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部落解放同盟ガイド
見解

 

結婚相談サービス業のCM解禁の動きに関しての要望書

 日本民間放送連盟(民放連)の研究会で結婚情報サービス業のコマーシャルを放送基準109条の「私的な秘密事項の調査を業とするものは取り扱わない」の対処からはずす意見が一部ででていることから、身元調査につながりかねない結婚相談事業の実態を示し、安易な改正とCM解禁に反対する「要望書」を昨年12月18日、民放連に届けた。その全文を掲載する。

2013年12月18日

一般社団法人 日本民間放送連盟

      会長 井上 弘 様

部落解放同盟中央本部   

中央執行委員長 組坂繁之

結婚相談サービス業のCM解禁の動きに関しての要望書

 日頃より、部落問題解決をはじめ人権確立の諸活動に取り組まれておられますことに深く敬意を表します。
 早速ですが、現在、貴日本民間放送連盟(以下、民放連)の研究会において結婚情報サービス業のCM取扱の是非にむけ検討され、民放連で定められている放送基準109条の「私的な秘密事項の調査を業とするものは取り扱わない」との条文の対象から結婚相談サービス業を外す意見が一部出ていると聞き及んでおります。
  私ども部落解放同盟にも、10月10日に民放連からのヒアリングが行われ、その際にも意見表明をさせていただきましたが、改めてこの件に関して意見表明と要望をさせていただきます。

 部落解放同盟としましては、現在、依然として部落の出自を理由とした結婚差別が根強く存在しているとの認識にたっており、結婚相談サービス業の広告が身元調査や部落差別にもとづく結婚差別の助長につながらないか、強く懸念するものです。
  1991年、京都府福知山市の住民が結婚紹介業者に入会を問い合わせたところ、同和地区住民、外国人等を排除するような発言をなされる差別事象が発生、また1995年、京都府内の社会福祉協議会が行っている結婚相談事業において、申込書に本籍や住居の種別、建坪、再婚の場合の離婚や死別の年月を書かせている事象が発覚しました。このことを受け、1995年3月に国(旧通商産業省サービス産業課長)は「結婚紹介業者への入会受付等に当たっての対応について」を通知・指導を出し、個人情報の収集にあたって基本的人権を侵害しないこと、独身であることの証明は独身証明を活用すること等を徹底しているところです。
  しかしながら、2004年、大阪府・大阪市が実施した「結婚相談業・結婚情報サービス実態調査」において、戸籍謄本の徴収をはじめ、本籍、国籍、宗教、家族構成等センシティブ情報を収集・提供している事業所が多数あることが発覚、「相手が同和地区出身」であるとか、「相手の家族に障がいを持つ者がいる」ことや「相手の国籍・民族」が要因で結婚がまとまらなかった事例が明らかとなりました。あわせて2008年には山口県萩市の結婚相談所や同県宇部市社会福祉協議会結婚相談事業で、埼玉県川越市の結婚相談所、同県社会福祉協議会結婚相談所、長崎県佐世保市結婚相談所等で戸籍謄本の提出や申込書に本籍、宗教、身体上の障がいなどを記入させていた事象があいついで発覚しています。
  私ども部落解放同盟は、身元調査につながる戸籍謄抄本を提出させないことや、相談カードや入会書に本籍欄・宗教欄・親の職業・障がいの有無等の基本的人権に拘わる項目を削除することを、業者・業界に求め、国や地方自治体にもその改善を指導するよう強く求めてきたものです。
  現在、結婚相談サービス業界においても独自のガイドラインを策定し、基本的人権の尊重を盛り込んだ認証制度等を設け、行政とも連携して教育・啓発等に取り組んでいることには、私どもも評価するものでありますが、しかしながら、表面化した事象は氷山の一角であり、まだまだ身元調査につながるような情報の収集や提供がこの業界において根深くあるのではないかと考えているところです。
  2004年と少し古い調査となりますが大阪府・大阪市が実施しました結婚相談業・結婚情報サービス業実態調査(大阪府内162事業所対象、83事業所回答)において、複数回答ではありますが、結婚がまとまらなかった要因として、相手が同和地区出身が9.1%、相手の家族に障がいを持つ者がいるが6.5%、相手の国籍・民族が5.2%あり、差別意識が未だ根強い実態が明らかとなっています。また、入会申込書に記載させる情報として、国籍・職種・役職、職歴、宗教等を50%を超える事業所が必須項目としており、入会申込み時に提出させる書類として住民票30.4%、戸籍謄抄本が25.3%にもなっている実態が明らかになっています。
 身元調査や部落差別にもとづく結婚差別の温床の背景として、自分の結婚や子どもの結婚において同和地区かどうか気になる、また忌避するとした人たちがまだまだ根強く存在していることが、近年実施されている大阪府の人権問題に関する府民意識調査等においても明らかになっています。
  人生の新たな節目ともいうべき結婚にあたって興信所・探偵者を通じての身元調査により部落の出自が暴かれ、結婚が破談となり若い命を絶つという数々の悲劇が繰り返されてきました。そのような悲劇を繰り返さないため、身元調査お断り運動等の市民運動が取り組まれ、大阪府、熊本県、福岡県、香川県等において部落差別に係る規制条例制定につながってきました。しかしながら、昨今、行政書士や司法書士等のいわゆる八業士といわれる職種の者が、その地位を利用し大量に個人の戸籍謄抄本等を請求・入手している事件が発覚しており、その裁判の公判においても、多くが結婚等の身元調査に活用しているとの証言も出ています。本人が知らないところで戸籍謄抄本がとられた場合、本人に通知する登録型本人通知制度の制定と戸籍法の改正運動を現在、私どもとしては強く求め展開しているところです。
  以上のことからも結婚相談サービス業のCM解禁や民放連で定められている放送基準の改定検討にあたっては、これまでの多方面にわたる方達の努力を無にすることのないよう、また結婚という人生の節目において身元調査による悲劇を繰り返さず、基本的人権が守られるよう最大限、配慮されることを強く要請し、安易な改正に反対するものです。

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