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部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2110号/03.03.10

日本社会で生きるということ

阿部 謹也 著  朝日文庫新刊(定価500円)

書籍画像 従来の「士農工商」の表現をやめ、武士・百姓(農民)・町人の三身分で表現するなど、昨年四月にほとんどの小・中学校教科書の部落史記述が大きく変わった。今年一月の『部落解放』に紹介されていたが、大前進だ。
 とくに「えた」「ひにん」の位置を「士農工商」の「下」「(より)低い」などとする表現がほぼ消え、むしろ武士・百姓(農民)・町人の「外」に置くような表現になった。部落史研究を反映し、より正確な記述になったことはもちろんだが、「自分が安住する世界も人間を人間としてみないしくみを持っているのでは」と多くの人が考える契機になってほしい。
 そんなしくみにせまり、「よき日」を展望する一助が本書。『万葉集』の時代からある言葉「世間」を鍵に現代日本の人間関係が捉えられた。
 『破戒』の瀬川丑松は「いつまでも世間の人と同じようにして生きたい」と部落出身を隠していた。しかし、隠すのでなく人間の尊厳を貫き「世間」を問い、みずからを問い、闘うなかに希望がある。 (K・S)

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