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部落問題資料室
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憲法の理念を実現するために、今こそ人権と平和の確立に向けた闘いを強化しよう

「解放新聞」(2014.11.03-2689)

 敗戦後の日本は、基本的人権の尊重、主権在民、平和主義を基調にした、この憲法のもとで再出発した。それは、天皇の赤子として徴兵された多くの青年兵士や、残された家族をはじめ、沖縄戦や広島、長崎への原爆投下など、多くの市民の犠牲、そして大東亜共栄圏の実現をめざすという侵略戦争での中国や朝鮮半島をはじめとしたアジア太平洋諸国の多くの人びとの尊い犠牲の上にあったことはいうまでもない。
  平和主義の象徴とされる憲法9条は、こうした悲惨な戦争を真摯に反省し、二度と戦争を引き起こさないことを全世界に宣言したものである。この憲法のもとで、日本は、今日までみずから戦争を引き起こすことはなかった。しかし、この憲法が大きな危機にある。安倍政権は、「戦争のできる国」づくりをすすめるために、7月1日、多くの市民が反対するなか、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を強行した。

 もちろん現憲法にもさまざまな問題点がある。戦争責任を一方的に当時の軍部のみに押しつけ、天皇―天皇制を存続させ、その政治利用をすすめていることは断じて許されない。「貴族あれば賤族あり」として、松本治一郎元委員長は天皇と部落民の差別関係を鋭く指摘した。部落解放をめざした松本元委員長の生涯は、まさに天皇制とそれを利用する者たちとの烈な闘いでもあった。とくに敗戦後は、戦争協力を余儀なくされ、自然解消させられた全国水平社の闘いを反省し、アジア諸国との友好をすすめ、ともに世界の水平運動を提唱、「不可侵 不可被侵」として、徹底的に平和を求めることが、敗戦後の日本で部落解放をめざす指導者の生涯の信条となったのである。
  しかし、いまや天皇を国家元首にし、「美しい国」日本の実現を妄想する安倍政権は、憲法そのものを破壊しようとしている。「戦後レジーム(体制)」からの脱却とは、世界やアジアから孤立してもなお、米国に追従し、地理的制限などおかまいなしに、米軍がおこなう戦争を支援するために、世界のどこにでも自衛隊を軍隊として派兵することである。


 景気回復策としての「アベノミクス」をすすめる安倍政権は、経済最優先の新自由主義路線のもとで、好景気を演出しようとしている。しかし、実際のわれわれの生活は、消費税の増税をはじめ、社会保障費の削減、労働法制の改悪による非正規労働者の固定化―拡大など、ますます厳しいものになっている。
  さらに、安倍政権は、「武器輸出3原則」の撤廃と、武器や関連技術の輸出を事実上解禁する「防衛装備移転3原則」の閣議決定など、まさに米国とともに戦争を準備しているとしか思えない暴挙をくり返している。
  国内外の批判をかわすために、9月の内閣改造では、女性議員を閣僚や党役員に起用し、「女性が輝く社会」をめざす政策を打ち出すとした。しかし、その女性閣僚として任命した経産大臣、法務大臣が早くも辞任に追い込まれた。残った女性閣僚なども、「在特会」などの反人権団体幹部との記念撮影や、中国や韓国との関係改善をすすめるべき時期に靖国神社を参拝するという戦前回帰の国粋主義者であり、安倍政権の反人権主義政治を象徴する人物が勢揃いである。しかも、差別を公然と煽動するヘイトスピーチを放置し続ける安倍政権には、国連人権条約関係機関から厳しい勧告が出されている。
  いまこそ、こうした反人権主義の逆流に抗して、安倍政権の憲法改悪策動を阻止し、憲法の理念を実現する、人権と平和の確立に向けた不断の協働した闘いをすすめなければならない。


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