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部落問題資料室
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第57回全国女性集会の成功へ各地で準備積み重ねよう

「解放新聞」(2012.05.07-2567)

 世界的な経済の低迷が続いている今日、社会的政治的閉塞感が強まっている。とくに雇用をめぐる情勢は、2008年の世界的な金融危機以降、倒産する企業と完全失業者の増加、不安定雇用の増加や子どもの貧困問題など、私たちの暮らしはますます厳しいものになっている。
  また、昨年3月におきた東日本大震災と津波によって、多くの方が犠牲になり、福島県の原発事故ともあいまって、いまだに多くの人たちが自宅に戻れずに避難生活を余儀なくされている。さらに、台風などの影響で全国各地に大きな被害がでた。とりわけ、東日本大震災では、長期的な支援体制にとりくんでいくとともに、復興支援のなかで取り残されがちな「もっとも困難をかかえた人たち」にたいする支援が求められている。
  福島第1原子力発電所の事故では、日常生活にも大きな影響を与えている。原発の安全性も含め、今後のエネルギー政策の見直しが必要だ。今日の部落解放運動の中心的課題は、いのちと生活、人権・平和・環境を守るためのとりくみである。こうした課題は、部落のみならず、すべての人たちに共通するものである。この課題を解決するためにも、反貧困・反差別の協働のとりくみが重要である。
  本年、5月19、20日の2日間、佐賀県で部落解放第57回全国女性集会(佐賀全女)を800人規模でひらく。すでに、佐賀県連女性部を中心に集会成功に向けたとりくみがすすめられている。全国の女性の力で部落差別をはじめ、あらゆる差別に反対し」男女がともにジェンダー(社会的・文化的に形成された性差、性差別)によって役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない男女平等社会の実現に向けて、第57回全女を成功させよう。

 男女平等は、確立されなければならないにもかかわらず、現実には女性にたいする差別が存在している。私たちの意識や行動面では、まだまだジェンダーにとらわれた部分がある。男だから、女だからという問題や、よく使われる言葉に「仕事と家庭の両立」がある。これは女性にたいしてだけ使われ、男性にたいしてはあまり使われない。男女平等の意識をつくるには、まず、なにがジェンダーかということに気づくことが大切だ。そして、日常生活やメディアのなかに存在するジェンダーなどに気づき、身近なことから制度や慣習について見直すことができるような「ジェンダーにとらわれない意識」を積極的に形成していくことが重要である。ジェンダーによって役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない環境をつくり出し、男女平等を考え行動していく必要がある。
  2005年に育児・介護休業法の改正法が施行され、男女がともに働く権利と育児・介護の両立をめざして、男性にも女性と同等の権利を認めている。しかし、現実に男性が育児休暇や介護休暇を、気兼ねなく取得できる職場環境があるのだろうか。
  昨年12月に、部落女性アンケート調査報告会を開催し、2006~2010年に実施された愛知・埼玉・大阪・兵庫・奈良・京都の部落女性アンケート調査結果(1万1265人が回答)で4つの共通点が明らかになった。それは、①働く権利や制度について、職場で利用できる制度があるにもかかわらず、どんな制度があるのか知らなかったり、制度を利用できない職場で働いていることがわかった。私たちは、働く権利や制度を学習し、どんな制度が利用できるのかを知ることが大事だ。②どの府県でも高齢になっても働いている人が多く、そのなかには無年金者が多くいるのではないかと推定されること。③10歳代の若年層でも字をまったく読めない人がいること。④いまなお、結婚・就職差別など部落差別があとをたたないこと。これらの課題や実態を国に訴えて施策に反映させていかなければならない。
  さらに、組織内でも女性が力を発揮できる組織運営がおこなわれる運動になっているのかどうか。「男女平等社会実現基本方針」(改訂版/2008年)を学習し、中央本部・都府県連・支部で異体的なとりくみをすすめていかなければならない。

 2010年12月に閣議決定された「第3次男女共同参画基本計画」に、「同和問題等に加え、女性であることからくる複合的に困難な状況におかれている場合がある」という「同和問題等」という文言がはじめて入った。しかし、内閣府男女共同参画局は文言だけで、国連女性差別撤廃委員会から出された勧告(2003年、2009年)を履行しないばかりか、マイノリティ女性にたいする施策をなんらおこなっていない。
  本年10月に国連人権理事会の普遍的定期審査で日本政府報告書にたいする審査がおこなわれることもあり、政府がフォローアップを約束した「マイノリティ女性が直面している問題への取り組み」を推進させるために、マイノリティ女性の声を聞いてほしいと男女共同参画局に強く要請し、4月9日に部落女性、在日朝鮮人女性、アイヌ女性、IMADR・ICとの意見交換をおこない、政府として、しっかりとした実態調査をおこなうべきだなどの要望を訴えた。
  私たちは、今後も在日朝鮮人女性、アイヌ女性、部落女性の3者での申し入れや、各地でおこなわれたアンケート調査結果をふまえて、関係省庁との交渉をおこない、それぞれの実態を訴えるとともに、マイノリティ女性にたいする施策の実施と政府による実態調査を要求するなど、粘り強い働きかけを強化しなければならない。

 第57回全女では、部落解放・人権政策確立のための闘い、狭山再審闘争をはじめ、差別糾弾闘争の強化、複合差別の視点を含めた男女平等社会の実現、自立自闘に向けた闘いと人材育成をはじめとした女性部組織の拡大や「人権と福祉のまちづくり」の実現など、地域でのとりくみの実践交流と論議を深め、活発な意見を出し合い集会の成功をかちとろう。
  本年は、全国水平社創立90周年という大きな節目の年である。90年の闘いに学びながら、私たち女性運動部の活動が部落解放運動の闘いを大きく前進させる牽引力となるよう、各級機関の論議に参加できるみずからの力量を身につけよう。
  また、男女平等の社会実現に向けた重要な課題として、「男女共同参画社会基本法」のとりくみがある。「男女共同参画社会基本法」の積極面を活用し、私たちの住んでいる自治体ごとでの部落女性をはじめとしたマイノリティ女性の視点をふまえた、より異体的な中身をもった、「男女平等条例」をつくる必要がある。
  さらに、部落解放運動だけではなく、さまざまな差別と闘う国内外の女性たちと反差別・反貧困のネットワークをつくりながら、すべての女性たちとの連帯をさらに強化し、人権と平和の確立、いのちと生活を守る協働のとりくみをすすめよう。部落解放運動の前進に向けて、部落女性が団結し、運動の牽引力となって、あらゆる差別をなくすために全力で闘いをすすめよう。


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