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部落問題資料室
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3者協議の前進ふまえ、寺尾差別判決40年糾弾、10.31狭山市民集会に結集しよう

「解放新聞」(2014.09.22-2684)

 狭山第3次再審は、証拠開示をめぐって激しい攻防戦が続いている。8月20日におこなわれた第19回3者協議では、証拠開示に関連していくつか重要な動きがみられた。その一つは、裁判所が未開示の筆跡資料について、開示の方向で検討中であることを示したことだ。この未開示の筆跡資料の開示は、この間開示された証拠物に付けられた番号が飛んでいたため、弁護団が未開示の証拠があるはずだ、と開示を求めていたものだ。とくに、番号飛びのうち、前後が石川さんの筆跡資料にはさまれた部分については、筆跡資料がまだあるはずだと強く開示を求めていた。しかし、検察官は、これら筆跡資料は第三者のものであり、プライバシーにかかわるので開示できないと拒んできていた。
  そのやりとりが続くなか、前回の3者協議で、裁判所が検察官から提出された資料を検討したうえで、プライバシーに触れないものを弁護団に開示することになった。こうした経過をたどって未開示の筆跡資料が開示される見通しがでてきたわけだが、弁護団の粘り強い活動が確かな前進をかちとったものである。
  そもそも捜査で集められた証拠物は開示すべきものであり、弁護団の開示請求は当然だ。3月27日に再審開始が決定された袴田事件では、静岡地裁は24回におよぶ3者協議で、証拠リストもふくむ証拠開示を勧告し、600点の証拠が開示された。それによって有罪判決の決め手となった「5点の衣類」の発見時のカラー写真が初めて開示され、また、「5点の衣類」のDNA鑑定が実施され、それが再審開始につながった。静岡地裁の再審開始決定は、証拠開示をすすめ審理をつくすという本来の刑事裁判の姿勢をふまえたもので、東京高裁、高検もしっかり受け止めるべきだ。
  二つ目は、裁判所が証拠物のリストについても開示の方向で検討してほしい旨の姿勢を示したことだ。狭山事件では、捜査本部は捜査の過程で相当量の証拠を集めているが、それがいまだに隠されたままになっている。弁護団は、くり返し証拠の開示を求めてきたが、検察は「具体的に何を開示せよというのか、それを特定してほしい」という態度を続けてきた。しかし、検察官手持ち証拠の内容がわからなければ特定しようがない。狭山事件では、このどうどうめぐりの不毛な論議が続いてきたが、今回3者協議で、裁判所が証拠物はできるかぎり開示するという立場で一覧表の交付の方向を示したことは重要だ。検察は、すみやかに証拠リストを開示するべきだ。

 弁護団は7月25日、石川さんの取り調べをした関源三・巡査部長が作成した捜査報告書「被疑者石川一雄が取調の合間に本職にたいして語った言動について」を新証拠とする再審請求補充書を東京高裁に提出した。この関源三「捜査報告書」(以下「6.23関報告書」)は、石川一雄さんが単独犯行の自白をはじめた6月23日に作成されたもので、石川さんが遺体の状況を知らなかったこと、また自白がつくられたものであることを警察官の報告書というかたちで立証する重要な新証拠である。
  では「6.23関報告書」とは、どういうものか。これまでの裁判では、石川さんは、逮捕から1か月たった6月23日に単独犯行であることを、はじめて打ち明けたことになっている。「6.23関報告書」によれば、このとき、石川さんは取り調べにあたっている3人の刑事を部屋からでてもらうようにいい、関源三だけ残ってくれといって二人だけになって話したとなっているのである。そして、そのとき、石川さんが「Yちゃんはどうなっていたんべい。其れを教へてくれればわかるんだ」とたずねたと報告しているのだ。関源三は2審の第6回公判でも同じように証言しており、また「6.23関報告書」は開示された録音テープとも内容的に一致しており、実際にこうしたやりとりがあったと考えられるのである。容疑者が警察官に「遺体の状況を教えてくれ」と聞いたことになる。こんなことを犯人が聞くはずがない。そのこと自体、石川さんが犯人でないことをあらわしている。弁護団は、この点を取りあげ、石川さんが遺体の状況を知らなかったこと、また自白がつくられたものであることを示す証拠として、この関報告書を新証拠として提出した。あわせて自白の経緯に関する証拠開示を求めた。証拠開示の攻防は続いている。さらに世論を高めよう。


 部落解放同盟は8月28日に全国狭山活動者会議・支援団体全国交流会を都内でひらき、大詰めをむかえた第3次再審の状況を確認するとともに、10.31中央集会をひらくことをはじめ、今年の秋から冬にかけた狭山の闘いの方向を確認、全国的な運動の高揚をかちとるための意志統一をはかった。会議では、映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」の上映運動のとりくみが各地から報告された。昨秋、公開された映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」は、これまでに全国300か所以上で上映され、各地で好評を博している。大阪、京都、兵庫、新潟、愛知、山梨では一般の映画館でも上映されることがきまり、マスコミや映画雑誌などの評判を聞いた映画ファンも観にきている。
  会議では、中央狭山闘争本部が10.31市民集会をひらくことと高裁前アピール行動を提起、寺尾確定判決から40年をむかえる10月31日に狭山中央集会をひらくことを決め、全力でとりくむことを確認した。
  狭山事件は事件発生から51年をむかえた。石川一雄さんは半世紀以上も無実を訴え続けている。証拠開示によって再審開始決定が出された袴田事件に続き、狭山事件でもいまこそ証拠開示と事実調べをかちとろう。「袴田のつぎは狭山だ」。


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