先週はノーベル賞さわぎで大変だった。物理学賞に東大名誉教授の小柴昌俊さんが受賞しわいた。小泉首相などは、なおも科学技術立国へ夢をつなぐなどとさわぎたてた。ところがその二日後に、まったくノーマークの民間企業につとめる田中耕一さんに化学賞がおくられた
▼小柴さんの受賞報道では、同時に数かずのエピソードがひろうされた。もっとも印象深いのは東大の学部をビリで卒業したこと。そこになんとか東大の先生なのにという庶民性をもたせようとした記者の苦労がうかがえる。しかもこれらはすべて事前に準備しつくされていたのだ
▼それにたいして田中さんの受賞はマスコミもノーマーク、受賞した本人も博士号もなく、まったくの驚きというもの。作業着のままでの大あわての記者会見だった
▼だからエピソードが同時に報道されることはなかった。しかし庶民の注目は、博士号もなく、若い、民間企業につとめる田中さんに集まった。ソニーに落ちて、現在の会社にたまたま入り、実験の失敗が賞に結びついたというエピソードもおもしろい
▼水蒸気に試験官をかざし水滴をつくる実験で、気体から液体、固体への変化をイメージでつかみ「ホウ酸と同じ」と語ったこと。「やりたいことをしっかりもっていた」とのエピソードには考えさせられるものがある
▼いまの子どもたちの教育にも欠けているものが、そのなかに含まれているからだ。
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