを確認するため」で、申込書に本籍、宗教、障害、家族や家族の職業などを書かせたのは「一般的な履歴書にそうした項目があると思いこんでいた」こと。宗教については「違う宗教だと結婚しないという排他的な宗教があると思っていたため、そういう宗教の人のカードは、あらかじめ抜いて絡介するつもり」だったこと。
  市広報で掲載したことについては「考えが及ばず、人権意識が希薄だった」と回答。出席者全員が広報の紹介記事を読んだことを確認したうえで、問題を感じた人は「ゼロだった」という現実が明らかになった。

大量不正取得事件も知らず
  また行政書士などによる戸籍謄本等大量不正取得事件についても市幹部は「くわしいことは知りませんでした」というありさまで、三重県内の行政書士に、山口県内で不正取得された10件すべてが結婚調査であったことを示し、戸籍を調べるものの大半は部落かどうかの調査であることを指摘し認識不足の一言で片づけられる問題でないことを訴えた。
  結婚相談所開設の5月9日以降、10人から申し込みがあり、その10人に戸籍謄本を交付した理由として、「本人確認は求められているが、理由・提出先については本人申請の場合は必要ない。プライバシーにふみこむのはちょっと…」と、請求理由・提出先についても回答を求めることができるにもかかわらず、そのとりくみさえ放棄し、今回の事件の原因や背景をまったくかえりみず、掘りさげようとする姿勢さえみられなかった。
  このため、次回は市長、教育長も出席し、さらに問題点の掘りさげをおこなうよう要請、日程調整を求めた。 

いまも、結婚相談で戸籍謄本
国の通達後も請求つづく

 山口県萩市が今年の5月9日に庁舎内に開設した結婚相談所が、通産省(現・経済産業省)や法務省の通達に反し「独身証明書」ではなく「戸籍謄本」の提出などを求めていたことが発覚した。きっそく、山口県連が抗議掲載)し、またそれをそのまま報道した中国新聞社(本社・広島市)にたいしては広島県連が抗議した。しかし、市役所の結婚相談所での戸籍謄本提出は萩市だけではなかった。埼玉県川越市でも明らかになり、埼玉県連が抗議に動いた。広島、埼玉両県連のとりくみを掲載する。

中国新聞にも掲載
深く反省し、謝罪

 【広島支局】山口県萩市が、市内への定住をすすめる目的で5月9日に庁舎内に開設した結婚相談所を、中国新聞が「市企画課に備えた申込書に希望する条件を記入し、写真や戸籍謄本などを提出して登録する」と報道した問題で県連は、中国新聞社に抗議した。
  中国新聞社は、5月29日、県連を訪れ林定一・編集局統括が、「深く反省している。人権感覚が磨かれていなかった」と陳謝した。
  これにたいして県連は、①結婚の身元調査で戸籍謄本が悪用されてきた事実があり、最近でも興信所、行政書士による戸籍謄本不正取得事件が発覚している②2000年5月には、民間の結婚相談所と市区町村にたいし、基本的人権を侵害することのないよう戸籍謄本にかわり、「独身証明」の活用を求める通産省通達が出されている③萩市の「申込書」には、家族の職業や身体上の障害の有無、宗教などの記入欄があり、前近代的で差別的、と指摘し、「記者と中国新聞社の人権感覚の欠如はきわめて深刻」と強く抗議した。
  また、県連側は、過去にあった数かずの中国新聞社による問題報道を示し、背景の分析と抜本的な反省を求めた。
  中国新聞社側は、今回の記事問題と反省を文書でまとめることを約束した。

川越市は提起うけ改正
職員の人権意識を問う

  【埼玉支局】川越市が1973年から開設している結婚相談所が、申込者に戸籍謄本の提出を求めていることがわかり、県連は6月4日にすみやかな是正を要請した。市は6月6日付けで提出書類を戸籍謄本から独身証明書に改めた。
  市は、住民サービスの一環で結婚相談業務をはじめ、希望者の斡旋をおこなってきた。最近5年間では毎年平均105人の申し込みがあり、平均6組の結婚が成立していたが、申し込みのさい、履歴書、写真のほかに戸籍謄本の提出を求めていた。「独身であることの証明のためで、相手側に戸籍を見せていない」と市の担当者は弁明するが、この戸籍謄本提出が身元調査に悪用される恐れがあることから通産省(現・経済産業省)は95年に、結婚紹介業者にたいして通達を出し、戸籍謄本を使わず自治体発行の「結婚情報サービス・結婚相談業者に提供する証明書(通称・独身証明書)を利用するよう求めた。
  また、00年には法務省が地方法務局長を通じて市町村の戸籍窓口に通達し、独身証明書の利用の徹底をはかった。市の結婚相談担当は、この通達の存在を知らず、そのまま戸籍謄本の提出を義務づけてきた。
  川越市の筋野武人・人権推進課長は、「戸籍の不正取得が大きな問題になっているなかで、謄本の提出を求めてきたのは弁明の余地がない問題だ」とのべ、6日付けで要綱を改正した。
  県連の片岡明幸・委員長は、「職員の人権意識が問われる問題だ。通知を知らなかったではすまされない。ほかにも結婚相談をやっているところがあるが大丈夫か。すぐに全県的に調査したい」とのべた。

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