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部落問題資料室
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「部落地名総監」事件を再認識し、就職差別撤廃のとりくみ強化を

「解放新聞」(2014.08.18-2679)

 7月23日に厚生労働省との交渉を実施した。そのなかで、「部落地名総鑑」を「配っただけでは人権侵害にならない」「就職差別に利用したかどうかが問題で、使用しなければ人権侵害にならない」などと広島法務局の幹部二人が発言した問題について、厚生労働省の見解をただした。
  厚生労働省は、「部落地名総鑑」について「さまざまな差別を招く、また助長する非常に悪質な冊子であって、配布、所持すること自体に非常に大きな問題がある」と表明、事件当時に「労働大臣談話」(1975年12月15日)などで明らかにした見解は変わらないことを明言した。
  労働大臣談話では「今般、企業の人事関係において利用されることを目的として、『人事極秘・特殊部落地名総鑑』という、同和関係住民の就職の機会均等に影響を及ぼし、その他様々の差別を招来し助長する悪質な冊子が発行され、一部企業の人事担当者に販売される事件が発生したことは、誠に遺憾であり、極めて憤りにたえない」とのべ、それまでの国の施策の点検をおこない、企業啓発・指導などを強化する決意を表明している。
  さらに同時に、「地名総鑑事件」についての見解ととりくみについて、関係各省(総理府、法務、労働など12省)事務次官連名による経済6団体への要請文書がだされ、全国の自治体へ周知する文書、さらに労働省職業安定局長名による業種別民間企業92団体にたいする要請文書がだされた。それだけ大きな社会問題になったのである。
  それらの文書のなかにも「この『地名総鑑』には、同和地区の所在、新旧両地名等が記載されており、その購入案内書の趣旨から見て、特に企業における人事関係に利用されることを目的として、発行されたことは明確であります」「同和地区住民の就職の機会均等に影響を及ぼし、更には、様々な差別を招来し、助長する極めて悪質な差別文書であると断定せざるを得ない」と明記されている。そして当然ながら冊子の回収等の措置がとられたのである。「配っただけでは人権侵害にならない」との発言が、言語道断であることは明白である。
  人権擁護の中心的省庁である法務省の地方幹部が、このような発言をすることは社会に大きな影響をあたえるものであり、猛省を促したい。また、このようなことをくり返さないよう、その反省に立ったとりくみが必要である。

  「地名総鑑事件」を契機に、雇用主にたいする啓発・指導の強化と各事業所での公正な採用選考システムの確立をめざし、「企業内同和問題研修推進員」制度がつくられた。1977年に37都府県でスタート、1997年に「公正採用選考人権啓発推進員」に名称変更され、東北など10道県もふくめ全都道府県のとりくみとなった。
  「推進員」設置基準も「従業員100人以上の事業所」から50人以上や30人以上など、都府県によって拡大してきた。しかしいっぽうで「推進員」の形骸化の問題も指摘されている。
  この「推進員」制度、そして「統一応募用紙」「職業安定法第5条の4および大臣指針」および「就職受験結果報告書」のとりくみが現在の就職差別撤廃の柱となってきた。
  今年、連合がインターネットで大卒者などに「就職活動に関する調査」をおこなった結果がホームページに掲載された。そのアンケートの質問項目の一つとして「就職差別につながる不適切な質問」について聞いているが、「本籍地・出生地を聞かれた」が三割強、「家族に関することを聞かれた」は四割、「結婚・出産後の就業意向を聞かれた」女性が三割弱など、驚くべき結果がでている。
  格差社会の深刻化とともに「ブラック企業」や「過労死」が社会問題化し、安倍政権による労働法制の改悪の動きも強まっている。このような労働者の権利や人権を侵す動きのなかで、就職差別をはじめ、さまざまな差別も拡大しているのではないか。広島法務局幹部の問題発言もこの状況のなかででてきた。
  「部落地名総鑑」が発覚してから来年で40年となる。このさい政府・行政・自治体をはじめ、社会的にも 「部落地名総鑑」事件の再認識をうながしていく必要がある。そして、人権擁護にとりくむ労働組合や教育関係者、企業など幅広い人びとと連帯して、就職差別撤廃のとりくみを強化していこう。

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