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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

人権教育を基盤に、
子どもの権利保障をすすめよう
「解放新聞」(2009.11.30-2446)

 文部科学省は、3次(2004~08)にわたり公表してきた「人権教育の指導方法等の在り方について」の「とりまとめ」の活用状況に関する検証作業として、「人権教育の推進に関する取組状況」について全国調査を実施した。そして、その調査結果を分析し、まとめた調査報告書が、10月に公表された。報告書では、調査の分析結果をふまえて、国や都道府県教育委員会の役割、管理職研修の充実、協働型学習の推進、地域と学校、各学校間の連携など7点にわたり提言を示し、人権教育の充実が「今日的な教育課題の解決にも資するものである」とし、人権教育の意義を再確認するとともに、いっそうの推進を求めている。人権教育に関して、国として初めて全国規模の調査を実施したことの意義を高く評価したい。
  そして、この間の3次にわたる「とりまとめ」と「調査結果」を「絵に書いた餅」にさせないためにも、今回の調査の検証のもととされた「とりまとめ」が「人権教育は、教育を受けること自体が基本的人権であるという大原則の上に成り立つものである」と指摘していることを、部落解放運動の手で具体化していこう。

 周知のとおり、鳩山新政権は、「公立高校授業料の実質無償化」「高等教育の漸進的無償化の導入」「子ども手当ての創設」など、教育機会の保障に向けた政策を公約に掲げて発足した。
  わが同盟としても、教育機会の保障を基調とする教育理念や、こうした政策の導入には賛同するところであり、大いに歓迎するものである。
  政府がすすめてきた少子化対策に早くから疑義を抱き、「子どものマイノリティ化」の問題などについて警笛を鳴らしてきた森田明美(東洋大学教授)さんらの研究グループは、近年、親や家庭の抱える問題が、これまでにも増して子どもたちの育ちを阻害し、権利侵害に匝精しやすい状況が生まれていると指摘している。自民政権下では、日本社会が成熟社会になりつつあり、子どもや親自身、そして社会構造自体も大きく
変貌してきたにもかかわらず、子どもや家庭支援のあり方は旧態依然としたままであった。それどころか、就学援助の改悪や母子加算の廃止に代表されるように、社会的、経済的、政治的にも「子ども」や「子どもの問題」の位置づけを大きく低下させてきたことが根本的な問題であり、いまこそ大胆な政策転換が求められている。

 同和教育が「差別の現実に深く学ぶ」という基本理念のもと、被差別部落の子どもたちの教育権の保障を核にすすめてきたように、「人権教育」を「人権についての教育」に矯小化することなく、人権教育を教育の基盤に据えて、「人権教育のための10年」で示された「人権教育」の4側面(人権のための教育、人権としての教育、人権を適しての教育、人権についての教育)を教育政策として具体化していかなければならない。
  新政権にたいして、2010年からの「人権教育のための世界プログラム」第2フェーズの具体化を迫るとともに、教育分野でのナショナル・ミニマムを明らかにし、国や地方の財政論や目先の短期的な結果にとらわれず、子どもの権利保障を基盤にした教育政策への根本的な転換を求めていこう。
  そして、そのための大きな後押しとなる草の根の地域教育運動を各地で推進していこう。

草の根の地域教育運動を推進しよう
◆人権教育をめぐる主な経過
1995年 人権教育のための国連10年(~2004年)
2000年 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律
2002年 人権教育・啓発に関する基本計画
2003年 人権教育の指導方法等に関する調査研究会議設置(文部科学省)
2004年 人権教育の指導方法等の在り方について第1次とりまとめ公表
      人権教育のための世界計画
2006年 第2次とりまとめ公表
2008年 第3次とりまとめ公表
2009年 人権教育の推進に関する取組状況調査


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