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部落問題資料室
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全研で差別撤廃・人権確立に向けた研究・討議をさらに深めていこう

「解放新聞」(2010.09.27-2487)

 11月9日から3日間、部落解放研究第44回全国集会が新潟県で開催される。新潟県開催は初めてであり、地元新潟県実行委員会や新潟県連の地道な努力に感謝したい。
  今回の全国集会は、民主党政権が誕生して2回目の開催であり、菅改造内閣に松本龍副委員長が環境大臣として入閣したもとでなされる研究集会である。
  今後の部落解放運動のあり方をはじめ、同和行政や各界の部落差別撤廃のとりくみも大きな節目のときを迎えている。
  とりわけ部落解放運動の方向性と地方自治体での部落差別撤廃行政の方向性を明確に示すために活発な論議が求められている。その前提として、今日の部落差別やその実態をどのように捉えるのかといった重要な課題が山積している。中央本部と(社)部落解放・人権研究所は、来年の全国的な実態調査実施に向けて、すでに準備をすすめている。それらのとりくみを着実に前進させなければ部落差別撤廃のとりくみは大きく後退する。


 本研究集会の第1の課題は、今日の部落差別をどのように捉えるのかということにある。部落差別はなぜ存続し続けるのかというその原因をつきとめない限り、部落差別の根本的解決はない。社会システムにあるという一定の枠組みは提示してきたが、その枠内を詳細に明らかにすることができていない。今日、部落差別を制度的に固定化する法律・制度は存在しない。これまでの累積的差別が、現在の社会システムと重なるとき、差別の再生産構造を作り出してきた。それらをより詳細に明らかにすることが、私たちのもっとも重要な理論的課題である。
  格差拡大社会といわれる状況のなかで、部落差別の実態がどのように変化しているのかということを明確にする必要がある。生活実態だけではなく格差社会が人びとの意識にどのような影響を与えているのかを明らかにすることも重要な課題である。
  今日の格差問題で重要な問題は、若年期の格差が固定化してしまう可能性が大きく、地域間の格差も広がっているという問題である。この2つの問題は、部落問題解決にとって大きな負の影響をおよぼす。

 第2の課題は、差別を撤廃するためには差別撤廃社会システムを重層的に創造していくことが必要であり、そのための方向性を示すことにある。
  そのシステムの1つが「人権侵害救済法」である。2009年衆議院選挙時の民主党マニフェストではその制定が明確に掲げられてきた。しかしそのとりくみは本年7月の参院議員選挙闘争で松岡中央書記長を当選させることができなかったことによって、一定の後退が余儀なくされている。そうした状況下で人権侵害救済法をどのように制定するのかということを明らかにすることも、本研究集会の重要な課題である。
  第3の課題は、上記の内容ともかかわって、今日の差別事件の現状をふまえつつ、特徴、背景、課題を明確にすることである。とりわけ現在とりくみがすすめられている土地差別調査事件の全容解明と多発しているインターネット上の差別事件にどのように対処するかは最重要課題である。
  ネット上の差別事件は、情報環境が世界を変えたように電子空間上の差別事件が差別事件の能様を変えるような状況になりつつある。
  さらに結婚差別事件のように忌避・排除といった旧来の差別事件もあとをたたない。戸籍不正取得事件やその先にある結婚差別事件はその典型である。

 第4の課題は、部落差別撤廃行政である同和行政の今後の方向性を示すことである。そのためにも各地で制定された人権条例をはじめ、これまでの人権に関する答申や行動計画、プランといった成果を活用する方向を明確に指し示す必要がある。
  多くの地方自治体の人権に関する条例や答申、プランを「絵に描いた餅」にしてはならない。それだけではない。部落差別と直接結びついていない法令などのなかにも部落差別撤廃のために活用できるものは数多くある。「職業安定法第5条の4」と「指針」(求職者等の個人情報の取り扱い)は、その典型である。就職差別撤廃に大きく責献した。そうした研究と活用が求められている。
  最後に、本研究集会は社会に多大な影響を与えてきた部落解放運動のいっそうの前進に向け、成果と問題点を明らかにしつつ、運動の今後の方向を明確にするための論議を深める絶好の機会でもある。
  これらの課題以外にも多くの課題が存在する。それらの課題にたいしても参加者の活発な実践報告と論議を期待したい。そのための準備を各地で強力にすすめていこう。

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