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部落問題資料室
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本人通知制度の確立などへ
各地でとりくみをすすめよう
「解放新聞」(2009.04.13-2414)

 委任状偽造による戸籍の不正請求、差別身元調査の防止を目的に、希望する市民を対象に、本人や家族以外から戸籍や住民票などを請求された場合に通知をおこなう「登録型本人通知制度」が大阪狭山市(大阪府)で6月からスタートする。大阪狭山市のほかにも、大阪の7自治体で今年度、「登録型本人通知制度」が導入される。
  不正請求が明確な場合や、その疑いが強い場合に戸籍などを取られた市民に情報提供するとりくみは、いくつかの自治体で実施されてきたが、交付した場合に通知するという制度は全国で初めてとなる。
  大阪狭山市の場合、対象となる書類は、「戸籍謄抄本(除籍謄本を含む)」「戸籍の附票」「住民票の写し(住民票の除票を含む)」。これらの書類が代理人請求(委任状)、第三者請求(個人、法人、行政書士等の特定事務受任者)によって取られた場合に、登録した市民に郵送で交付請求があった事実を通知する。
  通知を受けた登録者は、市役所で「証明書」(交付日、交付種別、請求種別、交付枚数)の交付申請をおこない、いつ、何を、どのよう(代理人請求か第三者請求か)に取られたのかを情報開示してもらうという仕組み。手数料の300円は登録者が負担する。
  大阪府内市町村での「住民票の写し」の交付請求の種類別内訳(2005年5月総務省調べ)から推計すると、交付請求のうち、本人または同一世帯の者からの請求と公用請求が全体の約7割を占めている。
  したがって約3割が代理人請求や第三者請求にあたり、「登録型本人通知制度」の対象となる。ただし、弁護士、司法書士の請求のなかで、裁判手続き、または紛争処理などによる職務上請求は、職務上請求書に依頼者氏名などが記載不要のため開示情報の対象にならない。

 この制度が実施されれば、委任状偽造による不正請求は、100%発覚することになる。委任状を書いていないにもかかわらず、委任状をもった代理人が戸籍などを請求した事実が証明されるのだから当然である。
  行政書士等の有資格者による第三者請求の場合も、市町村の個人情報保護条例の規定によっては誰が請求したのかという個人名も情報開示できるケースもあり、個人名の非開示にたいして不服請求をおこなえば情報開示されるケース(東京都渋谷区個人情報保護審議会答申「8業士の法令上の利益(職務上の守秘義務)と被交付請求者の自己情報コントロール権について比較衡量すると、個人情報保護法の基本理念により自己情報コントロール権は優先的に認められる」08年7月7日)もある。

 戸籍法や住民基本台帳法の一部改正によって、戸籍などの交付請求にさいしての本人確認が義務づけられたことや、不正請求にたいする罰則が強化されたことなども加味すると、「登録型本人通知制度」が実施されれば、現行の戸籍法、住民基本台帳法の下での戸籍などの不正請求はきわめて困難になると考えられ、差別身元調査などの防止に大きな力を発揮できる。
  大阪府が大阪法務局を通じて法務省に照会した結果、「「登録型本人通知制度」は戸籍法に抵触しない」との見解が明らかにされている。制度が実施されると当然、大阪府以外の都道府県の8業士から当該市町村への請求も通知の対象となる。
  戸籍法、住民基本台帳法の改正による「情報開示」(本人通知)制度実現のとりくみとあわせて、法改正がなくても「通知制度」実施が可能であることをふまえ、市町村でのとりくみを強く求める必要がある。
  また「部落地名総鑑」について「調査をすすめてまいりたい」(06年4月10日、杉浦法相)、本人通知制度が「検討課題であると思っている」(07年4月26日、長勢法相)との松岡徹・参議院議員(中央書官長)の国会質問にたいする法務大臣答弁の具体化を政府交渉で求めていくことも重要である。
  そのためにも戸籍などの不正請求や差別身元調査の真相と、これらの問題が市民の自己情報コントロール権にかかわる問題であることを徹底して訴え、人権政策確立の重要課題としてとりくみを広げていこう。


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